GPIF運用方針見直しを先取りして新株価指数構成銘柄の新興市場株に再出番を期待=浅妻昭治

<マーケットセンサー>   安倍晋三首相が、「Buy my Abenomics(バイ マイ アベノミクス)」とニューヨーク証券取引所でスピーチしたのは、昨年9月25日であった。このときの日経平均株価は、1万4620.53円であった。その後、日経平均株価は、一国の最高指導者の日本株売り込みもあって、昨年12月30日に1万6320.22円の昨年来高値まで買い進まれた。   いまでは東京市場では稀少例となっているトップセールスに「敬意を表する」展開で、よく言えば「政策相場」、悪く言えば「官制談合相場」がワールドワイドに展開された結果ともなった。この種の腕力相場は、かつてはお馴染みの相場シーンであった。1991年に「飛ばし」、「損失補てん」の証券不祥事が表沙汰になる以前の旧大蔵省証券局と兜町が蜜月関係にあった当時までは、相場トレンドを逆転させる「神風」材料として表面化した。相場が過熱すると、兜町には大手証券4社のトップが、証券局長に呼び出されて「もう少し行儀をよくしたらどうか」など苦言を呈されるなどの噂が駆け巡り、実際に4社トップが兜町に戻る以前に、株価は、「敬意を表して」下落する敏感特性を発揮した。暴落時も同様だ。兜町に証券局の言動、あるいは通達なるものが伝わってきて、株価は「あら不思議」底入れ・反発したものであった。   懐かしくも微笑ましくも安倍首相のトップセールスに往時の光景がまざまざと蘇ったが、回顧談はこのくらいにして現実に戻ろう。日経平均株価は、前週末14日に1万4327.66円と下げ、安倍首相のスピーチ当時の水準まで往って来いとなってしまった。直接の売り材料は、ウクライナ情勢の緊迫化と中国景気の失速懸念にあるが、それ以前に頼みの外国人投資家は、日本株に対して買い越しから売り越し姿勢に転換していた。この投資行動の転換は、考えてみれば当然だろう。   黒田東彦日銀総裁が、「戦力の逐次投入はしない」と大見得を切って打ち出した「異次元の金融緩和」の「一本足打法」にも限界があるからである。これに続くはずのアベノミクスの「第三の矢」の「成長戦略」の発動が遅々として進まないのである。このためシビレを切らしたヘッジファンドの周辺からは「ByeBye Abenomics(バイバイ アベノミクス)」との縁切り発言がしきりであるとの憶測も強まっている。   安倍首相としては、これに対してこの春闘で大手企業で相次ぎ打ち出したベースアップを皮切りに、今年6月には法人税引き下げなどを中心とする成長戦略を策定して経済の「好循環」を現実にする腹積りのようである。しかしである。もっと手っ取り早い「好循環」の手立てがあるはずだ。かつての旧大蔵省と証券界の蜜月関係と同様のマーケットに直接、手を突っ込む方法である。この株高効果は、一昨年11月からの「アベノミクス」の初動段階で、株高による資産効果で高額消費が顕著に伸び景況感が劇的に転換する形で経験済みであり、その再現を期するものである。   安倍政権は、この市場対策の第1弾として証券譲渡税を本則の20%に引き上げた見返りに今年1月から少額投資非課税制度(NISA)を導入した。しかしこのNISAに呼応して、口座を開設して株買いに踏み切ったニューマネーは、1月以降の調整相場でほぼ全員が引かされて「出ると負け」になってしまった。そこで残る期待は、日銀の追加緩和策発動に伴うETF(上場型投信)の買い入れ枠拡大、さらに年金積立金管理運用独立法人(GPIF)の運用方針の運用方針の見直しなどの株価対策の発動である。   なかでもGPIFは、約130兆円の資金を保有する世界最最大の年金基金として、これまでの国債中心の運用から、リスク資産への資産配分を高めることが現在、関連審議会の専門委員会で検討されており、GPIFが国内株式への組み入れ比率を1%高めるだけで、株式市場には1兆円超の買い余力が発生すると推計されているからだ。   毎度、前置きが長くなって恐縮だが、ここからが当コラムの本題である。GPIFの運用方針見直しが実現するとして、このベンチマーク(運用上の評価指標)として浮上するのが、今年1月から東証と日本経済新聞とが開発・算出を開始した新株価指数「JPX日経400」である。すでに新指数に連動するETF(上場型投信)が上場され、公募型投信も設定されているが、今後、新指数のデリバティブ市場の創設も、見込まれることから、株価との連動性はいっそう高まる可能性が強い。   そこでこの新指数の構成銘柄に採用された400銘柄のなかから、より株価敏感性を発揮しそうな銘柄をスクリーニングし、先取りすることを今回の当コラムの銘柄物色テーマとしてみたい。構成銘柄のなかで、全般相場の影響を受けやすい東証株価指数(TOPIX)の圏外に位置するわずかに12銘柄にとどまった新興市場株にアプローチしたいのである。(執筆者:浅妻昭治 株式評論家・日本インタビュ新聞 編集長)
安倍晋三首相が、「Buy my Abenomics(バイ マイ アベノミクス)」とニューヨーク証券取引所でスピーチしたのは、昨年9月25日であった。
浅妻昭治
2014-03-17 11:15