円安株高で高まる変動幅に注意!外為オンライン佐藤正和氏

5~6月にかけて為替相場では円安が一気に進み、1ドル=125円台にまで達してしまった。加えて5日に発表された米雇用統計ではサプライズがあり、さらに円安が進んでいる。これで米国の金利引上げの時期が早まったとみる見方がますます高まってきたが、円安はさらに進むのか。外為オンライン・シニアアナリストの佐藤正和さんに6月相場の動向を伺った。
――米雇用統計で思わぬ数字が出ましたが、その影響は?
市場予想が22万6000人増だった非農業部門の雇用者数が、ふたを開けてみたら28万人増と大きなポジティブ・サプライズになりました。これで米連邦準備理事会(FRB)の金利引上げのスケジュールは9月が濃厚という意見が一気に主流になりつつあります。
さらに、1時間当たりの賃金も前年同月比で2.3%上昇し、2013年8月以来の強い伸びを記録しました。IMFが米国の金利引き上げ時期について、来年まで延長したほうがいいと指摘した理由のひとつが、雇用に対する懸念だったとされていますから、これで年内金利引上げの可能性がますます強くなったと考えていいのではないでしょうか。
6月16日、17日に開催が予定されているFOMC(連邦公開市場委員会)ではイエレン議長の記者会見もありますから、どんな発言をするのか。為替市場が動く要因になると思います。実際に、雇用統計のサプライズを受けて大きく円安が進み、13年ぶりの円安水準にまで達しています。
――円安が急速に進んでいますが、このまま一気に130円台まで進むのでしょうか?
日経平均株価が12連騰を記録するなど、株式市場の好調さにつられる形で円安も一気に進んでしまいました。米国の長期金利が上昇しているという背景もありますが、このまま一気に円安が進む可能性は低いのではないでしょうか。
日銀の金融政策決定会合が6月18日、19日とありますが、ここまで円安が進むととりあえずは何も起こらないと思います。問題は株式市場で、年初から日経平均株価は19.2%上昇しましたが、ニューヨークダウはほぼ横ばいです。
こうした株価の動きがやや気になるところですが、6月のドル円の予想レンジは1ドル=122円-128円と見ています。130円台というのは、まだ先になるとみています。
――欧州では相変わらずギリシャのデフォルト危機が叫ばれていますが?
6月末に期限が来るEUのギリシャ支援の延長に際して、このところずっと条件のすり合わせが続いていますが、状況次第ではデフォルト(債務不履行)の可能性も取りざたされています。とはいえ、すでにギリシャ問題は市場に十分すぎるほど織り込まれているのも事実です。
とはいえ、実際にデフォルトを起こしたり、EU離脱ということになるとユーロは一時的に大きく売られる可能性があります。対ドルに対して下落するのは無論のこと、対円に対しても大きく円高方向に振れる可能性があるかもしれません。特に、EU離脱となると、次に控えているスペインなどの問題が再びクローズアップされてくると思います。
EU経済そのものは、量的緩和の実施以来、徐々に景気が回復しつつあります。問題は、長期金利が徐々に上昇していることで、ECBのドラギ総裁のボラティリティ(変動幅)を容認する発言で瞬間的な金利上昇が起きています。特に、流動性に乏しいドイツ国債は変動幅が大きくなっています。
ギリシャ問題が、いつどうなるのか予断を許さない状況ではありますが、6月のユーロ相場のレンジは、ユーロ円で1ユーロ=135円-142円、ユーロドルでは1ユーロ=1.10-1.17ドルと見ています。極端に大きく動くことはないものの、ボラティリティが大きくなるために市場の動きをきちんと追う必要があるかもしれません。
――中国の株式市場が揺れ動いていますが、豪ドル円はどんな動きになるでしょうか?
豪ドルに関しては、投機筋の通貨先物の売買状況を見ることができる「IMMポジション(シカゴCMEの一部門)」が、ここに来て売り買いが拮抗してきており、やや流れが変化しつつあるようです。金利の安い日本円やユーロを借りて、金利の高い豪ドルで運用するキャリートレードが相変わらず活発に行われていると見ていいでしょう。
最近の豪経済は安定しており、中国の株価の乱高下に対してもさほど影響を受けなくなってきています。住宅部門でまだ一部バブルの兆しが残っているものの、物価全体としては落ち着いてきたと言っていいのではないでしょうか。
とはいえ、もう一度利下げがあるのではないかと見る人も多く、一直線に豪ドルが高くなるというシナリオは難しいと思います。そういう意味で言うと、6月の豪ドル円のレンジは1豪ドル=94-98円と見ていいのではないでしょうか。
――5月相場ではどんな点に注意すればいいでしょうか?
豪ドル以外のクロス円では、英国ポンドが1ポンド=191円まで高くなっており、200円越えが久しぶりにあるかもしれません。こうした動きでも分かるように、株式市場同様に通貨でも久しぶりのレートが付くことが多くなっており、それだけボラティリティが高くなっています。
特に不安定なのは、米国の金利上昇が見えてきたことで、株式市場の変動幅が大きくなり、状況次第では為替市場にも大きな影響があるかもしれないことです。特に円相場では、大きく水準が変わってしまったこともあり、不測の事態には速やかに逃げることができる体制を整えておくことが大切かもしれません。
市場をまめにウォッチして、あまり思い込みだけで投資してしまう衝動的な行為は避けたほうがいいかもしれません。(取材・文責:モーニングスター)。
5~6月にかけて為替相場では円安が一気に進み、1ドル=125円台にまで達してしまった。加えて5日に発表された米雇用統計ではサプライズがあり、さらに円安が進んでいる。これで米国の金利引上げの時期が早まったとみる見方がますます高まってきたが、円安はさらに進むのか。
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2015-06-08 10:00