中国の戸籍制度改革は住居権の承認で戸籍廃止ではない

中国の戸籍制度が変わろうとしている。今何が問題になっているのか? 改めて問題点を整理し、方向性について書いてみた。
■戸籍制度基本的な考え方
(1) 法律上戸籍により、住むところが決められている。建前上住居の移動の自由はない。
(2) 但し、大学進学や、企業の転勤などで住居を移動させることは可能。個別に認可されている場合もあるが、原則は不可。
(3) 医療保険は省単位で行われ、原則戸籍のあるところでサービスを受けられる。教育も同様で、義務教育は戸籍のある場所で受けることが可能。
■戸籍制度改革の問題点
(1) 都市と農村の経済格差が原因となり、収入を求めた農民が大都市へ出稼ぎ。住居不足も発生。
(2) 戸籍が変わるわけではないので、医療サービスが受けにくくなる。出稼ぎ者の子供が出稼ぎ先で教育を受けられなくなる。
(3) 大都市での治安が悪化する可能性がある。
(4) 農村地帯の過疎化がさらに進む。格差の一層の深刻化や農業の荒廃が発生。
人民日報は最近になり、下記の様な改革案が掲載した。
(1) 上海・北京は人口の流入制限を実施予定(適正人口を模索する)。
(2) 戸籍制度改革=居住権の改革をする。福建省・広東省・江西省、陝西省、四川省、海南省、安徽省
どうやら、現段階では、戸籍制度を廃止する動きはなさそうだ。その戸籍制度の改革=住居権の整備にしても、多くの問題があるようである。
(1) 役人が抵抗する=失業者の数字が増加
現在の失業者の中には、農民戸籍の人は含まれない。つまり、農民戸籍を都市住民にしてしまうと、都市部において失業者が増加する。失業の実態が見えなくなり、データの信用性が下がる可能性がある。
(2) 都市に行っても職があるわけではない
「中所得国の罠(わな)」に陥っている中国で、必要なのは付加価値の産業やサービス業だ。単純労働で通用するほど大都市の産業(雇用の実情)は甘くない。
戸籍制度を廃止するにしても、日本のように医療制度・年金制度が全国に通用するようにしないと意味がない。また教育でも引っ越しした場所で平等で受けられるようにならないといけない。地方に産業が育たないと、根本的な解決にはならない。
戸籍改革で後戻りは出来ない。改革のスピードは今後注目していきたい。(執筆者:廣田(李) 廣達 提供:中国ビジネスヘッドライン)
中国の戸籍制度が変わろうとしている。今何が問題になっているのか? 改めて問題点の整理し、方向性について書いてみた。
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2014-03-03 12:00