悩ましい中国での「番頭格人材」育成の要諦

前回のコラムに引き続き人材育成について、少しお話をします。
■現地化と人材育成の難しさ
私を一貫して、悩まし続けている事は番頭格の育成である。番頭格とは何だろうか、日本人的感覚では、部下として全幅の信頼を置ける右腕のような存在で、自分が帰任した後を任せることが出来る人材と言ったところだろうか。しかし中国人スタッフと仕事を共にして見ると良くわかる事だか、一般的な傾向として責任を負う事を好まない。
日本人は年を重ねるごとにステップアップとして、一定の責任を負い仕事の裁量権が増えて行くことに面白味を感じたりするものだが、中国人スタッフはそのような考え方は稀である。
とにかく如何に効率よく収入を得るかに特化していて、責任を負う場合それなりの対価を堂々と要求して来る者もいる。特に雇われサラリーマンの立場では明確で、自分は極力責任を負わないように立ち回る傾向が強い。
私は以前、中国人のスタッフに総経理をしてみたくないかと話をしたところ、「割に合わないのでやりたくありません。日本人のような報告、連絡や会議資料の作成などの事務作業などお金にならない無駄な仕事が多く、魅力がない」と言われたことがある。オーナーとしては優秀な中国人を多く見る事はあるが、人に使われる立場では自分の能力を全開にすることはないという事かも知れない。
裏を返せば、それだけ厳しい競争社会であり、簡単には人を信じる事はないという事だと感じている。こういった人材しかいないと、日系企業の管理者としては、中々中国人スタッフに自分の職制を“禅譲”する事が難しくなり、日本人を増員してローテンションして事業の継続を図ってゆく……このようなケースでは、中国を深く理解する日本人スタッフの育成が肝要になってくる。
■中国人スタッフ育成の要諦
とはいえ、中国で現地法人の継続性と持続的な発展を考えた時、中国人スタッフを育成しない事には、将来はなく、日本サイドから見てひとり立ちできない「荷物」的な存在になってしまう。やはり中長期的には中国人の番頭格やトップの育成が不可欠となってくる。
私は経験から、まず中国人スタッフの多くが、「この会社は日本の指示で動いている」と感じないようにすることが大切だと考えている。
まず日本の本社が、主だった決裁権や事業の裁量を現地に全て委ねてしまう事だ。簡単に言うと本社からの指示や出張者を減らす事である。中国の会社はあくまで中国の立場で動き、本社とは対等で協業しているという姿を見せ、中国人の為の会社であることを見せる事が有効である。
こうすると自分たちのポジションがアップした時に、自分たちが好きなように仕事をできるように感じ、意欲やロイヤリティの向上を見て取れるように変化が生じてきた。私はここを原点に、事業の再構築に取り組み、事業を軌道に乗せる事が出来たと感じている。
中国人は非常にプライドが高いが、支配階級に支配される事に非常に慣れていると私は感じている。支配されていると感じているうちは、一切本音が出てこない、逆に自身のプライドが充足された時、初めて主体的に行動するようになってくる。これは中国人の歴史的な背景からくるものかもしれないが、この難しい舵取りを上手く行えてこそ、中国において真に事業の成功と言えるのではないだろうか。(執筆者:武田 康夫 提供:中国ビジネスヘッドライン)
一貫して、私を悩まし続けている事は番頭格の育成である。番頭格とは何だろうか、日本人的感覚は、部下として全幅の信頼を置ける右腕のような存在で、後任として自分が帰任した後を任せることが出来る人材と言ったところだろうか。
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2015-07-30 10:00