マンション広告をしないサイトが会員17万人に大成長した理由=購入検討者の価格情報ニーズに答える「住まいサーフィン」

マンションの価格高騰を2013年に予測的中させた人がいる。「2018年までのマンション戦略バイブル」などの著書のあるスタイルアクト代表取締役の沖有人氏(写真)だ。沖氏はマンション購入の需要が高まっていることを実感するという。同社が運営する無料会員制の情報サイト「住まいサーフィン」の利用者が拡大し、調査結果でもインフレを理由に購入を急ぎたいという声が集まっているとのことだ。そんな沖氏に、当面の不動産売買市場の見通しや「マンション購入」にあたって注意するポイント等を聞いた。
――今年1月に「2018年までのマンション戦略バイブル」を発行されました。比較的長期の投資となる不動産を、あえて2018年という近い将来にターゲットを置いた意図は?
2018年までが現在の黒田日銀総裁の任期です。その間は金融緩和策が継続し、不動産価格は上昇し、資産インフレの流れは当面は続くと想定されるからです。なぜなら、金融緩和された資金は担保の取れる不動産に流れるからです。
2018年以降の金融政策、また、日本の景気がどうなっているのか見通すことは困難です。オリンピックを境に不動産価格が下落に転じるかもしれません。
――下落に転じる可能性があるのにマンションを購入していいのでしょうか?
仮に5年後、価格が下がったにしても、そこで売却すれば不動産売買にかかわる手数料や住宅ローンの金利負担等を考慮しても、含み益を残せる物件はあります。
マンション等の自宅購入にあたって「売ることを前提に考える」ということを私は提案しています。自宅を「終の棲家」とは考えません。「マンションは10年で買い替えなさい」という著書でも書きましたが、自宅として住まいながらも、マンションを資産として考え、資産形成の手段にすることが重要だと思います。
――著作「マンションは10年で買い替えなさい」はベストセラーになりましたがどんな内容なのですか?
自宅購入で資産形成をする方法を書きました。
購入前の段階でその立地の「価格の妥当性」や「築年経過による価値の目減りの程度」を知っておく必要があると考えます。また購入してからは、その物件の価値を知り、資産価値を把握することが大事ということです。
――頭では分かりますが素人が実践するのは難しいのではないですか?
そうですね。ですので、書籍ではノウハウを書き、物件選択に必要な情報は「住まいサーフィン」に公開しました。そのような不動産の購入を資産形成の手段として考えるために必要な、客観的な価格情報や定点観測が手軽にできるノウハウを提供しているサイトです。
先日も講演した際に、「2000万円の含み益が出たので沖さんにありがとうを言いたい」と来られた方がいます。自宅は3000万円まで売買益は無税ですから。
――その「住まいサーフィン」は登録会員数が17万7千人余りになっていますが、そもそもサービスをスタートした経緯は?
不動産の売買市場は、情報の非対称性が強いと感じたことが、サイトを開設した一番の理由です。売り手である不動産会社には様々な情報があるのに、買い手は「初めての住宅購入」であることが多く、ある意味、売り手側の意のままに売買契約を結んでしまう人が多いと感じました。サイトを設立した2003年頃は、世の中はインターネット時代で、知りたい情報に簡単にアクセスできるようになっているのに、不動産売買の情報はオープンにされないものでした。
――新築マンションの価格は広告には掲載されていないですもんね?
そうです。新築マンションの広告に間取りはあっても、価格の情報は問い合わせなければわからないですよね。そこで、不動産の売買情報を集めて、それらを分かりやすくまとめて提供し始めました。最初は、「駅ごとのマンション相場表」を作ってWEBにアップし、徐々にコンテンツを増やしました。
――他にはどんなコンテンツを作ったのですか?
物件評価やアンケート結果等のコンテンツを作りましたね。その情報を見たい人がどんどん集まって、1年後には広告を一切行わなかったのに1日あたりのユニークユーザー数が1万人に達するサイトになりました。ところが、当時は掲示板上での誹謗中傷が社会的に問題視され、掲示板の情報の削除依頼なども頻繁に入るようになったため、2004年に会員制(登録無料)のサイトにリニューアルしました。
――今、人気のコンテンツは何ですか?
会員制というメリットを生かして、「住まいサーフィン」は、マンションの価格情報と評価にフォーカスしたサイトとして運営しています。端的に一戸一戸の価格が知りたいというニーズに応え、リアルタイムでマンションの部屋単位の価格が分かるサービスが好評です。
――部屋単位の価格はどうやって算出しているのですか?
一言で言うと、どこの企業よりも多い不動産ビッグデータを使って、統計解析を用いて算出しています。マンションは、立地、間取り、階数など1戸1戸が別のものです。分譲価格は調べれば分かりますが、築1年経つと時価は分譲価格と同じではありません。中古マンションの売買が成立したという価格情報があっても、その隣の住戸の価格は同じではありません。あらゆる価格情報を集め、データを継続取得し、それを分析することによって適正時価が算出できます。それが「沖式(新築・中古)マンション時価」です。
この沖式マンション時価により191万戸の個別マンションの各戸の価格がリアルタイムでわかる、「沖式自宅査定」を実施することができます。すでに約6万件の自宅査定の実績があります。
――不動産ビッグデータがあると、資産価値が高いマンションの特徴もわかりますか?
たとえば、マンションの価格特性として、都心や駅に近い方が値下がりしにくい、総戸数が多い方が値下がりしにくい。建物の階数は高い方が、面積は広い方が値下がりしにくいなどの法則があります。これらの法則、そして、経年劣化などのよる価格の下落、さらに、その時々のマンション価格市況などを合わせて分析することによって、沖式時価を算出しています。
――今後の展望は?
不動産業界にITで革命を起こしたいという思いでサービスを提供してきました。私たちは13年前に「住まいサーフィン」を開設し、ユーザーの声を収集し公開していったことで、不動産業界の変化のきっかけを仕掛けたのではないかと考えています。
現在のコンテンツは、「沖式時価」の情報、サイトユーザーが感じた物件のユーザー評価情報、そして、不動産会社、施工会社、管理会社などについてのユーザー評価情報など、マンションの売買に関する情報を総合的に提供しています。今後は、各種のデータや分析ツールなどを組み合わせ、より使いやすいサイトにしていきます。
個人の資産のうち、不動産と金融資産の割合は50%ずつです。この資産の半分を占める不動産について、資産形成の手段として活用することが広がれば、不動産市場の活性化につながると思っています。そのためには、より透明な価格情報が流通することが必要です。その一助として「住まいサーフィン」が役立つようにしていきたいと思っています。(編集担当:風間浩)
「2018年までのマンション戦略バイブル」などの著書のあるスタイルアクト代表取締役の沖有人氏(写真)に、当面の不動産売買市場の見通しや「マンション購入」にあたって注意するポイント等を聞いた。
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2015-07-16 12:45