中国介護ビジネスのキーワード(後半):日本企業にとって中国介護のビジネスチャンス

中国介護ビジネスのキーワードとして、「中国の高齢者の生活を理解するキーワード」と「中国の介護ビジネスの将来的な予測をするためのキーワード」を紹介致しました。今回は日本企業の中国介護のビジネスチャンスを簡単に紹介したい。
■1. ターゲットの特定
富裕層を攻略? それとも中間層?
これは富裕層または中間層のどちらをターゲットに選択するかことです。2013年の上海の一人当たりのGDPは1万4637ドルで、最も貧しい貴州省は3707ドル(中国統計局、換算レート1ドル=6.2元)で、約4倍の差が存在する。(但し最も貧しい貴州省のGDPもインドネシアの平均約3500ドルを上回っている)
また、中国の富裕層はケタ違いの存在し、先日発表されたアジアNO.1の富豪王健林(万達集団董事長)は李嘉誠氏を抜き381億ドルの資産を保有している。
アリババの馬雲氏も15億ドルの資産で(ファストリテーリングの柳井氏は100億ドル、フオーブス、及び中国経営網)そこまでの富裕層でないにしても、日本よりも数の上で多いのも事実である。日本のように総中流化(現在は若干2極化しているが)の社会と違い、非常に貧富の差が激しい。
そうした状況で、中国の介護制度設計が終了せず、既に高齢化社会に突入してしまった。一般消費財は中間層の拡大ということで、マーケットとしての中国が注目されているが、高齢者介護ビジネスにとってはほとんどの商品では、プロダクトライフサイクルの「導入期」にあたる。この時期は、非常に出費もかさみ、「カテゴリー認知」、「ブランド認知」が最も重要な時期で、費用も多く発生し、初期投資ですぐに回収は出来ず、長い目で見ていく必要がある。
中国企業と競争するために、ペネトレーション戦略で中間層を獲得しに行く方が得策か、または、企業の体力を考えて、上の層だけを獲得するスキミング戦略で、消費者を獲得しに行くのか、戦略の大きな分かれ目になる。
・ADL(日常出来る動作)
高齢者の日常出来るADLはいろんな区分が可能である。「歩行動作」、「手の動作」、「痴呆症or普通」、「トイレに行けるor行けない」、「目が見えるor見えない」等どの程度のADLの人を受け入れるかによって、サービス内容、または施設における体制等が変わってくる。
一概に「高齢者」とくくってしまうと、本質が見えにくくなってしまうので、注意する必要がある。
■2. 日本のノウハウの優位性
ターゲットが決まれば、日本企業のノウハウを注入していくことが重要である。介護ビジネスといっても非常に範囲が広いが、例えば下記のことは一つの日本企業の優位性ノウハウ一つになるかも知れない。
・介護施設の「絵画」
日本の多くの介護施設には絵画が飾られている。施設に入っても、生きがいを持って過ごして頂くための工夫である。一方で中国の多くの施設では、病院のように白い壁になっているところがほとんどである。
また、絵が飾られる高さにも工夫があり、寝たきりが多い施設では、その高さが、入居者様が寝た際に見える高さにしている(地面から1-2mの高さ)。決して家族が通って「綺麗」と見える高さ(地面から2-3m)にしない。これは高齢者の入居者様の視点にならないと気付かないものである。
・バリアフリーとしての「手すり」
ターゲットが決まれば、高齢者のADLに合わせた設計が必要である。これらは単純に設置すればよいと言うことではない。歩ける人が多ければ、歩ける人専用の高さにせねばならない。中国では北部と南部で平均身長も違うので、身長の高い北京の施設が、広州に進出する際には留意する必要がある。
・「手すりの形状と設置場所」
一般市民が利用する施設と違い、高齢者は握力がなかったりするので、あまり角ばった手すりは敬遠される。丸みを帯びた手すりにする必要がある等、設置場所は廊下やトイレ、風呂場等、あらゆるところにターゲットに合わせて、設置する必要がある。
・栄養管理
先日、中国の施設を訪問したが、食事は肉料理、野菜料理、スープ、果物と分かれていることが多かった。しかしながら、高齢者の必要な栄養素を考えてのメニューになっていなかった。高齢者の世話をするための施設で、病気の人たちを管理する施設ではないので無理もない。特に糖尿病の人は非常に注意する必要があるのだが、そういう管理にはなっていないことを知っておく必要がある。
また、高齢者は歯が丈夫とは限りません、歯が弱い人も存在する。そうした人への食事のメニューは、通常のカロリーの計算された食事か、流動食になるのか、個別の事情によってことなる。
そういった管理は日本では当たり前のことだが、中国では当たり前でない。中国の方は箱モノを建設するのは得意であるが、介護施設の様な聞設計時の気遣い、ソフト面でのケア等では日本の長年の経験がものをいう。
同様の事例は無数に存在する。日本の施設運営者には当たり前だが、中国の施設運営者には当たり前ではないことがある。ここに日中間の協力の必要性がある。
■3. 介護商品の販売チャネル
ターゲットが決まれば、どこで販売するかがおのずと決まってくるが、この点はなかなか悩ましい点である。
既存の一般小売店:
リスティングフィー(お店に取り扱ってもらうための入場料)が非常に高く、採算性に問題。一方で商品を取り扱って頂くことはメーカーの信頼性向上につながる。
インターネット:
介護者は必ずしもインターネット購買のオペレーションが得意とは限らない。また、ADLの違いによる商品のラインアップを紹介するだけのインターネットでの説明力は限界がある。
2000年以前の第一次流通革命(外資系小売店参入による流通業の発展)、2010年代の第二次流通革命(インターネット購買による小売業の構造変化)が起きたように第三次流通革命の変化を期待するしかないかも知れない(専門店の発展:カテゴリーキラー等の台頭等)。
最後に、日本企業がこれから中国に進出する際には「介護」と「環境」がキーワードになる。まだまだ日本企業が優位性を持っている分野である。現段階では、日本企業のサービスを中国に安売りする必要は全くない。社会貢献しながらビジネスチャンスを獲得できる喜びがあるので、自信を持ってもよいのではなかろうか。
是非とも市場性の高い中国での成功の為に、ご紹介した前半と後半の情報がお役に立てば幸いである。(執筆者:廣田(李) 廣達 提供:中国ビジネスヘッドライン)
中国介護ビジネスのキーワードとして、「中国の高齢者の生活を理解するキーワード」と「中国の介護ビジネスの将来的な予測をするためのキーワード」を紹介致しました。今回は日本企業の中国介護のビジネスチャンスを簡単に紹介したい。
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2015-06-29 11:30