焦点はギリシャ問題から米英の利上げ時期に移るだろう=外為どっとコム総研

ギリシャ問題で揺れた外為市場だが、外為どっとコム総合研究所の取締役 調査部長兼上席研究員、神田卓也氏(写真)は、「マスコミ報道はギリシャ問題で加熱しているが、市場は冷静を保っている。今後は、米国の利上げ時期を巡る動きに注目点が変わってくるだろう」と見通している。9月にも利上げが予想されている米国、米国に続いて来年早々に利上げが予想される英国の動きに注目している。
――ギリシャ問題が市場の注目を集め、ドル/円も一時1ドル=122円を割り込むような場面がありました。当面のドル/円を見通すポイントは?
ギリシャ問題はメディアが大きく取り上げ、7月5日のギリシャ国民投票に向けて関係者の発言が様々に伝えられています。しかし、ドル/円については、ギリシャが焦点ではないと思っています。
ギリシャの債務不履行については、市場はある程度織り込んだとみられます。7月5日の国民投票においてEUがギリシャに求める構造改革案に、たとえギリシャ国民が「No」の判断を下したとしても、それが大きな混乱につながるとは考えにくいところです。一時的にはユーロが下落するとは思いますが、ドル/円への影響は小さいでしょう。
問題は、国民投票をきっかけにして、ギリシャがユーロ離脱に突き進むかどうかですが、そうならない限り、市場の関心はこの問題からそれてゆく事になるでしょう。そもそもユーロには離脱条項がないので、ギリシャが財政破たんしてもユーロに居座ることは可能です。また、ギリシャ国債を保有しているのはECBとギリシャの国内銀行、また、一部のヘッジファンドに限られていますので、債券市場でも大きな影響が起きるとは思えません。
したがって、ニュースでは連日大きく取り上げられていますが、シカゴのVIX(恐怖指数)は、ギリシャ国民投票を直前にしているにも関わらず16程度で、警戒レベルといわれる20に届いていません。市場は冷静に見ていることの証左だと思います。ギリシャを巡る騒ぎについては、“悲劇”として扱いたいメディアと、“喜劇”として見ている市場の間に温度差があるように感じます。
ドル/円については、ギリシャの問題がクローズアップされる前、ドル買いのポジションが大きかったため、環境の不透明感を嫌ってドル買いポジションを解消する売りが出て下落しました。ただ、下落の過程でドルの下値には買いが入り、ドルの下値のかたさが確認されました。7月2日に発表された米6月の雇用統計は、市場の予想よりも弱い結果になりましたが、ドルの下落は限られたものでした。
今後は、7月の米FOMC、また、8月上旬に発表される米7月の雇用統計などを確認しながら、ドルがじわじわと買われる展開になると思います。メインシナリオとして9月の米利上げを想定していますが、今後、米国の経済指標によって、9月利上げの確度が高まれば5月高値の1ドル=125.85円にトライすることも考えられます。当面の予想レンジは1ドル=121円~127円で考えています。
――ポンド/円は、ギリシャ問題が表面化するまではポンド高が続いていました。やや上値が重くなっていますが、今後の見通しは?
ポンドの勢いが鈍くなったのは、ギリシャのユーロ離脱問題が、英国のEU離脱問題を連想させている側面があると思います。現政権は2017年までにEUからの離脱を問う国民投票を実施すると公約していますので、ギリシャがユーロ離脱という動きになってくれば、英国のEU離脱懸念が意識されることになり、ポンドの上値を抑えることにつながります。
ただ、そもそもそれはメインシナリオではない上に、2017年までは、まだ間があるので、ギリシャ問題が山を越えれば、英国の利上げ時期に関心が移ると思います。一部では8月利上げという発言もありますが、さすがにそれはないでしょう。メインシナリオは来年早々の利上げ実施で、米国に次いで利上げをする見通しです。ポンド/円は、ジリジリとポンド高に進むでしょう。
当面の予想レンジは、1ポンド=188円~197円程度を考えます。
――その他、注目されている通貨ペアは?
ギリシャの国民投票を受けて、ユーロが、どう動くかは注目されます。ギリシャ国民投票の結果、EUからの構造改革案に国民が「No」の判断を下せば、一時的にはユーロ売りの圧力が高まると思いますが、問題はその先の動きです。
これまで、ギリシャの不安が高まる中にあって、ユーロが買い進まれる場面がありました。これは、ユーロ圏の経常収支の黒字やドイツの貿易収支の大幅な黒字など、ファンダメンタルズ面からのユーロ買いニーズが強いこと。また、ユーロ売りポジションが大きかったために、リスク回避で売りポジションを縮小するためのユーロ買いが出たことが要因と考えられます。
ただ、すでにユーロ売りのポジションを調整するためのユーロ買いは一巡したとみられるため、今後の実需のユーロ買いに対して、短期筋がユーロに対してどのようなスタンスで臨むのかを注目しています。
ギリシャ問題をきっかけに浮上したユーロシステムへの不信が、このまま継続してユーロへの評価を下げる要因として残り続けるのかどうかを見極めたいところです。
ここ2カ月ほど、ユーロ/ドルは、概ね1ユーロ=1・10ドル~1.15ドルのレンジで動いてきましたが、このレンジをどちら側に抜けて動くのかを見ていきたいと思っています。(編集担当:徳永浩)
ギリシャ問題で揺れた外為市場だが、外為どっとコム総合研究所の取締役 調査部長兼上席研究員、神田卓也氏(写真)は、「マスコミ報道はギリシャ問題で加熱しているが、市場は冷静を保っている。今後は、米国の利上げ時期を巡る動きに注目点が変わってくるだろう」と見通している。
gaitamedotinterview,economic,fxExchange
2015-07-03 18:45