機能性表示食品制度で気になる「成分」、消費者の75%は「正しく理解できていない」

 機能性表示食品制度が今年4月に開始されてから2カ月が経過した。消費者庁への届け出後、受理されれば60日後に販売が開始できるため、早いものは6月より実際に販売が開始されるタイミングになった。今後、食品・飲料等のパッケージに「機能性関与成分」やその機能性が表示される他、その影響で様々な「成分」が表示された商品が店頭に並ぶことが予想される。ただ、制度開始にあたり疑問視されているのが消費者の理解。一般の消費者は、どの程度、食品に含まれる「成分」について理解できているのだろう? トレンド総研(東京都渋谷区)が、消費者の意識を調査し、専門家の意見を聞いて、消費者が注視する「成分」の含有量が多い野菜・果物ランキングをまとめている。画像はトレンド総研のランキングデータより。  消費者の意識調査は、2015年4月21日~4月22日に実施。全国の20~50代の男女500名を対象として「食品・飲料の購入動向」について調べた。  まず、実際に店頭で食品・飲料を購入する際に注視している情報を調べたところ、「価格」(68%)、「容量」(35%)、「メーカー」(34%)などの基本情報に続いて、「含有成分の種類」(29%)、「含有成分の量」(17%)という結果になった。また、パッケージに表示されている「成分」の種類や量がきっかけとなって、食品・飲料を購入した経験がある人は71%に上り、消費者が食品・飲料を手に取る際に、「成分」が与える影響は少なくないといえる。  また、「成分」を見て購入するシーンについて聞いたところ、「普段からの習慣として」(59%)がもっとも多く、「成分」を見て食品・飲料を選ぶという行為は生活に根付き、習慣化していることがわかった。続いて、「疲労感があるとき」(34%)、「(食事の)栄養バランスが偏っていると感じたとき」(31%)などが回答の上位で、「成分」の働きに期待して購入をしている様子がうかがえた。特に女性は成分の働きに期待する傾向が男性より強く、「栄養バランスが偏っているとき」は36%(男性24%)、「肌の調子がすぐれないとき」は19%(男性5%)など、美容面などを気にして、成分を重視する姿勢が表れた。  そして、食品・飲料のパッケージなどに記載されていると購入したくなる「成分」について聞くと、「ビタミンC」(62%)が1位に。「カルシウム」(42%)、「食物繊維」(42%)、「鉄(鉄分)」(40%)、「ポリフェノール」(31%)などとなった。  さらに、「成分」に期待する効果・働きについて調査したところ、「ビタミンC」には「風邪などの予防」(59%)、「疲労回復」(48%)、「整肌(肌荒れの解消を含む)」(42%)など。「食物繊維」には「便秘解消」(56%)、「整腸」(53%)、「ダイエット」(36%)など。「鉄(鉄分)」には「貧血解消」(59%)などがあがった。ただし、これらの「成分」について、含有量が多い野菜・果物やその働きについて理解できているかどうかを聞くと、75%が「理解できてない」と答え、消費者の理解はまだ乏しい状態であることが改めて明らかになった。  そこで、トレンド総研では、この調査結果に基づいて専門家の意見を聞いている。まず、NPO法人 青果物健康推進協会事務局長の近藤卓志氏に、消費者の「成分」についての理解度が低い現状について聞くと、近藤氏は、「日本人は“ブーム”に弱く、影響されやすい側面があるため、たとえばメディアで何かの野菜・果物が特集されると、瞬間的にその野菜・果物に注目が集まり、ブームが去ると、また次の野菜・果物に注目が移ってしまうことがあります。消費者の理解が追いついていない状態での機能性表示食品制度のスタートは、時期尚早であったと考えています」と語っている。  「自分の体にそのときに必要な、足りないものは何であるかを正しく把握せずに『機能』を追い続け、『成分』だけを重視して食品を選んでいくと、逆に栄養バランスが崩れてしまう懸念もあります」と警鐘を鳴らす。そして、「できる限り毎日の食事の中で栄養を摂取し、自分の体をしっかりと把握した上で、不足しているものをサプリメントなどの栄養補助食品で摂取することで、初めて効果的な栄養の摂取方法だといえるでしょう」と、正しい知識をもってバランスよく毎日の食事をすることが重要とアドバイスしている。  また、消費者が食品・飲料を購入する際に、魅力を感じている「成分」のうち、「ビタミンC」、「食物繊維」、「鉄(鉄分)」について、栄養管理士の浅野まみこ氏への取材を行って、実際にそれらの成分の含有量が多い野菜・果物のランキングを紹介している。  まず、「ビタミンC」については、含有量の多い野菜・果物のトップは「カムカム(生)」で100gあたり2800mg。続いて、「アセロラ(生)」(同1700mg)、「グァバ(生)」(220mg)、「トマピー(生)」(200mg)、「赤ピーマン(生)」(170mg)の順。ビタミンCでイメージされやすい「レモン(生)」は100gあたり含有量が100mg、「キウイフルーツ」(69mg)、「いちご」(62mg)などとなっている。 ビタミンCの含有量が多いと一般にイメージされやすいレモンなどと比較して、より多くのビタミンCを含む野菜・果物は多い。浅野氏は、「ビタミンCは水溶性であり、熱や空気などにも弱く、壊れやすい構造ですので、加工方法によっては摂取できる量も変わってきます。食品によっては、現実的に日本国内で生の状態での入手が難しいものもあります」と語っている。  ビタミンCの含有率が圧倒的に多い「カムカム」は、南米・ペルー共和国が主な産地の果物で、ビタミンCだけではく、カムカム特有のポリフェノールなどの成分も含まれる、いわゆる“スーパーフルーツ”と呼べる果物。  「食物繊維」は、「アーティチョーク(生)」が100gあたり8.7gでトップ。「パセリ(生)」(同6.8g)、「ごぼう」(ゆで6.1g、生5.7g)、「モロヘイヤ(生)」(5.9g)、「めキャベツ(生)」(5.5g)など。浅野氏は、「食物繊維は野菜の中でも根菜類などに多く含まれますが、水溶性の食物繊維はネバネバした野菜に多く含まれ、身近にある食材では『オクラ』や『モロヘイヤ』、『つるむらさき』などがおすすめ」と語っている。  「鉄」については、「パセリ(生)」が100gあたり7.5mgでトップ。「よもぎ(生)」(同4.3mg)、「なばな(生・和種)」(2.9mg)、「こまつな(生)」(2.8mg)、「きょうな(生)」(2.1mg)、「ほうれん草(生)」(2.0mg)など。浅野氏は、「野菜・果物に含まれる鉄は体への吸収率は低いため、摂取する際はビタミンCをあわせて摂ることで吸収を助けることができます。また、動物性食品に含まれる『ヘム鉄』の方が吸収率は高く、赤身の肉やレバーなどを摂取するのが良いでしょう」とアドバイス。さらに、「どの成分もそうですが、バランスが大切です」と語っている。(編集担当:風間浩)
機能性表示食品制度が今年4月に開始されてから2カ月が経過した。消費者庁への届け出後、受理されれば60日後に販売が開始できるため、早いものは6月より実際に販売が開始されるタイミングになった。今後、食品・飲料等のパッケージに「機能性関与成分」やその機能性が表示される他、その影響で様々な「成分」が表示された商品が店頭に並ぶことが予想される。
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2015-06-04 11:45