汗をかく季節はプリン体に注意、乳酸菌PA-3株がプリン体に働く力に学会も注目

夏、汗をかく季節は、プリン体の過剰摂取などによる痛風の痛みの発作が起きやすくなる。その夏を控え、2015年6月17日に東京・港区で開催されたマスコミ向けセミナーで、東京女子医科大学教授の山中寿氏から、「『乳酸菌PA-3株』が、痛風などの原因になる尿酸値の上昇を抑える効果が確認された」という報告があった。山中教授は、「ヨーグルト等の食品で摂取可能な乳酸菌によって尿酸値を有意に下げられることが確認された意義は大きい」と同大学が実施した試験結果を振り返った。また、帝京大学薬学部臨床分析学研究室教授の金子希代子氏は、「痛風や高尿酸血症の予防には、高プリン体食品を控え、節酒や適度な運動とともに、プリン体の吸収を抑える作用のある食品を摂るよう心がけたい」と生活習慣で発症を予防することの重要性を説いた。写真左は帝京大学薬学部臨床分析学研究室教授 金子希代子氏、右は東京女子医科大学教授 山中寿氏。
日本では「プリン体ゼロのビール」などが発売され、予防医学が発達している関係で「プリン体」という言葉が一般に知られているが、山中教授によると「世界の研究者に、日本にはプリン体ゼロのビールがあることを紹介すると驚かれるほど、海外ではプリン体の摂取を控えるといった予防は浸透していない」という。しかし、予防意識の高い日本においても痛風患者数は毎年増加しているのが実態。「日本においても、プリン体に対する正しい知識の普及を促す必要がある」(山中教授)と語っている。
そもそも「プリン体」は、全ての生命を活動させるために必須の物資。人間の体の中でも作られ、食品として食べる肉や魚、野菜などにも含まれる。また、“うまみ成分”ともいわれ、「美味しい食べ物」には大量のプリン体を含むことが多い。そして、プリン体は体内では細胞の代謝によって消費され、最終的に尿酸となって腎臓を経て尿として排泄される。「プリン体を適正な量で摂取し、正常に排泄していれば何ら問題がない。しかし、尿酸の体内での産生量が増え、また、尿酸の排泄量が減るような要因が重なると、体内に尿酸が貯まり過ぎ、関節に沈着すると痛風を起こす。さらに、腎機能障害や尿路結石、ひいては、虚血性心疾患や脳血管障害など重篤な疾病につながる」(山中教授)という。
尿酸の産出量が増える要因は、プリン体の摂り過ぎ、激しい運動(無酸素運動)、果糖の摂り過ぎ、ストレスなど。また、尿酸の排泄量が減る要因は、メタボリックシンドローム、内臓脂肪蓄積、飲酒、絶食、脱水など。血清尿酸値が7.0mg/dlを超えると、体内に尿酸が貯まり始め、7.0mg/dlを超える状態が続くと尿酸の蓄積が止まらないという。そして、足の指の関節をはじめ、膝などの下半身の関節に尿酸ナトリウム結晶が貯まり、徐々に肘や手の指など上半身の関節に貯まって、関節部分が腫れ上がり、年に1~2回は激烈な痛みの発作を起こす。
痛風による関節炎は、尿酸の生成を抑制する薬剤、また、尿酸の排泄を促進する薬剤を使って症状の緩和が可能。ただ、薬による治療は一時的であるため、尿酸を体内に貯めないような生活習慣、特に食事の改善が不可欠になる。「しかし、食事療法の継続は難しい。そこで、プリン体を消化管内(腸管)で除去する方法はないかと、乳酸菌の力を使った研究を進めた結果、『乳酸菌PA-3株』が腸内でプリン体を吸収されにくい形に分解し、しかも、乳酸菌がプリン体を取り込んで自らが増殖する栄養源として使うことがわかった」(山中教授)という。シャーレ(ペトリ皿)を使った試験では、「乳酸菌PA-3株」がプリン体を菌体に取り込んで、時間の経過とともに増殖することが確認されている。
東京女子医科大学で実施した試験では、血清尿酸値が6.0mg/dl以上で薬物治療を行っていない高尿酸血症境界域の人を対象に「乳酸菌PA-3株」を含むヨーグルトを1日1回(85g)8週間摂取してもらい、摂取前と摂取後で血清尿酸値の値を測定した。「乳酸菌PA-3株」を摂取したグループで、「乳酸菌PA-3株」が入っていないヨーグルトを摂取したグループと比較すると、血清尿酸値が有意に低いという結果が得られた。
また、高尿酸血症および痛風患者を対象とした試験は、事前に4週間休薬してもらった後に、薬を飲まない状態で「乳酸菌PA-3株」の入ったヨーグルトを1日2回(各100g)8週間摂取してもらって検査したところ、薬を飲まなかったにもかかわらず、血清尿酸値の上昇を抑えられることが確認された。
山中教授は、「乳酸菌には様々な保健効果があることが知られているが、今回の試験によって、『乳酸菌PA-3株』にはプリン体の吸収低減の効果があらわれた。決して薬の代わりに「乳酸菌PA-3株」がなるとはいえないが、乳酸菌によって食事制限のストレスが改善されるのであれば、痛風などの予備軍の方には役に立つ」と語っている。
続いて、帝京大学薬学部臨床分析研究室の金子教授が、食品のプリン体を測っている立場から、痛風・高尿酸血症を予防する生活習慣」について講演。食事については、「腹八分目で、一汁二菜、一汁三菜など昔からいわれている食事のバランスに尽きる」と語った。そして、「BMI(Body mass index)22程度の適正な体重を知り、1日60分程度の歩行、または、それ同等の身体活動を行い、お酒を控えめに(週に2回は休肝日をつくる)」などの生活習慣をすすめた。
さらに、これまでの研究等によって尿酸値を下げる素材・食品としてビタミンC、乳製品、ポリフェノール、フラボナイドなどが知られていることを紹介。今回、乳酸菌の中で「乳酸菌PA-3株」が食事中のプリン体の吸収量を低減させる作用が報告されたことで、「食生活改善の新たな可能性がみえてきた」と、今後の研究の進展に期待を寄せていた。(編集担当:風間浩)
夏、汗をかく季節は、プリン体の過剰摂取などによる痛風の痛みの発作が起きやすくなる。その夏を控え、2015年6月17日に東京・港区で開催されたマスコミ向けセミナーで、東京女子医科大学教授の山中寿氏から、「『乳酸菌PA-3株』が、痛風などの原因になる尿酸値の上昇を抑える効果が確認された」という報告があった。
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2015-06-19 14:00