日本でも日本酒ブーム到来か?

日本経営管理教育協会が見る中国 第368回--三好康司(日本経営管理教育協会会員)   本年(2015年)7月3日(金)の日本経済新聞(以下“日経新聞”)夕刊に「新世代台頭 日本酒の逆襲」という興味深い記事が掲載されていた。我が国の伝統産業である日本酒製造業(酒蔵)について考える。 1.我が国の日本酒製造業   文献で初めて「酒」が記述として登場するのは、713年以降の『大隅国風土記』と言われている。その後、江戸時代に入り酒造りの製法が確立、日本酒は国酒としての不動の地位を築く。昭和戦後の米不足に対応して開発された醸造用アルコール添加の日本酒が大量生産で市場を席巻、1970年頃に日本酒の消費量はピークを迎える。   高度成長期の終焉後は「日本を再発見しよう」という機運が高まり、1970年代から1980代前半にかけ「越乃寒梅」などを中心とした地酒ブームが湧き起こった。しかし、ワイン、ビール、焼酎、ウイスキーなどのアルコール飲料の多様化、ライフスタイルの変化により、日本酒の消費量は年々減少、現在では1970年代のピーク時の3分の1となっている。 2.世代交代による若手蔵元(酒蔵社長)の挑戦   日経新聞の記事では、新政酒造(秋田県)の8代目蔵元(40歳)が取材を受けている。大学卒業後ライターとなり酒造りと無縁の生活を送るが、2007年に実家に戻る。酒蔵は当時、醸造用アルコールなど添加物に頼り味わいを失っていたため、「このままなら5年後には潰れる」と思ったそうだ。醸造の発想を変えるため、担当社員ほぼ全員を若手に代え、原料にこだわった酒造りを追求、品質は高まり、全国から引き合いがくるほどの人気銘柄に成長する。   同じように酒造りにこだわる30~40代の若手蔵元が全国各地で現れており、「洋総菜が並ぶ今の食卓に合った、バランスの良い甘さと酸味、少し感じられる発泡感。そんな新しい酒が若い世代や海外の人たちの味覚もとらえ始めている」と日経新聞は結んでいる。 3.酒蔵取材を通じた潮流   筆者は、2014年に京都から福島まで日本各地の酒蔵を取材した。取材メモには、「原料米からこだわり、自社にしかできない味わい、品質の酒を造る」、「若者、特に女性をターゲットとした酒造りを行う」、「ボトルデザインの細部までこだわり、店頭で手にとりやすい商品を開発する」、「酒蔵を開放し、外国人観光客に日本酒の良さを味わってもらいたい」、「各地で試飲会などイベントを開催し、ファンを作っていきたい」など蔵元の印象的な言葉が並ぶ。   かつての大量生産型の製造でなく、日本各地の若手蔵元・杜氏(製造責任者)を中心とした、本当に造りたい酒を試みる流れが台頭していると感じた。   最後に、飲食店・小売店も取材したが、「若者、特に女性で日本酒を飲む人が増えています」と語っていた。ブームをけん引する、若手蔵元を中心とした動きから今後も目が離せない。(執筆者:三好康司・日本経営管理教育協会会員 編集担当:水野陽子)
本年(2015年)7月3日(金)の日本経済新聞(以下“日経新聞”)夕刊に「新世代台頭 日本酒の逆襲」という興味深い記事が掲載されていた。我が国の伝統産業である日本酒製造業(酒蔵)について考える。
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2015-07-22 17:15