NISAで改めて脚光を浴びる「株主優待」、上場企業の約3割が実施

NISA(少額投資非課税制度)を使った株式への投資で、「株主優待」が銘柄選定の動機のひとつになっているというのは、NISA口座を取り扱う証券会社から指摘されるところだが、上場企業の側にも株主優待を実施することによって、個人投資家に自社株への注目を促したいという狙いがあるようだ。野村インベスター・リレーションズが2014年2月末現在で調査した結果、株主優待を実施している企業数は1113社で過去最多。全上場企業3773社に占める割合は29.5%になった。  「株主優待」とは、企業が一定の株式を持つ株主に対して、物品やサービスを提供すること。毎年「知って得する株主優待」を発行している野村インベスターズ・リレーションズによると、「3000円を目安に株主に優待特典を提供している企業が多い。また、自社商品の割引なども含め、株主優待を金額に換算して株主優待利回りとして計算した場合、高いものでは20%程度になるものもあるが、3%を超えれば高い方になる」という。  また、株主優待には税金がかからないため、2014年1月から配当金への申告分離課税の税率が10%から20%に引き上げられたことを考えると、株主優待の価値が高まったという捉え方もできる。  野村インベスターズ・リレーションズの集計によると、ここ1-2年の傾向として、大手・有名企業で株主優待を導入する動きが続いているという。たとえば、2012年11月に広島ガス <9535> がガス会社として初めて株主優待を設けたところ、13年10月には北海道瓦斯 <9534> も優待を実施。また、2013年になると、オムロン <6645> 、LIXILグループ <5938> 、KDDI <9433> なども相次いで株主優待の導入を発表した。  また、REIT(上場不動産投信)が株主優待を導入する事例も目立ち、2012年5月にジャパン・ホテル・リート投資法人 <8985> が宿泊割引券の提供を始めたことに続き、2013年には星野リゾート・リート投資法人 <3287> 、大和ハウス・レジデンシャル投資法人 <8984> でも宿泊代金割引券や宿泊利用券の提供を始めた。  さらに、1年以上、3年以上など長期の株式保有者に優遇追加する株主優待の実施や、株主の希望に応じて寄付などを実施できる社会貢献型の株主優待を実施する企業も増えている。長期保有優遇は、2014年2月末現在で103社、社会貢献型は81社が実施するようになった。  一方で、株主への公平な利益配分などを理由に、株主優待を廃止する動きも一方にはある。2012年度には29社(うち上場廃止18社)が株主優待を廃止。2013年度も2月末までに23社(同16社)が優待を廃止している。株主優待という制度は、米国で6社、英国で33社しか実施事例がないなど、日本に独自に発展している制度。「知って得する株主優待」など、株主優待についての情報誌も複数発行され、株主優待専用情報サイトもある。  3月決算が多いという事情もあって、3月15日、20日、末日などの権利確定日には株主優待の権利を狙って株主優待に手厚い企業の株価が値上がりすることも。株主優待が株価に与える影響としては、「企業の収益性などを株価が十分に織り込んでいないアンダーバリューの銘柄を見直す動きが出るなど、株価対策としては一定の評価ができる」という見方も定着している。  ちなみに、「知って得する株主優待」が実施している株主優待人気ランキングのトップは、日本マクドナルドホールディングス <2702> が実施している食事優待券(割当基準日は12月・6月末日)。100株以上の保有者に「バーガー類・お飲み物・サイドメニュー」3種類の商品の無料引換券が1枚となったシート6枚をプレゼントしている。この他、ダイドードリンコ <2590> が100株以上の株主(同1月・7月20日)に3000円相当の自社商品を提供、日清食品ホールディングス <2897> が100株以上の保有株主(同3月・9月末日)に1500円相当の自社製品の詰め合わせセットをプレゼントしていることも人気がある。(編集担当:徳永浩)
野村インベスター・リレーションズが2014年2月末現在で調査した結果、株主優待を実施している企業数は1113社で過去最多。全上場企業3773社に占める割合は29.5%になった。
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2014-03-07 16:15