マネックスとピクテ(日本)のトップが語った中国・米国市場の見通しが対照的、共同で「プレミアム・サマーナイト」開催

 利上げ後の米国株式市場の行方は強気か弱気か? また、中国経済の見通しなど、個人投資家からの質問に、マネックス証券の代表取締役社長CEOの松本大氏、ピクテ投信投資顧問の代表取締役社長の萩野琢英氏、そして、スイスのジュネーブから衛星中継で参加したピクテ・アセットマネジメントのバランス運用チーム・ヘッドのエリック・ロセ氏が直接答えるイベント「マネックス×ピクテ プレミアム・サマーナイト」が2015年7月21日、東京・恵比寿のAct square(アクトスクエア)で開催された。ピクテの萩野氏は、「スイスのプライベートバンクとして210年の歴史があるピクテは、長期的な資産保全を重視した運用に特徴があり、一言でいうと『ビクビクしながら』運用している」とピクテの運用の特徴を紹介した。(写真は、「マネックス×ピクテ プレミアム・サマーナイト」の様子)  「マネックス×ピクテ プレミアム・サマーナイト」は、マネックス証券の公式サイトで聴講者を募集し、定員150名のところ、募集開始3日間で600名を超える応募があったという。同セミナーを共催したマネックス証券の松本氏は、「資産運用の成果はインフレの時代には格差がつく。マネックス証券では低廉な手数料や各種情報・ツールを提供しているが、重要なことはマーケットの見方や投資についての考え方など、ソフトの部分を伝えることと考えている。今回、210年の歴史のあるピクテの知恵と経験をお伝えしたい」と、開催の目的を語った。  ピクテ投信投資顧問の萩野氏は、「今、お伝えしたい ピクテ210年の歴史と経験に学ぶ『これからの』資産運用」をテーマに講演。「ピクテは3世代にわたって資産の運用を託されるというようなビジネスを展開しているが、プライベートバンクのスタートである『託される』という言葉には、キリスト教の影響を受けた、冒すことのできない重い意味合いがある。ピクテの源流は、プロテスタントのカルバン派の教えである真面目、倹約、質素を旨とし、大事な資産を託されて守るという使命を全うすることに努めている」と、歴史を振り返った。  そして、「資産保全の鉄則」として「グローバルに分散投資すること」、「物価上昇率を超える運用をめざすこと」という基本姿勢を示し、「資産を預金を含めた全体で考え、何時でも使える『預金』、預金の一歩先という位置づけでインフレ率程度のリターンを目標とする『欲張らない投資』、中リスク中リターンの『育てる投資』、リターンを追求する『スパイス的な投資』の4つの資産に分け、特に『欲張らない投資』と『育てる投資』は資産のコアとして重要」と強調した。  日本では、比較的リスクの高い投資信託が多く、「欲張らない投資」にあたる低リスクの投信が少ないとし、ピクテ投信投資顧問が運用する「ピクテ・マルチアセット・アロケーション・ファンド<愛称:クアトロ>」を、日本政府や日銀がめざすインフレ率目標2%を上回る安定的な運用成果をめざす投信として紹介した。  その後、ジュネーブと衛星回線をつないで、Q&Aコーナーを展開。質問は来場者を含め、同セミナーに参加申し込みをした人から事前に集めた質問を集約し、「中国経済の見通し」、「利上げ後の米国株式市場の行方」などについて、松本氏、萩野氏、ロセ氏の3氏が回答した。ロセ氏は、ピクテのバランス運用チームのヘッドとして「ピクテ・マルチアセット・アロケーション・ファンド<クアトロ>」の運用も担当している。  中国経済について、松本氏は「中国株の大きな変動において、日本と中国の市場の仕組みは異なることを経験したばかりだが、中国の株式市場と中国経済は必ずしも一致しないと考えた方が良い。中国経済は、膨大な人口とインターネットの発達によって経済規模は引き続き拡大し、米国を超える最大規模の経済大国になるだろう。投資の視点では、その中国の経済拡大によって恩恵を受ける企業に投資するという考え方が大事だ」と解説した。  これに対し、萩野氏は「欧州の投資家は、長期的な観点で中国には強気だ。短期的には様々な問題を抱えているものの、今後、中国の経済規模の拡大と人民元の存在感の高まりを考えると、分散投資の一環として中国は投資すべき国と位置付けられている」と語った。ロセ氏は、「中国株の下落の際に、日本株が大きく下落したのは、中国市場の流動性が低いために、中国株のリスクヘッジとして日本株を売る動きが出たため」と直近の動きの背景を語り、「中国株式市場には投機的な動きが活発で、投資するのが難しい国」と語っていた。  一方、利上げ後の米国株式市場の見通しについて、萩野氏が「個人的な見解ですが、世界の株式市場はおおむね8年のサイクルで上げ下げを繰り返し、米国株は以前のピークである2007年からすでに8年目を迎えていることを考えると、強気にはなりにくい」と語った。また、ロセ氏も「米国株の指標は、この5年~6年の値上がりによって割高な水準になっている。依然として米国企業の成長は続いているが、利益率は鈍化している。ファンダメンタルズで見た場合、米国株には強気になれない」と、荻野氏に同調した。  松本氏は、萩野氏やロセ氏の考え方とは反対で、「経済がしっかりしているからこそ利上げに踏み切るのであるから、基本的に強気。また、日本や欧州が金融緩和を継続している中で、増大するお金の行き先として米国株は外せない。一般に、利上げをすると株価は下がるが、世界的な金融緩和で1周先を行く米国は、遅れている欧州、日本の緩和のメリットを受けるというズルい立場にあるといえる」と持論を展開した。  加えて、「米国社会は、年金や教育資金のために、株価が上がらないと国民の生活が困る体制になっている。株価を育てることを国策としてやっていくことを明確にしているので、株価を意識した経済政策を実施するだろう。また、日欧の金融緩和に対し、米国は利上げであるため、為替ではドル高の方向。株価が多少下がっても為替でカバーされるため、米国株は安心できる資産クラスと考える」と語っていた。  また、松本氏は、「今は、世界的な金融緩和が大きな流れで、大胆に投資して楽しみながら資産運用ができる時期。ただ、金融緩和の流れが変わる時には大きな変化が訪れるので、その変化を感じ取れるように、cautious(用心深い、慎重)に投資と向き合うことも大事」と注意も促した。(取材・編集担当:徳永浩)
「マネックス×ピクテ プレミアム・サマーナイト」が2015年7月21日、東京・恵比寿のAct square(アクトスクエア)で開催された。(写真は、「マネックス×ピクテ プレミアム・サマーナイト」の様子)
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2015-07-22 13:15