ギリシャのEU離脱はあるのか?外為オンライン佐藤正和氏

 IMF(国際通貨基金)に対して返済期限を迎えたギリシャが、楽観視する市場関係者を裏切る形でいきなりデフォルト(債務不履行)に陥りつつある。その影響を受けて、為替市場や株式市場は大荒れに揺れたが、最終的には7月5日にギリシャで実施される国民投票にゆだねられることになりそうだ。最悪の場合、ギリシャのEU離脱という可能性もあるが、ユーロにとっては初めての試練といっていいだろう。一連のギリシャ騒動に対してどんな投資判断をすればいいのか。外為オンライン・シニアアナリストの佐藤正和さんに7月相場の動向を伺った。 ――ギリシャ政府が実質的な債務不履行に迫られていますが、その影響は?  これまで交渉を重ねてきたギリシャとEU(欧州連合)との話し合いは、結局まとまらずに日本時間の7月1日午前7時、EUによるギリシャへの金融支援は失効=ストップすることになりました。同時期に迫られていたIMFへの2000億円の債務返済も不可能になったわけです。IMFは、これをデフォルトとは呼ばずに「延滞」として処理することになりそうですが、ECB(欧州中央銀行)がギリシャ中央銀行を通して行って来た緊急融資が今後どうなるのか、注目されるところです。   ギリシャは今後も数多くの債務返済を迫られており、ギリシャ国内の銀行はすでに実質的な「預金封鎖」に入っている状況です。ギリシャ経済を取り巻く環境は、最悪のシナリオを辿りつつあるわけですが、チプラス政権は7月5日に「国民投票」を実施して、EUが求めている「緊縮財政」を受け入れるのかどうかを決定することにしています。その結果によって、今後のシナリオは大きく分かれることになります。 緊縮財政を受け入れることを選択すれば、これまでと同じシナリオになるわけですが、仮に国民投票の結果が「NO」となれば、少なくともギリシャにとっては極めて深刻な結末になってしまうかもしれません。ユーロそのものは、ギリシャの離脱によってそう大きく揺らぐことはないと思いますが、ギリシャ後には「次のターゲット探し」が始まり離脱が連鎖する可能性が出て来るかもしれません。離脱したギリシャも、旧通貨の「ドラクマ」を復活させることになりそうですが、ドラクマでファイナンスできるのか不安です。最悪、紙幣の信用度が落ちてハイパーインフレのような事態になる可能性が高いのではないでしょうか。 ――今回のギリシャ問題は、米国の金利引上げに影響を与えるのでしょうか? ギリシャ問題については、当然ながら米国の利上げの時期にも影響してくると思われます。実際に、イエレンFRB議長も「外部環境を見ながら(決める)」と発言しているように、ある程度の影響は避けられません。 ただ金融市場への影響は、リーマンショックの時と比較するとセーフティネットも充実していますし、ECB自体が量的緩和を実施していることを考えると、想定を超えるようなボラティリティ(変動幅)になることはないと思います。 いずれにしてもギリシャの動静をウォッチする必要があるのですが、同時に1日の米ADP民間雇用者数、2日の米非農業部門雇用者数には注目しておく必要があります。非農業部門雇用者数は今回は22万人と予想されていますが、そう大きなブレはないと考えられます。 その他、注目すべきイベントとしては、7月15~16日にイエレンFRB議長の「議会証言」があります。そこでどんな証言をするのか。金利引上げの時期に対して、具体的な言及があるのか、ないのか。注目したいところです。 ――日本への影響はどうでしょうか?ドル円などのレンジを教えてください。  日本への影響は、欧州市場でのシェアが高い企業の株式などが売られていますが、為替、株式ともに影響は限定的ではないでしょうか。ちなみに、ギリシャ政府が発行している「サムライ債」なども総額で100億円程度はあるようですが、大半が海外の金融機関が保有しており大きな問題はないと思います。  むしろ、黒田日銀総裁が「2%の物価上昇はコミットメントだ」と発言した、と報道されており、ギリシャ問題が深刻化すれば追加緩和の可能性もあるかもしれません。現在の日本経済は、ボーナスの平均給付額が大きく伸びるなど景気全般が上向いており、ギリシャ問題が最悪のシナリオになっても影響は限定的、と考えていいのではないでしょうか。  7月の予想レンジとしては、「ドル円」では1ドル=120円-125円、「ユーロ円」では1ユーロ=132円-140円というところでしょうか。「ユーロドル」では1ユーロ=1.07-1.13ドルと見ています。 ――中国の株式市場が大きく下落しましたが、クロス円はどんな動きになるでしょうか?  上海株式市場が大きく乱高下して、ギリシャ問題と相まって為替市場などに影響をもたらしていますが、豪ドル円に関してはそう大きな影響はないようです。中国経済と関連が深いオーストラリアですが、資源価格も上昇傾向にあり、国内経済も落ち着いていると言っていいのではないでしょうか。  中央銀行に当たる「RBA(オーストラリア準備銀行)」による利下げの可能性も残されているため、7月7日に行われる金融政策委員会は要注目ですが、そう大きな混乱はないと思います。そういう意味では、7月の「豪ドル円」の予想レンジは1豪ドル=92-96円というところでしょうか。  豪ドル以外の通貨では、英国ポンドが1ポンド=200円を何度かトライしていますが、なかなか突破できずにいます。やはり200円当たりが上限と言って良いのかもしれません。 ――ギリシャで揺れる7月相場、どんな点に注意すればいいでしょうか?  とりあえずは、ギリシャの国民投票が実施されて落ち着くまでは様子を見ることが大切です。仮に、ギリシャ国民がEU離脱を選択しても、1ドル=120円割れまで進む可能性は低いとみていますし、ギリシャ問題が落ち着けば相場の下値不安は消えて、また以前の円安トレンドが戻る可能性が高いと思います。  いずれにしても、ギリシャの国民投票の結果が出る7月6日の週明けは、米国の雇用統計の結果と合わせて、市場のボラティリティは高くなる恐れがあります。特に、7月3日は米国が独立記念日で祝日に当たるために要注意です。  大きな変動があってもロスカットに陥らないような、余裕のあるトレードを心掛けたいものです。(取材・文責:サーチナメディア編集部)。
IMF(国際通貨基金)に対して返済期限を迎えたギリシャが、楽観視する市場関係者を裏切る形でいきなりデフォルト(債務不履行)に陥りつつある。その影響を受けて、為替市場や株式市場は大荒れに揺れたが、最終的には7月5日にギリシャで実施される国民投票にゆだねられることになりそうだ。
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2015-07-01 14:45