音楽CD大国の日本でサブスクリプション型音楽配信に普及に挑む「AWA」

 音楽視聴の形態としてCDなどの物理媒体が売り上げに占める割合が世界的にも大きい国として知られる日本。サイバーエージェントとエイベックス・デジタルの共同出資によってスタートしたAWAは、2015年5月27日からサブスクリプション型(定額制)音楽配信サービス「AWA(アワ)」をスタートした。トレンド総研は6月8日に発表したピックアップレポートで「AWA」を取り上げ、10~40代の音楽視聴実態調査とともに、AWA取締役/プロデューサーである小野哲太郎氏に取材して、日本における音楽視聴の将来像を展望している。画像は「AWA(アワ)」より。  国際レコード産業連盟(IFPI)の発表によると、2014年は世界でCDなどの物理媒体の売り上げを、ダウンロードやストリーミングなどのデジタルの売り上げが初めて上回り、音楽市場にとって“象徴的な年”になった。世界のデジタルの売り上げをけん引したのは「Spotify」に代表されるサブスクリプション型(定額制)の音楽配信サービスだった。ところが、日本では、依然としてCDなどの物理媒体が売り上げに占める割合が高い。  トレンド総研が15歳~49歳の男女500名を対象とした「音楽視聴方法と音楽配信サービスに関する意識・実態調査」(調査期間:2015年5月27日~5月29日)によると、「普段聴く音楽(楽曲)の入手経路・方法は?」という質問で、最も多い回答は「レンタルしたCDからスマートフォンなどに取り込んで聴く」(全体で55%、20代は65%、30代は64%)。次いで「購入したCDからスマートフォンなどに取り込んで聴く」(全体で50%、10代で56%、20代~40代は48%)。デジタル形式で音楽を楽しむ一方で、“CD派”が根強いことがわかった。  音楽を聴く頻度とシーンは、「自宅」では「毎日」(37%)がもっとも多く、次いで「週に2~3回程度」(17%)。「外出先」も「毎日」(33%)が最多で、「週に4~5回程度」(19%)が続いた。シーン別に音楽を聴く際に利用しているデバイスは、自宅での利用率1位は「パソコン」(56%)、「スマートフォン」(42%)、「デジタルオーディオプレイヤー(ポータブルプレイヤーを含む)」(24%)だった。外出先では「スマートフォン」(46%)、「デジタルオーディオプレイヤー(ポータブルプレイヤーを含む)」(39%)、「カーオーディオ」(36%)だった。  ただ、「CDプレイヤー(ポータブルプレイヤーを含む)」、「MDプレイヤー(ポータブルプレイヤーを含む)」、「デジタルオーディオプレイヤー(ポータブルプレイヤーを含む)」などは、現在は使わなくなったデバイスとしての回答率が20~30%台となり、スマートフォンの台頭によって、音楽の視聴形態が確実に変化していることが感じられた。  そして、サブスクリプション型音楽配信サービスについてサービスを選ぶ際に最も重視するポイントは、「楽曲の数」(73%)。「好きなアーティストの楽曲が配信されているかどうか」(62%)、「月額の利用料金」(58%)、「楽曲の種類の豊富さ(ジャンルの幅)」(53%)などが上位。また、「楽曲の音質」(42%)、「動画の画質」(28%)などクオリティ部分を重視するという回答も少なくなかった。  一方、音楽・動画配信サービスにおいて問題視されている違法アップロード(配信)コンテンツについては、82%が違法配信されているものがあることを「認識している」と答えたが、依然として約2割は違法性を「認識していない」という状況にあり、依然として著作権保護については問題を残していることもわかった。  「AWA」は、スマートデバイス向けアプリ(iOS/Android対応)として提供されている定額制の音楽配信サービス。月額360円(税込)からの価格プランで国内最大規模となる数百万曲もの楽曲数を誇り、3大メジャーレーベルであるユニバーサルミュージック、ソニーミュージック、ワーナーミュージックをはじめ国内外23社もの音楽レーベルが参加していることが特徴。3カ月間という長い無料トライアル期間を設け、提供開始直後からユーザ層を拡大している。  トレンド総研は、AWA取締役/プロデューサーの小野哲太郎氏にインタビューを行い、今後の日本の音楽市場の捉え方などを聞いている。  小野氏は、日本の音楽市場の3つの課題と特徴として(1)音楽と出会う機会の減少と、音楽視聴形態の変化、(2)音楽視聴環境とユーザの変化に事業者やビジネスモデルが追いついていない、(3)世界的にみても上位に位置する日本の音楽市場の規模――に着目している。  音楽との出会いは、以前はテレビの音楽番組やCDショップだったが、現在は両方とも減少し、代わって、人々の情報接点は多様化している。また、目まぐるしく変化するユーザのニーズに、楽曲権利が分散した日本独自のシステムでは対応が難しくなっている。そして、音楽コンテンツにお金を払う消費者がたくさんいて土壌は成熟しているにもかかわらず、それに対して音楽レーベルやプロダクションが思うようにアプローチができていないのが現実。これらの課題へのひとつの解答が、「AWA」に盛り込まれた。  小野氏は、「AWA」の開発にあたって最も重視した点は「プロダクト自体のクオリティ。ユーザビリティやビジュアルデザインを含め、プロダクト開発には細部にまでこだわり抜き、本能的に使っていて“気持ちが良い”、快適であるあるものをめざしています」と語っている。また、「日本で提供する、日本企業発のサービスであるからには、日本の音楽レーベルやプロダクション、ユーザをもっとも理解している存在でありたい」という。  そして、「『AWA』はCDやライブで音楽を楽しんできた人々を、サブスクリプション型にシフトさせることを狙ったサービスではありません。“これまで出会わなかった、でも好きな音楽”と出会える場が『AWA』です」とサービスの狙いを語る。  特に「AWA」が強みとしている「プレイリスト」(『AWA』上の楽曲を自由に組み合わせて作成・公開できる機能)について、「DJ、音楽ライター、音楽プロデューサーといった音楽のプロ、そして、ユーザがそれぞれの想いのもとに作成しているものです。楽曲の波形データなども含めて分析し、独自のアルゴリズムを搭載した『リコメンドエンジン』を掛け合わせることで、幅広い層に新しい音楽体験が届けられると考えています」と解説している。  「AWA」の「プレイリスト」は、サービス開始後10日目の段階で20万件を超えて作成され、この機能に対する非常に大きなニーズを感じさせた。  最後に小野氏は、今後の展望として「楽曲数の拡充はもちろん、リコメンドの精度やインターフェースのブラッシュアップなどを通じてサービスを強化し、将来的にはあらゆる年代、性別にマッチする国民的な音楽サービスに成長することをめざしています」と抱負を語った。  トレンド総研では小野氏への取材を振り返って、「音楽配信サービスの価値を決めるのは、利便性や取扱い楽曲の数といったスペック面だけではなく、幅広い年代に、その時代にあったパーソナライズされた音楽体験が提供できること」と「AWA」の価値を評価。日本発のサブスクリプション型音楽配信サービスとしての「AWA」がもたらす国内音楽市場活性化に大きな期待を寄せた。(編集担当:風間浩)
サイバーエージェントとエイベックス・デジタルの共同出資によってスタートしたAWAは、2015年5月27日からサブスクリプション型(定額制)音楽配信サービス「AWA(アワ)」をスタートした。トレンド総研は、10~40代の音楽視聴実態調査とともに、AWA取締役/プロデューサーである小野哲太郎氏に取材して、日本における音楽視聴の将来像を展望している。画像は「AWA(アワ)」より。
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2015-06-10 12:45