【相場の福の神トップインタビュー】バリューHR、健康管理に特化したデータヘルス関連サービスで医療費削減に貢献

バリューHR <6078> は、システムを使った「バリューカフェテリア」サービスによる健康管理サービスと、企業向けの健康保険組合(健保組合)の設立コンサルと設立後の運営支援を2本の柱として着実に成長を遂げている。2015年12月期決算では売上高23億900万円(前期比14.8%増)、営業利益4億1800万円(同23.1%増)と過去最高の収益を見込んでいる。健康診断をベースにした予防領域は、医療費の増大を抑制したい国の政策に合致し、ソーシャルベンチャー(社会貢献企業)として、一段の飛躍が期待される。同社代表取締役社長の藤田美智雄氏(写真:左)に、「相場の福の神」として活躍するSBI証券投資調査部のシニアマーケットアナリストの藤本誠之氏(写真:右)が、今後の展望を聞いた。
――ビジネスモデルについてご紹介ください。
メインビジネスは「バリューカフェテリア」のプラットフォームを提供し、システム利用料をちょうだいするビジネスです。これが売上高の75%程度を占めます。その他は、健保組合の「設立支援コンサルティング」と事務局運営支援としての人材派遣を行っています。
「バリューカフェテリア」は、企業の福利厚生を代行するサービスで、ベネフィット・ワンやリロクラブ等と競合するのですが、当社は健康診断や健康管理に係る各種サービスに特化しているという特徴があります。旅行やレストラン、スポーツクラブやショッピングなどと連携してコンテンツが充実しているリロクラブとは、業務・資本提携を行い補完関係にあります。
また、「バリューカフェテリア」のシステム利用料は、健保組合や企業から加入者数に応じてちょうだいしています。システム利用料は1利用者あたりフルパッケージで月間500円です。健康管理サービスやカフェテリアプランの一部サービスのみを利用する場合は利用料を割引いて提供しています。「バリューカフェテリア」の利用者数は2014年12月末で約54万人になりました。
――健保組合を設立するメリットがあるのは、従業員何名以上の規模の企業ですか?
健保組合を設立するメリットは、財政状況に応じて自主的に保険料率の設定が可能で、自主運営によって独自の人間ドックの実施など、企業の必要に応じた健康管理サービスが提供できます。1企業が単独で設立する場合は、被保険者数が700人以上の企業でメリットがあります。従業員数1000人以上の企業数は2012年現在約2300社で、うち企業健保数は1400余りでした。依然として健保新設のニーズはあります。
2001年度から、少ない年で1つ、多い年には9つの健保が新設されてきました。そのうち約半数の健保の設立を支援してきています。
また、2015年4月から健保組合の日常業務を一括代行するBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)事業をスタートしました。健保新設の際に、専門的な技能を持つ人材を派遣し、健保組合の運営を一括して請け負うことができます。
――健康診断のデータなどをストックしていることは、今後、ビッグデータとして活用して新しいビジネスが展開できるのでは?
当社では、ご本人の同意を得て健康診断のデータや調剤レセプト(調剤報酬明細書)のデータを取得、蓄積しています。すでに18年分のデータがあり、さまざまなデータ分析が可能であると思います。ただ、健康情報は非常にセンシティブな情報であるため、その活用については慎重に行いたいと思っています。
現在、厚労省が取り組んでいるインセンティブポイント制度では、健康習慣を取り入れて1年間病院を使わなかった場合は、健康グッズなどと交換できるポイントを発行しようという考えで、そのために全国のレセプトや健診データを集積したナショナルデータベースを作ろうという流れになっています。当社では一歩先んじて、データの集積ができるシステムを運営してきたということができます。
増大する医療費を抑制するために予防・健康づくりの促進は国の大きな課題です。当社でも、たとえば、ワンコイン血液検査や遺伝子解析などのサービス会社とアライアンスを組み、より精度の高い健康アドバイスができるような工夫を進めたいと考えています。
――事業リスクは「情報セキュリティ」ですか?
今年の6月に日本年金機構から年金情報が流出したことが明らかになり、大変な社会問題になりましたが、同様な事態が当社に起こったら、会社の存続が危うくなります。このため個人情報管理には、外部の情報マネジメント機関の協力を得て万全を期しています。当社のシステムを利用いただいている会社には外資系企業も多く、グローバルなセキュリティ基準で情報管理を求められます。その要望に応えられる体制を常に維持しています。
――今後の展望は?
現在、健保組合の加入対象者である主として大企業に勤める3000万人を対象とした事業を展開し、一部で、協会けんぽに加入する中小企業に勤める約3500万人を対象とした個人加入のビジネスを展開しています。
健保組合向けの新規サービス提供は、これまで通りに利用拡大を推進していきますが、新たな成長領域として個人向けのサービス提供を注力していきたいと考えています。
現在、当社の株式を100株以上保有していただいている株主の方々に「バリューカフェテリア」(年会費6000円)を無料でご利用いただき、ポイントを進呈してお好きなメニューをご利用いただいています。この利用を通じた口コミが広がって、個人での利用が増えています。口コミによるPR効果は自営業者や年金生活者など国民健康保険の加入対象者約3800万人へもアプローチができる手段です。
このような取り組みを強化することで、「バリューカフェテリア」の利用者を、まずは100万人に拡大し、メディアとして広告収入が得られるようにしたいと考えています。
――御社のサービスは退職後に特に頼りになると思います。企業等に勤めている間は、健診の手配や案内など会社が全てをやってくれるので不自由はないのですが、退職するとそれを全部自分自身でやらなければなりません。「バリューカフェテリア」を使うと、会社でいた時と同じような健康管理を受けられるので、退職者に便利なサービスだと思います。
健康に暮らしていきたいというのは、誰もが願うことだと思います。現在、65歳~75歳が約1600万人、75歳以上の方々が約1600万人いらっしゃいます。これから退職される方々は会社で当たり前にPCを使っておられる方々なので、退職後の方々のご利用は増えていくと考えています。
また、国の戦略市場創造プランで進めている「データヘルス計画」で、全ての健保組合で保有するレセプト(診療報酬明細書)や健康診断データをデータ化して蓄積することが求められています。「バリューカフェテリア」は、健診データやレセプトデータの蓄積と分析を行うサービスを実施してきた実績があります。この実績を強みに、より多くの健保組合や企業で「バリューカフェテリア」の採用を働きかけ、分析結果に基づいた疾病予防や重症化予防のための保健指導の普及に努めていきます。
「バリューカフェテリア」は、利用者の健康管理データを分析することで、傾向や特性を把握し、健康指導のプランを立案(Plan)、医師のチェックを受け、保健指導の実施(Do)。そして、その結果を健診結果等のデータで評価(Check)、さらに、ヘルスケアポイントの付与と選べるサービスの提供によって改善行動を促す(Act)という、PDCAを回すことによって、健康の維持や疾病の予防につながるアドバイスを提供します。より多くの方に利用いただき、健康管理のインフラ企業をめざします。(編集担当:徳永浩)
バリューHRは、システムを使った「バリューカフェテリア」サービスによる健康管理サービスと、企業向けの健康保険組合の設立コンサルと設立後の運営支援を2本の柱として着実に成長を遂げている。(写真は、バリューHR代表取締役社長の藤田美智雄氏<左>とSBI証券の藤本誠之氏)
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2015-07-28 17:30