方向感乏しい3月相場、「見極め」が重要=外為オンライン・佐藤氏

 ウクライナ情勢がにわかに緊張しつつあり、為替相場にも影響を及ぼしつつある。その一方で、米国の悪天候による景気指数の悪化など、金融市場全体を取り巻く外部環境が大きく変化しつつある。日本国内でも、4月から消費税率アップが実施され、駆け込み需要の反動による景気の停滞が懸念される。状況を見極めたい市場関係者が多く、相場全体が方向感に乏しい状況だ。そんな中で3月相場はどうなるのか。外為オンライン・シニアアナリストの佐藤正和氏にその動向を伺った。(写真はサーチナ撮影) ――米国の景気指標がいずれも悪化の兆候を示していますが?  FRBのイエレン新議長も議会証言で指摘しましたが、やはり悪天候の影響が出ており、今後の情勢を注視していく必要があると思います。とは言え、一時的なものである可能性も高く、状況によってはテーパリング(緩和縮小)停止の可能性も示唆されていますが、大きな影響は与えないと思われます。  ポイントになるのは、3月7日に発表される2月の米国雇用統計です。市場予想では、非農業部門の雇用者数が15万人程度の増加となっているものの、これがまた11万人-12万人程度で終わってしまうと、ドル売り円高方向に動くことになります。さかのぼって1月、2月の修正値も含めて、今回の雇用統計も注視する必要があります。  実際に、テーパリングが停止されるかどうかは3月18日-19日に開催される「FOMC(米連邦公開市場委員会)」の場になりますが、停止される、されないにかかわらず、イエレン議長も明言しているように「金融緩和縮小継続」の流れは変わりませんから、大きな変動には至らないと思われます。 ――ウクライナ情勢の悪化で、欧州の株式市場は軒並み下げていますが「ユーロ」への影響は?  ウクライナについては、ロシア軍侵攻によって地政学リスクが高まり、状況によっては瞬間的にはドル高=ユーロ安になる可能性が高いとは思いますが、状況を注視していくしか方法はないと思います。  直近で3月6日にECB総会があるために、そこでどんなコメントが出てくるのかにも注目する必要があるでしょう。ただ、2月のユーロ圏消費者物価指数(CPI)が前年比0.8%上昇となり、1%以下の「危険水域」にとどまってはいるものの、市場予想(0.7%)を超えたことで、金利引下げといった追加緩和の観測は遠のいたのではないでしょうか。  ユーロ圏はデフレに陥っていない、とドラギECB総裁が再度指摘しましたが、すでに政策金利も0.25%まで下がっており、今後はマイナス金利も含めての金融緩和となり、一人勝ちのドイツもこれ以上の緩和に反対しており、金融緩和はそう簡単にはできないと思います。ただ、ウクライナ情勢次第ではどうなるかわからず、注意深く見守っていく必要があります。 ――一方、日本ではいよいよ来月から消費税率が引き上げられます。  先日発表された1月の消費者物価指数は前年同月比で1.3%の伸びとなり、デフレ脱却が順調に進んでいるように見えます。問題は4月以降の消費税率アップの影響をどの程度受けるのか。駆け込み需要の反動を見極める必要があります。  3月10日-11日に実施される日銀の金融政策決定会合も注視するべきでしょう。ただ、追加緩和をするとしても消費税導入後になると思います。駆け込み需要の程度によっては、4月以降の景気が減速してしまう可能性もあり、黒田総裁も指摘しているように日銀の追加緩和策が出る場面があるかもしれません。  そうした点も踏まえて通貨ごとの予想レンジを考えると、「ドル円」では1ドル=100円-104円、「ユーロ円」は1ユーロ=136円-142円、「ユーロドル」は1ユーロ=1.35ドル-1.45ドルといったところでしょうか。比較的、狭いレンジでの方向感のない相場が予想されます。 ――豪ドルは相変わらずあまり動いていないようですが?  豪ドルも、動きづらい局面が続いています。金融システムが懸念されるような状況が続く中国経済をはじめとして、資源価格の長期低迷など、豪ドルを取り囲む経済環境は相変わらず厳しい状況が続いており、豪ドル相場も不安定です。  一時期あった利下げ観測は遠のきつつあるものの、いまだに景気は良くない状況です。ただ、現在の政策金利である2.5%を下回るとなると、今度はオーストラリア経済への資本流入が滞ることになり、マイナス材料になってきます。これ以上の利下げには慎重にならざるを得ないんじゃないでしょうか。そういう意味では、3月の豪ドルの予想レンジは1豪ドル=90円-93円というところです。 ――3月相場のポイントと注意点は?  ポイントとしては、まずは米国経済の見極めです。悪天候による一時的な景気後退なのか、それとも別の要因があるのかをしっかり判断しましょう。第2は、やはり株価の動向に注視すること。株価の行方が為替市場にも影響をもたらします。第3は、消費税率アップ後の景気動向を見ることです。市場予想にも要注目です。  そして、もうひとつがウクライナの動向です。戦争状態になれば、当然安全資産として米ドルが買われますが、円高にも振れやすい。そういう意味では、3月は非常に難しい局面になるかもしれません。(取材・文責:サーチナ・メディア編集部)
ウクライナ情勢がにわかに緊張しつつあり、為替相場にも影響を及ぼしつつある。その一方で、米国の悪天候による景気指数の悪化など、金融市場全体を取り巻く外部環境が大きく変化しつつある。そんな中で3月相場はどうなるのか。外為オンライン・シニアアナリストの佐藤正和氏にその動向を伺った。(写真はサーチナ撮影)
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2014-03-03 11:00