対外開放と対内開放を目指す金融改革(3)=関志雄

― 期待される民間と外国資本の参入による競争の促進 ― 中国経済新論「中国の経済改革」-関志雄 【3】残された課題   市場メカニズムを発揮させ、資金配分の効率を向上させるために、以上の改革を貫くことに加え、次の課題も併せて解決しなければならない。   まず、銀行部門においては、国有銀行による独占体制が崩れる気配はまだ見られない。銀行間の競争を促進するために、民営銀行の参入の枠を拡大しながら、国有銀行の民営化を進めなければならない。   第二に、資本市場は、国有銀行を含む大型国有企業の民営化の受け皿としての役割を果たしていない。日本は1980年代以降、NTT(元日本電信電話公社)やJR(元日本国有鉄道)などの大型国有企業の民営化プロセスにおいて、政府が徐々に資本市場で株式を売却していった。その結果、政府の持株比率が大幅に低下し、これらの国有企業は最終的に民営企業となったのである。しかし、中国では、このような動きはまだ見られていない。   第三に、金融行政の権限は、中国人民銀行、中国銀行業監督管理委員会、中国証券監督管理委員会、中国保険監督管理委員会に分散している。しかし、シャドーバンキングの拡大に見られるように、業界の垣根を越えた金融機関の間の協力が強化される一方で、競争も激しくなっている。この新しい環境の下で、金融監督の一元化が求められている。   第四に、金融業の対外開放において、銀行業と比べて証券業が大幅に遅れている。外資の証券会社の業務範囲(A株の取り扱いに関して当面は引き受けのみなど)や出資比率(上限49%)などの面において厳しい制限が課せられている。更なる緩和策の実施は、外資証券会社による中国市場への本格的参入の前提条件となる。   最後に、各国の経験が示しているように、金融の自由化に伴って、バブルが膨張するなど、経済が不安定化する恐れがある。その防止に向け、政府のマクロコントロール能力と金融監督管理を強化しなければならない。 (執筆者:関志雄 経済産業研究所 コンサルティングフェロー、野村資本市場研究所 シニアフェロー 編集担当:水野陽子) (出典:独立行政法人経済産業研究所「中国経済新論」)
市場メカニズムを発揮させ、資金配分の効率を向上させるために、以上の改革を貫くことに加え、次の課題も併せて解決しなければならない。
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2015-06-10 13:15