今、日本企業の抱える2つの課題 人材の固定化と現地化

 先日、コラムの中でいま中国は撤退セミナーが花盛りとのお話ししたが、今中国では今後どのように中国事業を描いてゆくか頭を悩ませている人が多いのではないだろうか。  周りの話を聞く限り大きくいくつかの傾向がある。それは中国ビジネスの人材の固定化(スペシャリスト化)と現地化(日本人の削減)である。中には完全現地化(日本人駐在ゼロ)を達成した日系メーカーの工場も出現した。 ■駐在期間は短中期から長期へ  まず人材の固定について、日本人駐在員の短中期(1-5年以内)任期が減っている。駐在員については、従来5年以内の任期が主流であったが、最近は10年以上を任期としての出向または転籍の話をよく耳にするようになってきている。  これは短中期の人材配置では中国を理解したタイミングで帰任というケースが多く、事業が上手く軌道に乗らないばかりでなく、中国人スタッフの不信感を生んでしまうケースすらある。これが課題の1つだ。  そこで中国人材を専門として育成し、配置をロックする事でじっくり中国に腰を据えて業務展開させてゆく方が理に適っているということになる。もしいったん帰任しても、時間を空けてまた赴任するというケースが増えているのも同じ理由からである。大手企業でも中国事業とそれ以外の海外で人材の流れが分断されている傾向にある。余談だがインドも中国同様、配置をロックする傾向があるように聞こえてくる。 ■「本社の同意」が人材育成の壁に  ふたつ目の課題は中国人スタッフの育成である。特に中小規模の企業体では「番頭格」の育成が大きな課題である。当然のことだが番頭格が育ってくると、その下の中国人も安定し組織としての安定感が格段に増してくる。これが現地化の第一歩と考えているケースが多い。  ところが、この番頭格の育成というのが、かなり難しい。  まず、第一に昨今の給与水準の上昇、かなり高くなっているとの事情を勘案せねばならない。日本企業を渡り歩いている人材はそうでもないが、中国系大手企業や欧米企業などから人材を引き抜こうとすると、それなりの能力を持ったマネージャークラスの人間は、既に日本の駐在員より給与水準よりも高いケースもあり、日本本社の同意が取れないケースも見聞きするようになってきた。  日系企業は中国では比較的安い賃金でスタッフを雇っている。「安く雇っている」との認識が日本本社には大きく欠落しているように思えてならない。  現実に日系企業で長年番頭格を務めてきた人間が他の外資系企業や中国系企業に引き抜かれるケースを聞くたびに、人的関係だけで引き止める事の出来ない中国人の価値観と日本的浪花節とのギャップを感じる。業態にもよるが現実に5万元/月、7万元/月といったサラリーを得ている中国人がいる。そんあ中で、現地スタッフに対して日本本社の給与を気にせずに、どのような条件を考えるか。日本本社も、明確な考えを持つときが来ているのではないだろうか。  次回のコラムで現地化と人材育成について、もう少し話をしたいと思います。(執筆者:武田 康夫 提供:中国ビジネスヘッドライン)
先日、コラムの中でいま中国は撤退セミナーが花盛りとの話をしましたが、今中国では今後どのように中国事業を描いてゆくか頭を悩ませている人が多いのではないだろうか。
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2015-07-03 11:15