スカルプケアは適切な睡眠・食事・運動が基本、頭皮を「洗う・与える・ほぐす・乾かす」の日常ケアは習慣に

 「スカルプ(頭皮)ケア」という言葉が一般に広がり、頭皮に直接つける育毛剤や、頭皮を清潔にするシャンプーなど、「スカルプケア」を強調した商品が多数発売され、新たに「スカルプドライヤー」という商品も出てきた。スカルプケアの留意点について予防医学・毛髪専門クリニック「ヘルスケアクリニック麹町」の院長 橋口華子氏に聞いた。橋口氏は、「AGA(男性型脱毛症)が知られ、20代での“思い込み薄毛”の方も出ているが、正しい知識を持って予防に取り組むことが大事です。髪のケアは、全身を整えることと考えてください」と語っている。(写真は、「スカルプドライヤー」) ――抜け毛や薄毛の原因やメカニズムは? 橋口 解剖学的には、頭部には太い血管は側頭部や後頭、また、眼の際などにしかなく、薄毛などになりやすい前頭部や頭頂部には毛細血管しかないのです。加齢等によってサイクルが衰えると、髪の素となるたんぱく質が十分に供給されず、髪が弱くなってしまいます。  「髪は夜に作られる」といわれるのも、横になって頭を心臓と同じ高さまで低く保つというのが重要な要素です。薄毛に悩む方に、睡眠時間が短いことを指摘すると、電車の中で寝ているという方がいますが、横になることが大切です。  人には毛髪を生み出す毛包が10万くらいあります。この数は母親のお腹にいる3カ月くらいの時にだいたい決まっています。生後、毛包は増えません。生まれた時には大体30%程度の毛髪があり、1歳で70%、2~3歳で100%に増えていきます。 ■7の倍数の年齢はヘアサイクルで脱毛が増加も 橋口 ヘアサイクルは2年~7年と言われていますが、このサイクルは生まれた時から始まっています。たとえば、7年サイクルとすると、7歳になった時に最初の30%は抜けます。8歳で40%が、さらに、9歳になったら残り30%が抜けるのです。ただ、髪の毛は同じ毛包から2~3本出ていて、まったく違うサイクルを営んでいるので、ヘアサイクルはモザイク状に進みます。  ヘアサイクルの関係から、7の倍数に当たる年齢(21歳、28歳、35歳など)から2~3年は、抜け毛がある程度増える時期ということがわかると思います。AGAが知られ、20代で「AGAになってしまった」とあわてる“思い込み薄毛”の方も出てきていますが、経過をみないと脱毛が本当に薄毛になるのか、ただのサイクルなのかはわからないのです。  一方で、AGAは、遺伝が大きな因子ですし、喫煙、不規則な食事、偏った食事、睡眠時間が減るなどの環境の変化も関係してきます。毛髪にとって悪い環境にある方は、早め早めに予防することも重要です。 ――日常の生活の中で、誰でも取り入れやすい薄毛対策はありますか? 橋口 皮膚も髪も内臓の鏡といわれますので、髪だけでなく全身を整えていくことが大事です。きちんとした睡眠、食事、運動が基本になります。それにプラスしてシャンプーなど、日頃のスカルプケアが重要になります。 ■「脱脂」と頭皮を乾かして清潔に保つこと ――スカルプケアのポイントは? 橋口 皮脂をとることが非常に重要なことです。最近では、頭髪を気にする方にノンシリコンシャンプーは常識になり、頭皮に良いといわれるアミノ酸系シャンプーを使う方も増えています。しかし、アミノ酸系は脱脂が弱く、若い男性では「脱脂」がポイントになるので、アミノ酸系では弱いと思います。  また、シャンプーでは洗い方を、もっと意識してほしいと思います。当クリニックでは頭皮のチェックを行いますので、来院される方はしっかりシャンプーしてきているはずですが、毛穴が角栓や汚れで詰まっている状態の方が非常に多いです。指の腹などで洗うには限界があるので、スカルプブラシなどを使って余計な力を入れずにブラッシングするといった工夫も必要だと感じます。  洗うことと同様に頭皮をもんであげることも大事です。