中国で余剰人員に辞めてもらう方法 一定の人数をピンポイントで…

■一.余剰人員に辞めてもらう方法  中国では最近、可処分所得の高い中間所得消費者が増えています。こうした消費者を取り込もうと、飲食店やアパレルブランドは、フランチャイズや直営店など様々な形態で出店を増やしています。  一方で、全ての店舗が、計算通り成功できるわけではありません。また家賃の値上がりも急激です。そこで、不採算店舗の閉店もまた非常に増えています。こうして店舗を閉めたりすると、予想と反して、労働力が過剰になります。  こうした状況に対応する方法としては、まず(1)期間の定めのある従業員の期間更新をしないというのが一番楽な方法です。しかし、不要になった労働力にあたる従業員の期間が、丁度都合よく満了になるとは限りません。  他の方法としては、(2)労働契約法41条に基づいて大規模な人員削減を行う方法が考えられます。20人以上又は従業員総数の10%以上の従業員を整理する場合には、この方法が一番適した方法と言えるでしょう。  しかし、実際のケースで多いのはこのようにまとまった人数よりは少ない、一定の人数をピンポイントで辞めさせたいというニーズです。こうした場合は、3つ目の方法として(3)労働契約法40条によって解除することが考えられます。 ■二.労働契約法40条(3)  この条文は、「労働契約の締結時に根拠とした客観的状況に重大な変化が生じたことにより、労働契約書を履行することができなくなり、使用者と労働者は協議を経ても、労働契約の内容の変更について合意に達することができない場合に1カ月前に告知したうえで労働契約を解除できる」という内容です(経済補償金は必要)。  条文のキーワードの解釈は、下記のように解されています。 1. 「客観状況」  労働契約書を締結する時の、客観的な経済状況、社会状況、及び政治状況を指します。 2. 「重大変化」 【1】不可抗力的といえる事件が起こった状況、及び労働契約の全部あるいは一部の条項を履行することができない状況を指します。 【2】こうした客観的な政治状況、法律、法規、政策状況、社会状況が変化することを指します。 【3】使用者と労働者、どちらの原因で重大変化を招いたかは問題とされません。経営者の経営不振、労働者が病気で不適任になったなどの双方の状況が含まれます。 3. 「履行する事ができなくなる」  労働契約書の全部の履行に限られず、労働契約書のある条項を履行することができなくなる場合も含まれます。 4. 契約の内容の変更  元の労働契約書に基づいて、履行できない内容を改訂、補充、あるいは削除することを指します。元の労働契約書を変更しない部分は相変わらず有効で、変更した内容は元の関連部分に代わって、使用者と労働者双方を拘束力します。 ■三.結果の相反する2つの判例  具体的にどのような場合に、「状況の重大変化」が認定されるか、具体例として、下記の解除の否定された判例1と肯定された判例2をそれぞれ見てみましょう。 判例1 (事件の概要) ある不動産管理会社は、ある不動産開発会社と三年間の『不動産管理契約書』を締結しました。この中で管理会社は、開発会社の住宅区に不動産管理サービスを提供することを約束しました。この後、管理会社は、李さんと4年間の『労働契約書』を締結して、同氏は開発会社の住宅区で警備員として働くことを約束しました。 『不動産管理契約書』が期間完了する直前、開発会社は契約更新をしないことを表明したため、管理会社は『労働契約法』40条の第3項を引用して、李さんに1カ月分の代通知金と3カ月分の経済賠償金を払って、労働契約書を解除しました。李さんは離職後、管理会社の解除行為は違法と主張して提訴しました。 (法院の判断) 管理会社は、李氏と『労働契約書』を締結する時、開発会社と『不動産管理契約書』を締結したため、その『不動産管理契約書』がいつ期間満了するかは予知できる事情といえる。したがって、『不動産管理契約書』の期間満了の事実は、労働契約の締結時に根拠とした「客観的状況に生じた重大な変化」にはあたらない。 したがって、管理会社は、『労働契約書』40条の第3項を引用して、労働契約を解除できない。 判例2 (事件の概要) ある飲食会社は、ある金型会社と3年間の『飲食サービス契約書』を締結して、飲食会社から社員を派遣して、金型会社に飲食サービスを提供することを約束した。そこで、飲食会社は張氏と3年間の『労働契約書』を締結した上で、張氏を金型会社へと派遣して、コックとして働かせることを約束した。 その『労働契約書』の期間完了前、金型会社の代表は雲隠れして、経営は停止してしまった。そこで飲食会社は張氏と『労働契約書』の内容を更新しようと提案した。   更新の案は、職場は変えるが、勤務年数は加算して計算するといった内容であった。しかし、張氏はその更新案に同意しなかった。そこで飲食会社は『労働契約法』40条第3項を引用して、経済賠償金を払って、張氏との『労働契約書』を解除した。張氏は離職した後、飲食会社の解除行為が違法だと主張して、提訴した。 (法院の判断) 金型会社が『飲食サービス契約書』を履行することができなくなったため、飲食会社も経営に重大な困難を生じた。合理的な範囲から見ると、その状況で、張氏との『労働契約書』を履行できない状況になったといえる。これは労働契約の締結時に根拠とした客観的状況に重大な変化が生じたことと評価できる。 飲食会社が張氏に提案した案は、現実に実行できる内容であり、プロセスの点から見ても、問題はない。以上述べたように、飲食会社が『労働契約書』40条の第3項を引用して、契約を解することは支持される。 ■四.最後に  上記の判例1と2の違いは、状況の変化が予め予想できたものであったかどうか、という点から生じているといえるでしょう。  なお、冒頭にあげた特定の店舗を閉める場合の余剰人員の整理については、当該従業員の勤務地を閉店する店舗に限定するような契約書上の記載がないと、「客観的な状況の重大な変化」とは認められないリスクが高いと予想されます。 以上 (執筆者:東城 聡 提供:中国ビジネスヘッドライン)
最近、中国においては、可処分所得の高い中間所得消費者が増えています。こうした消費者を取り込もうと、飲食店やアパレルブランドは、フランチャイズや直営店など様々な形態で出店を増やしています。
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2015-07-15 09:45