世代交代を経て進化する「さわかみファンド」、澤上社長と草刈CIOが語る「長期投資」の新戦略

さわかみ投信は、1999年8月に「さわかみファンド」を設定以来、直販投信の草分けとして多くの投資家に長期投資の重要性を説いてきた。足もとでは、「さわかみファンド」のファンド仲間(受益者)は約11万7000人に上り、純資産額も3000億円を超えてきた。創業者の澤上篤人氏からバトンを受け継ぎ、2013年1月に同社代表取締役社長に就任した澤上龍氏と、同社最高投資責任者(CIO)に就任した草刈貴弘氏に、モーニングスター代表取締役社長の朝倉智也氏がインタビューを行い、今後の運用方針などを聞いた。(写真は左から、モーニングスターの朝倉智也氏、さわかみ投信の澤上龍氏、草刈貴弘氏)
■「バイ&ホールド」から「バイ&コミット」へ、消費者目線で徹底的に議論
朝倉氏: はじめに、昨今「貯蓄から投資へ」の機運が高まっており、投資家の動きが変化しつつあります。世代交代を迎えたさわかみ投信にとっても変わらない点と変わっていく点があるかと思いますが、どのようなビジョンを描いていますか。
澤上氏: 「一般生活者の財産づくりのお手伝いをさせていただく」という理念は変わりません。おかげ様でファンド設立から既に15年が過ぎましたが、「さわかみファンド」のファンド仲間の半数が40歳代以下と、多くの資産形成世代にご支持いただいています。そういった方々が経済的自立を果たし、一人一人が心豊かな人生を歩んでいくと、世の中はもっと面白いものになると考えています。
また、弊社は常に「消費者目線での投資」に徹します。企業は商品やサービスを供給してくれますが、それを利用するのは消費者なのですから。一方で、投資に取り組む姿勢は、変えるのではなく進化させていきたい。これまでは企業の成長を陰ながら応援するスタンスで投資を行ってきましたが、今後は企業のパートナーとして共に成長できる関係を作っていければ幸いです。「投資先企業にも信頼・尊敬していただける投資運用会社」となる方針を掲げ、ファンド仲間の皆さま、企業、弊社の三位一体で豊かな将来をつくっていきたいと願っています。変わらない点といえば、そういった弊社の哲学を直接お伝えするために、直販投信というスタイルは変えません。
朝倉氏: なるほど。我々が評価機関としてさわかみ投信を高く評価する理由の一つは、澤上社長を筆頭に全役職員の投資家、企業、社会に対する想いが、「さわかみファンド」1本の運用に込められているところです。
澤上氏: ありがとうございます。日本のような成熟経済では、一生懸命働くことに加えてお金にも働いてもらうことが不可欠です。皆さまには財産づくりでは投資信託を活用し、ご自身は生活や仕事に熱中していただきたい。投資信託(ファンド)とは本来、運用をプロに任せる仕組みです。経済状況によって次から次へと新たなファンドを選ぶのではなく、「さわかみファンド」が1本あれば安心だ、と言っていただけるよう今後も努力してまいります。
朝倉氏: 続いて、草刈CIOにお伺いしますが、ファンドに組み入れる銘柄選びでは何を大切にしていますか。
草刈氏: 私たちは現在、「BUY&COMMIT」(バイ&コミット)というスタンスで投資に取り組んでいます。おかげ様でファンドの残高も3000億円を超えました(図表)。一般的にはファンドの規模が大きくなるとパフォーマンスが落ちると言われていますが、さわかみファンドは例え大きくなったとしてもファンド仲間の皆さまにパフォーマンスでお返しをすることはもちろん、結果の出し方にもこだわりたいと思います。その為には優れた企業に集中投資することが不可欠であると私たちは考えています。従来は株式を一度購入したら長期で保有する、「BUY&HOLD」(バイ&ホールド)というスタンスで投資してきました。長期で保有する点は変わらないものの投資先企業にコミット(集中投資)することで、共に成長するパートナーになりたいと考えています。
具体的には、まず消費者目線に立ってアナリスト達と徹底的に議論することにより、企業の商品・サービスが今後の社会にとって必要かを見極め、企業価値の推移を予測します。そして、これぞと思った企業が本来の価値に対して割安な時に投資し持ち株比率を高めます。それにより、企業価値が向上した際には成長の果実をより多く享受することができますし、企業が苦しい時にこそ共に歩むパートナーとして、目先の株価に捉われず長期的な展望で企業価値を向上させる経営をサポートできると考えています。
■組入銘柄の7割は10年以上の長期保有、「株価の先」見据えた投資を
朝倉氏: 日本株ファンドの中ではトップクラスの規模を誇る「さわかみファンド」ですが、ファンド仲間の皆さまへのフォローはどのようにされていますか?
草刈氏: 私たちはおそらくファンドとして初めて、運用報告会の場で多くの投資先企業に出展していただいいます。これは、ファンド仲間の皆さまの投資資金がどういったビジネスに回り、ファンドのパフォーマンスに貢献し、生活にどう役立っているかを実感していただくためです。ファンドに組み入れる銘柄の7割以上が10年以上に渡って長期投資をしてきた企業です。ファンド仲間の皆さまも長期投資の理念に賛同していただいているからこそ、こうした場で企業の長期的なビジョンを共有することで、想いを乗せた投資ができると考えています。
朝倉氏: 最後に、お二人から投資家の皆さまへメッセージをお願いします。
草刈氏: さわかみ投信は、長期投資の基本スタンスを忘れずに、これから10年、20年運用を続けていくために若い人材を中心に頑張っていきたいと思いますので、これからも応援よろしくお願いします。
澤上氏: さわかみ投信が提唱する長期投資とは、投資期間の長さだけではなく、投資を通じて企業や社会と共にじっくり成長しようという考え方です。投資運用とは、将来の不安を解消するため、あるいは積極的な財産づくりを目的として行うものですが、目的が達成された時に豊かな社会が実現していなければ、それは成功と言えるのでしょうか?ぜひ投資家の皆さまには、株価を見て投資をするのではなく、「株価の先」にある企業の商品・サービスが社会にとって必要かどうかを考え、どっしりと構えた投資をして欲しいと思います。そうすれば、資産が増えるだけでなく、豊かな社会の実現という形でもリターンが戻ってくるでしょう。そういった投資文化が世の中に根付くよう、さわかみ投信は頑張っていきます。そして皆さまと一緒につくっていけたら幸せです。(編集担当:徳永浩)
さわかみ投信は、1999年8月に「さわかみファンド」を設定以来、直販投信の草分けとして多くの投資家に長期投資の重要性を説いてきた。
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2015-06-26 10:15