「過度の悲観」が修正された後=村上尚己

 今週日経平均株価は、ほぼ一か月ぶりに15,000円台まで上昇した。米欧株などが年初来高値水準までリバウンドする中で、日本株が低調な状況が続いていた。こうした中、2月20日レポートで紹介したが、株価停滞が「アベノミクスの失敗」の象徴などの言説がメディアで多くなっていた。そうした極端な見方がメディアに流れたのは、市場センチメントが悲観に傾き過ぎていたシグナルだったのだろう。  ただ、日経平均株価が1月末以来の水準に戻ったといっても、米欧株とは異なる位置づけにある。また、高値圏にある米株式市場より慎重な米債券市場において、米10年金利は2月11日には1月末の水準に戻っていた(グラフ参照)。こうした意味では、日経平均株価が15,000円台に戻ったのは、「過度の悲観」の修正局面がようやく終わりつつあるということなのかもしれない。    今後、どうなるか。日本株が今後も海外要因で左右されるとするとしよう。先のグラフで示したように、米国株が年初来の高値圏まで上昇し、一方で(ドル円への影響が大きくなっている)米長期金利は大底から上昇したが、年初対比で低い水準に止まっている。最近広がっている、両者のかい離をどう考えるかが重要になる。  米国の債券市場は、米景気失速や中国・新興国発の混乱、などのリスクに慎重というのが一つの解釈になる(他の解釈もありえるが、それは別途考えたい)。昨晩(2月25日)発表された、カンファレンスボードによる2月分の消費者信頼感指数が予想を下回った。最近経済指標に対する市場の感応度が低くなっていたが、久しぶりに株式市場でも材料視された。今後発表される2月分の経済指標は下振れるものが多いとみられ、目先は、弱い経済指標に神経質な場面が増えるかもしれない(過去2週間は、経済指標に鈍感すぎた)。  もちろん問題は、米経済減速の「深さ」と「期間」である。鉱工業生産、小売、住宅関連指標など経済活動を示す指標は1月に大きく悪化している。これらの弱さを、すべて天候要因にするのは言い過ぎとしても、大幅な落ち込みは悪天候がもたらした面がかなりある。  一方昨晩発表された家計のセンチメント指数は、事前予想を下回ったが、大きく落ち込んだ他の経済指標ほど悪くない。これは、既に発表されている、ミシガン大学による調査でもほぼ同じである。これらのサーベイを踏まえると、寒波にさほど左右されない消費者心理は安定していると言える(グラフ参照)。  なお、昨晩のカンファレンスボードの調査では、「先行き判断」が悪化した。これが米国市場で嫌気された(大雪の影響がなくなった後、景気が悪くなる?)が、ミシガン大学による調査では「先行き判断」は反対に改善している。どちらの調査が正しいかは何とも言えないが、両サーベイを合わせて評価すれば、消費心理は安定を保っているという判断になる。  これらのサーベイが米景気の実態を反映しているとすれば、これまで落ち込んだ生産・小売などは、少なくとも天候要因で落ち込んだ分の反動増が期待できる。悪天候の影響がなくなる経済指標の発表が多くなるのは3月後半以降だが、そうした展開になれば、先行する株式市場に遅れ米長期金利も上昇し始め、広がった両者のかい離が縮小するシナリオが描ける。(執筆者:村上尚己 マネックス証券チーフ・エコノミスト 編集担当:サーチナ・メディア事業部)
今週日経平均株価は、ほぼ一か月ぶりに15,000円台まで上昇した。米欧株などが年初来高値水準までリバウンドする中で、日本株が低調な状況が続いていた。こうした中、2月20日レポートで紹介したが、株価停滞が「アベノミクスの失敗」の象徴などの言説がメディアで多くなっていた。そうした極端な見方がメディアに流れたのは、市場センチメントが悲観に傾き過ぎていたシグナルだったのだろう。
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2014-02-26 17:30