中国の不動産事情―指標が示す大都市の住宅バブル

日本経営管理教育協会が見る中国 第297回--下崎寛(日本経営管理教育協会会員) ● 中国の不動産バブル状態   平成25年12月に国際通貨基金(IMF)が中国不動産市場に関するレポートが発表された。そのレポートでは、住宅価格に対する可処分所得の倍率は、北京が22倍、深センでは18倍と一部の都市では不動産のバブル状態となっているとのことであった。   私は、不動産鑑定士でもあり、昭和50年代から日本の地価公示を担当し、日本のバブルの始まりから終わりまでを見てきた。また、アジアの不動産市場を視察し海外不動産の調査をしてきた。 ● 不動産の価格と年収   不動産の価格というものは、特に住宅価格は、購入者の年収か可処分所得の倍率でその価格水準が決まることとなる。日本においては、現在では年収の5倍程度が限度といわれる。   日本のバブルのときは10倍以上していたが、土地神話があり、土地をはじめ不動産は右肩上がりで上昇するものであり、だれもが高いと思っていたが、土地が下がるとは予想しなかった。そこにバブルがはじけ、土地価格の暴落がはじまり不良債権が多大となり現在まで平成不況となったわけである。 ● 中国は定期借地権   では、中国の不動産はどうであろうか。   まず、中国の不動産の特徴は、土地の所有権はなく、日本でいう期間70年の定期借地権付居住用マンションが中心となっており、日本と違い商業ビル投資のウエイトは低い。また、土地の所有権としての物権的な担保価値はなく、定期借地権という打ち出の小づち的な更新できるかどうかわからない債権を前提に構成されている。 ● 中国の住宅開発は行政中心   次に、マンション開発は、中国の地方政府が主体となり、地方政府と結びつく不動産業者が開発し提供していることにある。地方政府の事業実績としての公共事業である。そして、その事業においては、謝礼の慣行があり、政府関係者に資金が流れ、その資金が投機対象としてマンション投資に向かうという悪循環ができている。   日本のバブルでは、右肩上がりの担保価値を前提に融資していた金融機関がその役割を担っていたが、中国では地方政府がその役割をしている。聞くところによると、中国共産党の地方幹部は短期間に交代する。地方幹部は出世のために短期間に成長率あげて実績を作りたいので不動産投資を増やそうとする。   そこで、手っ取り早いのは居住用のマンション建設である。地方政府は原価がゼロに近い土地の開発権利を政府関連の不動産業者に安価に販売し、不動産業者は住宅を中心に開発、建設して大きな利益を得た。中国のマンション投資は中国の高成長の支柱の一つとなっていた。その不動産開発投資は1998年以降に個人住宅の私有化が認められたときから中国の経済成長のベースを常に上回ってきている。 ● 日中マンション価格   普通、日本のマンション価格は、建築価格+素地価格+開発利益=居住者の年収の5倍程度が適正価格とされる。   中国では、中国のマンション価格は、建築価格+開発利益+投機価値となるようである。その投機価値はバブルといえる。したがって、購入者である中間層の平均年収の5倍程度が中国の居住用マンション価格が適正であろう。その価格以上の住宅価格となっている北京、上海、深セン等の都市の住宅価格は危険である。   写真は上海のマンション。(執筆者:下崎寛・日本経営管理教育協会会員 編集担当:水野陽子)                 
平成25年12月に国際通貨基金(IMF)が中国不動産市場に関するレポートが発表された。そのレポートでは、住宅価格に対する可処分所得の倍率は、北京が22倍、深センでは18倍と一部の都市では不動産のバブル状態となっているとのことであった。私は、不動産鑑定士でもあり、昭和50年代から日本の地価公示を担当し、日本のバブルの始まりから終わりまでを見てきた。また、アジアの不動産市場を視察し海外不動産の調査をしてきた。
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2014-03-12 10:15