就活解禁が大学3年の3月に、新時代の就活支援=ワークス・ジャパン

 大学生の「就活」が大きく変わろうとしている。2016年卒業の大学生から、就職活動の解禁が3年生の3月に後倒しされ、活動期間が一段と短縮される見通しだ。新卒採用支援サービスを展開するワークス・ジャパン代表取締役社長、清水信一郎氏に「就活」をテーマに現状と今後の展望について聞いた。(写真撮影:サーチナ) ――大学生の就職活動の開始時期が後倒しされています。大学3年生の10月解禁だったスタート時期が、12月解禁になり、2016年卒業からは3月になる見通しです。就職活動の期間が短くなることで、「就活」に起こる変化は?  就職活動開始の後倒しは、大学側からの強い要望に応える形で、企業サイドが理解を示し、そして、政府も後押しするということで、「3月解禁」という流れができました。大学側では、12月解禁のままでは就活のピーク時期が12月-4月になってしまい、大学や後期試験にも支障が出ている現状を改善したいとしています。  また、12月解禁では内定が4月には出ますから、実際の就職まで1年間を無為に過ごすことにもなりかねません。若い世代にとって1年間という期間は長いので、これを短縮することによって、学業、あるいは、社会に出ても役立つような活動に有意義に使ってもらおうということになっています。  ただし、就活スタートが3月になると、就活のピークが大学4年の夏ごろに来ることになります。理系学生にとっては卒業研究の時間を確保しにくくなるなどの問題が出てきています。企業側にとっても、例えば、大手企業と中堅・中小企業の採用活動時期が重なってしまい、中堅・中小企業に十分なアピールの場が得られない、民間企業と公務員試験の時期が重なってしまいかねないなどという問題も指摘されています。 ――就活の期間が短くなることで、学生や企業の採用担当者は、どのように備えればよいのでしょう?  就活する学生の一般的な姿は、エントリーシートを200社に出し、50社の説明会に参加して採用面接の機会を1つでも多く確保するということでした。業種や職種を問わず有名大手企業に次々とエントリーシートを出し、参加可能な説明会にはことごとく参加するなど、就活そのものが目的化している学生も少なくありません。面接の場で、銀行、総合商社、流通などを相次いで受験している学生に、採用担当者が「あなたは(社会人として)いったい何がやりたいの?」と真顔で質問したくなるという話を多く耳にします。  それほど、学生は「自分に合った会社」を知りません。BtoBのエリアになるとグローバルに展開している大企業でも社名さえ知らないということがあります。まして、中堅・中小企業については知りません。  これまでは、就活期間を通じて、就活イベント、説明会などに参加するうちに、業界の姿をおぼろげにでも理解し、途中で進路変更もできるなどリカバリーの機会がありました。ところが、就活期間が短縮されると、企業や業界への理解を深める機会、あるいは進路変更の余裕もなく、就職した企業と学生の志向にミスマッチが起きやすくなると思います。  一方、企業にとっては就活期間の短縮によって自社をアピールする機会すら得られなくなる可能性があります。学生の安定志向が高まり就職希望が大手有名企業に偏る傾向が強まっていますが、これが一段と顕著になりそうです。したがって、採用活動以前の情報発信の重要性が高まります。  16卒採用では、インターンシップの位置づけをどうするかが非常に話題となっています。すでに上場企業の約半数ではインターンシップを導入し、導入企業数は増加する傾向にありますが、今後は一段と就活期間が短縮されることで、インターンシップの果たす役割は大きくなると思います。 ――就活する学生と企業のミスマッチをなくす工夫は?  当社では首都圏の大学で、クラブ・サークル活動やゼミなどで部長やマネージャーを務める幹部学生を主たる対象としたキャリア支援サービス「Campusキャリア」を運営しています。NPOキャリア文化研究所と連携して実施している「育成塾」は、2013年は3回開講しましたが、約250名の学生が集まり、育成塾のカリキュラムに組み込んだ企業講座にも熱心に参加しています。  育成塾は3年生の6月に開講し、インターンシップによる就労体験を通して、より具体的に企業を理解するように促しています。実際に、育成塾に参加した学生が、企業のインターンシップに応募するケースは多くみられます。2014年ではこの育成塾を更にステップアップし、学生数も増やし、様々な「学び」を通して学生のキャリア支援の場を提供したいと考えています。  さらに、「Campusキャリア」では、様々な業界の話を聞き将来展望をイメージする「学びのセミナー」や、30人程度の少人数で異なる業種3社から話を聞く「キャリア支援セミナー」など、就職活動の準備期間中だからこそできる情報提供を行います。そして、就職活動の解禁後は、合同会社説明会である「就活応援フェスタ」を皮切りに、異業種を集めた小規模な「就活応援セレクションセミナー」につなげています。  実際に就職活動をする学生の話を聞き、企業の採用担当者と面談していて強く感じるのは、学生に届いている企業情報が断片的であり、企業カルチャーまで伝えられていないということです。その結果、学生は入社した後で「こんなはずではなかった」と後悔し、早期離職につながっていくようです。  インターンシップは、一度に受け入れられる人数に限りがあり、それが直接の採用につながらないにもかかわらず手間がかかるものですが、学生の間ではLINEやFacebookなどを通じて情報交換していますので、インターンシップでの好悪の印象は、想像以上に広く学生の間で共有されるようです。人気のインターンシップには受け入れ枠の何倍もの応募があると聞いていますが、学生はインターンシップの機会を通して企業選択の自分軸を探そうとしています。企業にとって先々のことを考えれば、参加者だけではなく、他の応募者にも企業研究に役立つ情報提供をすることのメリットは大きいと思います。 ――就職活動が新しい時代を迎える中、学生や企業の採用担当者へのメッセージは?  学生の方々には、企業を1つのイメージで見るのではなく、様々な観点から情報を集めて理解するようにしていただきたいと思います。OBとの対話だけではなく、企業のHPや各種資料など、調べてみるとさまざまな情報が出ています。また、1社だけに固執するのではなく、その企業の仕入先、販売委託先など企業と関連する企業まで調べてみると、意外と希望する仕事に巡り合えることもあります。  最近は、入社3年目である程度のスキルを身につけて転職することがトレンドのようになっていますが、最初の職場は、それからのキャリアを重ねる中で、大きな意味を持ちます。できれば、早期に退職することを考えなくても済むよう、情報のアンテナを高くして企業選びに臨んでいただきたいと思います。  企業の方々には、学生は、想像以上に企業内容についての知識がないという前提で採用活動を進める必要があると申し上げたい。企業人として当たり前に思えることが、学生の価値観にはなく、意図した情報が正しく伝わらないことがあります。それだけに、様々な機会を通じて情報を発信し続け、学生とのコミュニケーションの場を増やす努力をしていただきたいと思います。(編集担当:徳永浩)
大学生の「就活」が大きく変わろうとしている。2016年卒業の大学生から、就職活動の解禁が3年生の3月に後倒しされ、活動期間が一段と短縮される見通しだ。新卒採用支援サービスを展開するワークス・ジャパン代表取締役社長、清水信一郎氏に「就活」をテーマに現状と今後の展望について聞いた。(写真撮影:サーチナ)
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2014-03-13 11:45