Q&Aで読み解く中国の出入国管理法・外国人出入国管理条例
中国では出入国管理法が2013年7月1日から実施され、外国人出入国管理条例が9月1日から実施された。これらによる施行前と後の変化を改めて、現地で活躍する華誠法律事務所の山本寛氏に尋ねてみた。
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【Q1】
外国人出入国管理条例が実施されてビザはどのように整備されましたか。
【A1】
普通ビザの種類について、外国人出入国管理条例(以下「条例」といいます)実施前は8種類を設けていましたが、条例は新たにM(商務貿易)、Q(親族訪問)、S(個人目的)、R(人材)の4種類を設けて12種類にしました。
出張者、駐在員と関係がある部分を下表にまとめました。
<条例実施前>
F:
訪問、視察、講義、ビジネス、科学技術文化交流、6カ月を超えない短期研修、実習
L:
旅行、親族訪問、その他私用
X:
6カ月以上の留学、研修、実習
Z:
就任、就業、随行家族
<条例実施後>
F:
交流、訪問、視察
M:
商業、貿易活動
X2:
短期学習
L:
旅行
Q2:
短期の中国人、永住外国人の親族訪問
S2:
短期の居留外国人の親族訪問、私的事務
X1:
長期学習
S1:
長期の居留外国人の親族訪問、、私的事務
Z:就労
条例実施前のFビザ、Lビザの範囲が細かく整備されたことがわかると思います。
数字が付されたビザ(例えば「X1」、「X2」など)がありますが、これは滞在期間による区別です。出入国管理法(以下「新法」といいます)は、短期滞在を「停留」、長期滞在を「居留」と明確な区別を設けました。
短期滞在ビザ(上表<条例実施後>のF-S2)では最長180日間まで滞在することができます。長期滞在ビザ(同X1-Z)は入国後30日以内に出入国管理機構で居留許可の手続きをとることにより最短180日(なお就労ビザは90日)、最長5年間滞在することができます。
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【Q2】
中国への出張者はどのようなビザが必要になりますか。条例実施前に出張目的で取得したFビザで引き続き出張をすることはできますか。
【A2】
出張期間が15日以内(入国日を含みます)の場合、従来どおりノービザで出張することができます。
出張期間が15日を超える場合、M(商務貿易)ビザを取得する必要があります。Mビザを取得するためには中国側(例えば現地法人、取引先企業)からの招聘状が必要であり、原則として指定旅行社を通じて申請しなければなりません。
なお、条例実施前までに出張目的でFビザを取得した場合、有効期間中はそのFビザで引き続き出張をすることができます。
出張期間が暦年(1月1日-12月31日)で累計3カ月以上になる場合、「労働部『外国人在中国就業管理規定』実施徹底に関する問題通知」により、中国で就業しているものとみなされるおそれがありますので、所轄の人力資源及び社会保障局にご確認されることをおすすめします。
なお、ビザとは関係ありませんが、中国の滞在日数が暦年で183日以上となった場合、日中租税条約に基づき、中国税務局がその個人に対して税金を徴収することをできるようになることにもご注意ください。
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【Q3】
駐在員の居留許可申請(更新)手続きで変更されたことはありますか。
【A3】
新法は居留許可の申請(更新)手続きについて、出入国管理機構は15営業日以内に審査を行い決定を出すと規定しました。ただし、この規定は最長の期間を定めたものであり、出入国管理機構によっては審査期間を早め、申請者の便宜を図っています。
上海では居留許可の審査期間は新法実施(2013年7月1日)直後は15営業日を要していましたが、2013年9月2日以降7営業日に短縮されています。
居留許可の申請(更新)時には、出入国管理機構の押印がある申請者の写真付き受領証が交付されるようになりました。居留許可の申請(更新)手続期間中は出入国管理機構にパスポートを提出していますが、この受領証をパスポートの代わりとしてホテルに宿泊したり中国国内便、高速列車等に乗ったりすることができます。
また、新法は居留許可の更新手続きは、居留許可の有効期間が満了する30日前までに申請しなければならないと規定しました。
居留許可の更新手続きには就業証が必要となります。しかし、就業証の更新手続きは有効期間(一般的には居留許可の有効期間と同じです。)が満了する30日前からしか申請できないことから制度上の矛盾が生じています。
そこで、上海では、居留許可の更新手続きは、上記新法の規定に関わらず居留許可の有効期間が満了する7日前まで受理する運用がされています。
居留許可の申請(更新)手続きにつきましては地方によって運用が異なりますので所轄の出入国管理機構にご確認されることをおすすめします。
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【Q4】
駐在員を訪問する家族にはどのようなビザが必要になりますか。条例実施後も条例実施前に親族訪問の目的で取得したLビザ、Zビザで駐在員を訪問することができますか。
【A4】
訪問期間が15日以内(入国日を含みます)の場合、従来どおりノービザで訪問することができます。
訪問期間が15日を超える場合、訪問期間に応じてS1ビザ(180日以上)またはS2ビザ(180日以内)を取得する必要があります。
上海では親族訪問の目的で取得したS1ビザに基づき居留許可を申請する場合、在上海日本総領事館が発行する婚姻証明または出生証明の提出が求められています。婚姻証明または出生証明の発行には日本で発行された戸籍謄(抄)本が必要です。
なお、条例実施前までに親族訪問の目的でLビザまたはZビザを取得した場合、有効期間中はそのビザで引き続き親族訪問することができます。
上海では親族訪問の目的で取得したZビザの更新を行っていません。有効期間満了後引き続き親族訪問をする場合、中国国外の中国大使館・領事館でS1ビザまたはS2ビザを取得する必要があります。
※ 本稿で紹介した出入国管理法は中国語では「中華人民共和国出境入境管理法」と表記され、中国大陸と香港・マカオ・台湾との往来もその対象としています。
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【回答者プロフィール】
●山本寛
関西学院大学法科大学院司法研究科法務博士、華東政法大学国際経済法専攻修士。2002年司法書士試験合格、06年司法試験合格。日本の司法書士事務所、法律事務所での勤務を経て、12年に華誠法律事務所に入所。中国市場に進出する日本企業に対して設立、契約、労務、知的財産、解散・清算等の分野においてリーガルサービスを提供する。
(編集担当:如月隼人)
中国では出入国管理法が2013年7月1日から実施され、外国人出入国管理条例が9月1日から実施された。これらによる施行前と後の変化を改めて、現地で活躍する華誠法律事務所の山本寛氏に尋ねてみた。
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2014-03-13 16:30