中国株、米金利がカギ握る8月相場?外為オンライン佐藤正和氏

 8月は毎年、株価暴落や為替市場の想定外の動きなど、変動幅の大きな相場になることが多い。夏休みで、プレーヤーの多くがバカンスに出かけてしまうために、市場の流動性が大きく減少。そんな時に何か突発的なことが起これば、相場は普段よりも大きく変動する可能性が高い。米国の政策金利引上げが9月にも実施されるという観測が強まる中で、8月はどんな相場になるのか。外為オンライン・シニアアナリストの佐藤正和さんに8月相場の動向を伺った。 ――米国の政策金利引上げ時期が注目されていますが……?  米国の第2四半期(4-6月)のGDP成長率がプラス2.3%と発表され、市場予想には届かなかったものの、ひとまず年内利上げの可能性がさらに強まったと判断する人が多くなったようです。その影響を受けて、ドル円は1ドル=124円58銭まで上昇しましたが、このあたりに大きな「壁」があり、これ以上になるとドル売りの圧力が強まっていくようです。 「黒田ライン」などとも呼ばれていますが、黒田日銀総裁の「これ以上の円安はありそうにない」といった発言が重石になっているようです。円安=ドル高が進む要因として考えられるのは、米国の政策金利引上げ、あるいは日本銀行の追加緩和策ですが、こうしたイベントがない間は現在のようなボックス相場が続きそうです。  8月は「FOMC(米連邦公開市場委員会)」がないために、米国の政策金利引上げがあるとすれば最短で9月になります。今後の米国統計やイエレンFRB議長の発言などを注意深く見ていくことになると思います。 ――日本の景気がやや減速気味との報道がありますが……? 米国に対して、日本のGDPは減速するのではないかという予想が数多く出されています。IMFも先日、「日銀はさらなる追加緩和を実施すべきだ」という異例の声明を出しています。 自動車関連会社などの業績が悪化しているためと思われますが、その背景には中国経済の悪化があります。特に、中国株の下落は大きく、世界中に不安材料を与えています。さらに、安保関連法案の成立で安倍政権の支持率が大きく低下するなど、アベノミクスの行方にもちょっと暗雲が立ち込めつつあります。 かといって、日銀の追加緩和がすぐに実施されるとは考えにくいものがあります。果たしてこれ以上の円安が必要なのか。一時的に円安に振れてもまた戻ってしまい、効果が薄いのではないか。そんな懸念があり、今回は慎重にタイミングを計るものと考えられます。 ――8月は124円50銭以上に振れる可能性はあるのでしょうか?  8月の為替市場は、中国株の動向や原油市場、そして米国の長期金利がどんな水準になるのかによって、揺れ動くことになります。とりわけ、重要になるのがやはり雇用統計です。8月7日に発表される非農業部門の新規雇用者数が市場予想の22万人~23万人に対して、どんな水準で出てくるのか。さらに、失業率が大きく改善するようなことがないのか。注目しておく必要があります。  残るのは、中国の株価や資源価格の大きな変動ですが、場合によってはその影響で1ドル=125円を超えていく場面があるかもしれません。ドル円相場の8月のレンジは、1ドル=122円-126円というところでしょうか。 ちなみに、仮に黒田第3次バズーカ―砲が炸裂して、日銀が追加の量的緩和を実施した場合、やはり1ドル=130円程度にまでは動くかもしれません。追加緩和の可能性は、限りなくゼロに近いものの、頭の片隅には入れておきたいものです。 ――ギリシャは落ち着いたのでしょうか?  とりあえず、9月までの資金繰りはできたようですが、安定して債務を返済して行くためには緊縮政策をとらざるを得ない状態です。チプラス政権は国民投票によって「緊縮財政NO!」という結論を得たにもかかわらず、EU(欧州共同体)などには緊縮財政を進める提案を出して了承されました。 その結果、国内というよりも与党内の足並みが乱れ始めている状態です。もともとチプラス政権は緊縮策をとらないことを公約に掲げて選挙に勝った政党ですから、今後もギリシャ危機にはまだ目が離せない状態と言っていいと思います。  とはいえ、とりあえず8月は欧州を震源地とする問題が起こる可能性は低いと思います。ユーロも落ち着いており、そういう意味ではユーロの8月のレンジは、ユーロドルで1ユーロ=1.07ドル-1.12ドル、ユーロ円で1ユーロ=132円-139円と考えています。 ――ニュージーランドは政策金利を引き下げましたが、豪ドルは?  豪ドル経済は、やはり中国経済の影響を大きく受けており、さらに原油価格や金、そして鉄鉱石など資源価格の下落を受けています。中国経済の景気は、景況感指数のPMIが50を切っており、政府が目標とするGDP7%を達成するのはかなり難しい状況ではないでしょうか。  その背景にあるのが、中国株の暴落で1日に8%も下落する市場をどう立て直すのか。時間がかかるかもしれません。8月4日に実施されるオーストラリア準備銀行(RBA)の「金融政策委員会」で、おそらく政策金利の引き下げが行われるものと考えられます。  現在の年2.0%から0.25%下落して、1.75%になると思われますが、こうしたことを考えると豪ドル円のレンジは、1豪ドル=88円-92円というところでしょうか。 ――8月のトレードで注意すべき点は?  毎年、何かしら波乱が起こる8月ですが、夏休みで投資家不在になることを考えると、やはり細かく投資して、小さなレンジで利益をとっていくのがいいと思います。ただ、8月は大きなイベントもないために、米国の雇用統計発表の7日前後、日本のGDP(4-6月期)第1次速報値が発表される17日前後は、注意したほうがいいかもしれません。  さらに、株価の動きにも要注意。日本国内だけでなく、中国株や米国株の動きにも注目しておきたいものです。(取材・文責:サーチナメディア編集部)。
 8月は毎年、株価暴落や為替市場の想定外の動きなど、変動幅の大きな相場になることが多い。夏休みで、プレーヤーの多くがバカンスに出かけてしまうために、市場の流動性が大きく減少。そんな時に何か突発的なことが起これば、相場は普段よりも大きく変動する可能性が高い。米国の政策金利引上げが9月にも実施されるという観測が強まる中で、8月はどんな相場になるのか。
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2015-08-03 14:45