中国のインフラ投資拡大は銀行の不良債権増加に直結する可能性=大和総研が指摘
中国が景気下支えを目的に急ピッチで進めようと計画しているインフラ投資は、やりすぎると無駄な借金(不良債権)が増加して禍根を残す可能性がある――。大和総研経済調査部主席研究員の齋藤尚登氏は2015年6月23日に「中国:インフラ投資増強と高まる銀行依存度」と題したレポート(全7ページ)を発表し、中国で進むインフラ投資の進捗を注意深くウォッチする必要があると述べた。レポートの要旨は以下の通り。
◆景気下支えを目的に、中国政府はインフラ投資や民生改善のための投資を一段と加速させようとしている。国家発展改革委員会によると、2011年~2014年合計の軌道交通向けの投資額は8600億元(年平均2150億元)だったが、2015年は3000億元以上を投じるという。6月17日に開催された国務院常務会議では、今後3年間で1800万戸(年平均600万戸)の都市バラック地区の改修と1060万戸の農村老朽家屋の改修・補強を行うとした。2013年7月時点では、2013年~2017年の5年間に1000万戸(年平均200万戸)の都市バラック地区の改修を目標としており、今回の決定により、年間目標は3倍に引き上げられることになる。
◆問題は資金調達である。4兆元の景気対策が発動された当時の重要な資金調達手段には、銀行貸出に加え、潤沢な土地使用権譲渡収入と、地方政府融資平台(中国版第三セクター)によるシャドーバンキング経由の短期・高金利の資金調達があった。しかし、土地使用権譲渡収入は少なくとも短期的に、シャドーバンキング経由の資金調達は中期的にも多くを期待することはできない。
◆政府が大きな期待を寄せるのが、PPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ:官民連携)による民間資本の導入である。しかし、民間資本にしてみれば、インフラ投資は投資金額が大きく、投資回収期間が長期化する上、政府による計画の変更・不履行リスクや投資回収計画の甘さ、公共料金改定の難しさなど、自らの経営努力では如何ともしがたい問題があり、それが投資に躊躇せざるを得ない要因となっている。
◆今後、投資をさらに増強する場合、その多くは中国政府との関係が密接な銀行からの貸出増加に頼らざるを得ず、それは既に始まっている。中国では、景気下振れリスクが高まるにつれて、「成長維持」に政策の重点が大きくシフトしている。その方法は、インフラ投資などの増強とそれを金融面で支える銀行貸出の増加という伝統的なものである。ある意味で政策は分かりやすくなったが、匙加減は難しい。やりすぎれば、効率の低い投資と無駄な借金(不良債権)の増加という、やはり中国が抱える伝統的な問題の先鋭化を招くだけである。(情報提供:大和総研、編集担当:徳永浩)
中国が景気下支えを目的に急ピッチで進めようと計画しているインフラ投資は、やりすぎると無駄な借金(不良債権)が増加して禍根を残す可能性がある。
china,economic
2015-06-24 09:45