中国介護ビジネスのキーワード(前半):中国高齢者の現状と将来予測

当方が所属する会社では、大人用おむつを通して、高齢者の尊厳や独立を非常に大事にしてビジネス展開をしている。そうした中で、高齢者に関する情報をさまざまな形で整理することも多い。
先日5/18東京上海ビジネスフォーラム(T-SBF、代表中山勝巳)、及びアジア経営研究会(理事長:藤原弘)の協力を得て、中国の介護ビジネスの将来について、講演を行った。そして非常に多くの方が関心を持っていることも把握できた。講演の内容でキーワードになっていることを2回シリーズで簡単に紹介したい。
前半:「中国の高齢者の生活」及び「将来予測」を理解するキーワード
後半:日本企業にとっての中国の介護ビジネスチャンス
■中国の高齢者の生活を理解するキーワード
・9073政策
この数字は「90%」、「7%」、「3%」を表す造語で、政府が政策に力点を置くウエイトでもある。それぞれの意味は次の通りである。
90%:在宅介護
7%:社区における介護
3%:専門施設における介護
中国政府は、中国人の家族観を大事にするということで、在宅介護をメインに政策を置いている。但し、高齢者の家族がご子息と何らかの事情で別々の暮らしを余儀なくされた場合、コミュニティで高齢者の面倒を見ると言うものである。
「社区」は日本的な意味では「自治会」と意訳することができる。最後に専門施設で面倒を見ると言うものである。中国では、「社区」に存在する病院は、高度な治療が出来ないために、コミュニティの外にある大きな医療機関を利用する必要がある。それが専門施設の介護である。
・空巣老人
この言葉は、高齢者のみが住んでいる家庭のことを指している。
中国政府は、GDP7%成長を維持するために、優先順位を付けているが、誰も面倒を見られなくなった人をなんとかせねばと考えている。ご子息が面倒見られない人や、財政的に苦しい高齢者は政府が面倒を見る必要がある。そういう高齢者のことを「空巣老人」と呼んでいる。
・未富先老
これは、中国全体が富を得るまでに、老いてしまうことを指す。現在中国平均でも1人当たりGDPが約7000ドル。上海市や北京市でも1万5000ドル。まだ中所得国の罠から抜け出せていない。にも関わらず、2014年には、高齢者人口比率(65歳以上)が10%を超えてしまった。今後も急速に、高齢者がさらに多く存在する世の中になってしまうのは想像に難くない。
■中国の介護ビジネスのキーワード:中国高齢者の生活
1. 中国の介護に関する政府の財政サポート
日本では、生産年齢人口のピークが1995年頃だったが、人口ピークに達する前に「国民皆保険制度」を導入した。その後2000年に介護保険制度を導入した。法律の中身は3年ごとの実情に合わせて改正されているものの、これは世界にある意味では誇れる制度と言ってよい。
米国にも国民皆保険制度があるが、日本と違い、国民に政府や民間の保険の加入を義務付けるもので、日本の国民皆保険制度と根本的に異なる。中国は日本の保険制度を見習って、2020年に国民皆保険にする方向で制度設計を初めている。これは、生産労働人口のピークが2013年頃に迎えて、その後に制度設計がされることを意味する。が現段階では日本は福祉に対する財政の拠出は20%程度存在するが、中国は3%と非常に少ない。
また、国民皆保険で現段階の加入者大都市で90%近く達している。但しこの割合は、サラリーマンのみ加入の数字であっったり、農民工の数字が入っていなかったり、行政区を超えると、現在加入している保険が使えなかったり、さまざまな課題がある。財政の財布が小さく、対象に入っていない人が予測以上に多いならば、とても政府がサポートしても追い付かないのが実情である
2. 中国で大事にする家族観のつながり
政府が現在の中国人の家族観を大事にして政策立案することは、とても素晴らしいことだ。しかし、「介護する側」はそろそろ一人っ子政策の世代になりつつある。さなざまな困難を理由に、自分の御両親の世話をするために、施設に入れる人も増えている。
施設に入れた人たちは、周りの人や、自分の親に対して、盛んに自分自身は「親孝行」という言葉を発して、親の面倒を見ていることをアピールして、親子のつながりを確認し合っている。中国人の心の温かさをベースとして、中国の介護ビジネスは展開している。
3. 「介護士」、「ヘルパー」の提供するサービスの定義の明確化と専門性
現在中国では、介護士を普及させようとして、資格取得を政府が懸命に指導している。しかし現実は、家政婦が家の掃除、洗濯や家族の世話のサービスを行っており、それらの運用があいまいになっている。もちろん介護士としてすべきことの中の仕事内容の中に一般の人ができる内容も存在している。今後、介護士にはより専門性が求められる可能性が高い。「褥瘡対策」「リハビリテーション」「栄養管理」等等がその事例である。
以上が中国における介護ビジネスの現状と将来予測である。
中国介護ビジネスにおける日本企業のビジネスチャンスは次回お送りします。(執筆者:廣田(李) 廣達 提供:中国ビジネスヘッドライン)
当方が所属する会社では、大人用おむつを通して、高齢者の尊厳や独立を非常に大事にしてビジネス展開をしている。そうした中で、高齢者に関する情報もいろんな形で整理することも多い。
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2015-06-17 13:00