中国人はよくサボるのか?―安易な国民性論ではなく中国労務を「考え」ましょう

 中国にいる日系企業関係者はときどき「中国人はよくサボる」と言うことがあります。この言葉の行間からは、「中国人の民族性がもともと怠惰だ」と言っているように聞こえます。  しかし、中国人は本当に「怠惰」なのでしょうか。  台湾はどうでしょう。台湾の勤労意欲は、日本とあまり変わらないように見えます。そう考えると、中国人は「その国民性は怠惰である」という表現は間違いなのではないでしょうか。  台湾に限らず、清朝末期までは中国(厳密には清国)の一部だった香港も同様です。つまり、よくサボるように見えるのは、「共産党統治圏にいる者のみ」と言えます。  そう考えると、「中国人はよくサボる」のはもともとの中国人の国民性ではなく、共産党統治に問題があったと考えるべきでしょう。  中国共産党はもともと「単位」制度と呼ばれる、頑張って働いても頑張らなくても給与は変わらず、解雇もないという労働システムを行っていました。しかも、この時代の「就職方法」は、政府からの通知で仕事に就き、その通知を拒否する自由が認められていませんでした。そのため、自分の仕事が自分のやりたい仕事ではない場合が多かったのです。  一生懸命働かずとも、解雇がなく、給与も変わらない、しかも希望した仕事ですらない。これでは働く意欲が湧かず、「サボりがち」になるのも当然ではないでしょうか。  現在単位制度は既に終了していますが、一部に単位制度下そのままのように怠惰に働く人は、多くはなくても確実に中国で見受けられることができます。単位制度終了後もなぜこのような性質が残っているのかは、丁寧な検証が必要ですが、「単位制度下で生活していた親の働き方を真似ている」のかもしれません。  解雇制度などが法的にも導入され、成果主義的な制度を導入している企業が多くなっています。中国人の労働スタイルはまさに現在、単位制度下の怠惰な労働から、解雇や成果主義などがあることによる勤勉な労働への過渡期・移行期にあると言えるかもしれません。  「中国人は○○だ」と言うことは簡単です。しかし、「なぜそうなるのか」も考えないと結局「悪口」を言っているだけになってしまいます。安易に「中国人は○○だ」と言うのではなく、「常になぜそうなるのか」を考えながら中国でも労務なり法務なりを行って欲しいと思います。(執筆者:高橋 孝治 提供:中国ビジネスヘッドライン)
中国にいる日系企業はときどき「中国人はよくサボる」と言うことがあります。この言葉の行間からは、「中国人の民族性がもともと怠惰だ」と言っているように聞こえます。
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2015-06-08 10:30