福島の除染に伴う土壌や廃棄物、30年後の最終処分に向け減容化が重大な課題=RADIEX2015で活発な議論

 東日本大震災および東京電力福島第1原子力発電所事故の発生から4年余りが経過し、福島の復旧復興事業の加速化が求められている。その中で、地域のインフラ復旧等を迅速に進めるためにも、除染等に伴い大量に発生している放射性物質を含む土壌や廃棄物等の減容化(廃棄物などの容積を減少させること)が喫緊の課題として浮上している。その時に重要となるのが、廃棄物を焼却して容量を減らす焼却炉だ。災害初期の段階には、瓦礫ゴミ等の大型ゴミの減容化が急務となり、それらの減容化に適したストーカ炉が建設該当エリアで採用されていった。一方、大型ゴミの減容化が進んでいる中、喫緊の課題として挙げられるのが、農林系汚染廃棄物の減容化だ。農業系廃棄物は水分量が多いため、焼却する際には流動床炉の方がよいと考えられている。このように、対象焼却物によって焼却炉は使い分ける必要がある。  2015年7月15日から東京・九段下の科学技術館で始まった「環境放射能対策・廃棄物処理国際展RADIEX2015」(主催:環境新聞社)でも、初日から除去土壌の処理や運搬、そして、焼却炉も含め30年後の県外最終処分に向けた課題と対策について熱心な議論が繰り広げられた。RADIEXの開催は7月17日まで。(写真は、RADIEXフォーラムの様子)  現在、福島県内で発生した除染に伴う土壌や廃棄物(落葉・枝等)は仮置場等に保管され、建設が予定される中間貯蔵施設予定地に向けたパイロット輸送が進められている。初日の基調講演を行った環境省放射性物質汚染対策技術統括官の吉崎収氏は、「本格輸送において安全かつ確実に実施できることを確認するため、1年間をかけて各市町村から概ね1000立方メートル程度の輸送を実施。輸送に伴う生活環境への影響等をモニタリングする」と語り、すでに9市町村(双葉郡8町村・田村市)でパイロット輸送を開始していると状況説明した。福島県内で発生する除染土壌等の発生量は、試算によると約1600万から約2200万立法メートル。東京ドームの約13~18倍に相当する量が想定されている。  この膨大な量の土壌や廃棄物を、放射性セシウム濃度や特性に応じて分別、そして、草木などの可燃物は焼却して減容化し、貯蔵物の容量を減らすことが進められている。その上で、福島県内に建設する中間貯蔵施設に一時的に貯蔵する。放射性セシウム濃度が8000ベクレル/kg超の土壌については、覆土・遮水工等を施した土壌貯蔵施設に保管、放射性セシウム濃度10万ベクレル/kg超の廃棄物については、RC造等遮へい効果を有する建屋で囲まれた廃棄物貯蔵施設に保管することが計画されている。  RADIEXフォーラムの初日に講演した国立研究開発法人 国立環境研究所 資源循環・廃棄物研究センター長の大迫政浩氏は、「2000万立米以上になるとみられる土壌や廃棄物を30年後に県外最終処分という計画を実行するためには、廃棄物の減容化が求められる。今後、廃棄物の減容化について技術を成熟化させていくことが必要だ」とし、廃棄物の焼却についての技術を磨いていくことの必要性を語った。  大迫氏によると、廃棄物の焼却炉のタイプは、「ストーカ式」、「流動床式」が使用され、さらに燃え残りや灰などを再燃焼させることで溶融させる「溶融炉」が使われているという。その中で、「ストーカ式」は、燃焼の過程で「主灰」と「飛灰(ばいじん)」の両方を排出。「流動床式」は残灰も吹き上がり、ほぼ全て「飛灰」として回収するため、「飛灰」中の放射性セシウム濃度は、「ストーカ式」に比べ「流動床式」の方が小さくなるという。燃焼炉の違いによる放射性セシウムの濃度に差が出ることを指摘した。  一般に、可燃廃棄物を焼却炉で燃やすと、10分の1程度の体積の灰になる。さらに、溶融炉で再燃焼すると約10分の1のスラグになる。このように体積が小さくなることによって単位当たりの放射性セシウムの濃度は高まり、ストーカ炉の「主灰」では濃度が倍、「飛灰」は33.3倍の濃度になるとされる。流動床炉の「飛灰」では濃度が約16.7倍になるとされる。この濃度と排出される灰の量をそれぞれ比較して、最適な廃棄物の減容化の仕組みを作っていくことが重要との指摘だった。  「主灰」等は、濃度が低いものはセメント等に再利用が可能。また、「飛灰」は塩素と反応して塩化セシウムになり、水溶性で洗浄することによって分離し、吸着剤を使うなど飛灰洗浄技術は成熟していると語っていた。  さらに、主灰系、飛灰系など、「それぞれの特性、濃度に合わせた再利用の方法も同時に検討していくことが重要」だとし、「30年間という長期的な管理の中で、コスト合理性を考えることが必要になる」と語っている。「自然減衰によってセシウム137は300年で濃度が1000分の1になることが知られている。このようなことも、管理の考え方の中に取り入れ、10万ベクレル/kgのものは、将来は100ベクレル/kgに自然減衰するのであれば、その性質を活かした保管・再利用についても考えていかなければならない」と主張した。  一方、「科学的に許容レベルとされる濃度であっても、実際に利用する人に受け入れられるかどうかは別問題。福島県内の土壌や廃棄物の減容化には、低レベル濃度のものの再利用は重要なステップになるが、どの程度の濃度であれば県外に持ち出して利用してもらえるものなのか。最終処分地の選定も含めて、国民的な合意形成が重要な取り組み課題になる」と語っていた。  最後に、大迫氏は、技術的な側面から試算すると、「ベースシナリオである2000万立米の土壌や廃棄物を最終処分地に運び出すことのコストを計算すると約3兆円が必要になるところ、減容化が進むことによって約半分のコストで移動が可能になる。技術の選択によって、コストには大きな違いもあるが、様々な技術を組み合わせて、より低コストでの廃棄物処分が行われるよう、今後も研究・検討を進めていきたい」と締めくくっていた。(編集担当:風間浩)
2015年7月15日から東京・九段下の科学技術館で始まった「環境放射能対策・廃棄物処理国際展RADIEX2015」で、初日から除去土壌の処理や運搬、そして、焼却炉も含め30年後の県外最終処分に向けた課題と対策について熱心な議論が繰り広げられた。(写真は、RADIEXフォーラムの様子)
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2015-07-17 18:00