血流から得られる酸素や栄養物がしっかり届くためには、日頃から頭皮をやわらかくもんであげましょう。自分で毎日続けるのは本当に難しいのですが、機器を使うなどして工夫すると良いと思います。  それから、シャンプーの後は頭皮まで乾かすことも重要です。当クリニックでは、ドライヤーを使う時に頭皮から乾かすことを推奨しています。さらに、毛根を守っていくことが大事ですから、そのために育毛剤を使うことも、ひとつの方法だと思います。 ――男性はドライヤーを使わずに自然に乾くことにまかせている人も多いと思いますが、乾かさないと何がいけないのですか? 橋口 たとえば、髪が湿ったまま寝てしまうなど、一定時間放置すると頭皮に雑菌が繁殖します。頭皮に真菌(カビ)などが繁殖するとフケ症が悪化するなど、頭皮の環境が悪くなります。シャンプーの後は、タオルドライをして、なるべく高温の温度にさらさずに頭皮や髪を乾かすことが重要です。高温では髪の毛を傷めてしまうため、高温のドライヤーを使う場合は、頭から離して使うようにしましょう。  育毛剤を使う際にも、頭皮が乾いている状態で塗らないと、本来、有効成分が吸収されるはずのスペースが水で埋まってしまい、育毛剤の入る余地がありません。洗い方が不十分で毛穴に汚れ等が詰まっていては、育毛剤が十分に届かないことと同様に、頭皮が乾いた状態で育毛剤を使うことが大切です。 ――その他、頭髪ケアで気を付けるべきことは? 橋口 繰り返しになりますが、髪のケアは全身のケアに等しいので、食事、運動、睡眠が大事です。髪の毛のためだけではなく、若いうちから、食事、運動、睡眠に気を付けて、生活を整えるという意識を持っていることが大切だと思います。 ■頭皮を乾かすことも重要なスカルプケア  一方、「スカルプドライヤー」を5月に新発売したヤーマンに「スカルプドライヤー」の開発意図について取材した。  「スカルプドライヤー」は、スカルプケアの中で、頭皮を乾かすという点に着目した新タイプのスカルプケア商品といえる。開発担当者は、「髪の美しさを大切にする女性が髪にやさしいドライヤーを選ぶように、頭皮を大切にする男性のために、健やかな頭皮の環境を守る“頭皮用ドライヤー”という提案ができないかと考えました。一方で、スカルプケア市場は、スカルプシャンプー・洗髪ブラシ・育毛剤・ヘッドスパ機器など、洗う・与える・ほぐすという工程はカバーされていますが、“乾かす”というステップが足りていないことに着目しました」(開発本部の酢屋優介氏)と語っている。  頭皮を乾かすことの重要性は学術論文等でも確認し、遠赤外線と低温風で頭皮を乾かし、振動によって頭皮に刺激を与えるという機能を加えた。発売後に10名限定で募集したモニターには、30代~50代の男性を中心に約400名の応募があるほどの反響になったという。  頭髪の悩みは、男女に共通。特に男性は、薄毛を気にする人が少なくない。ヘルスケアクリニック麹町の橋口氏が指摘するように、きちんとした睡眠、食事、運動を実行し、内臓を含め身体全体を健やかに保つことに気をつけたい。ただ、社会人生活は、思うように睡眠がとれない場合や、偏った食事になることも少なくない。頭髪の状態が気になったら、早めのケアが重要だ。橋口氏は、多くの薄毛に関する相談に応じてきた経験から「酷くなってから病院に行くより、日頃からスカルプケアを習慣づけることが大事。ていねいなシャンプーや頭皮をやわらかくもむこと、また、頭皮を乾かすということは、毎日の少しの意識付けでできるはず」と語っている。(編集担当:風間浩)
「スカルプケア」を強調した商品が多数発売され、新たに「スカルプドライヤー」という商品も出てきた。スカルプケアの留意点について予防医学・毛髪専門クリニック「ヘルスケアクリニック麹町」の院長 橋口華子氏に聞いた。(写真は、「スカルプドライヤー」)
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2015-07-16 11:00