中国経済のリスクは金利上昇と米トランプ政権の保護貿易主義=大和総研

 大和総研経済調査部主席研究員の齋藤尚登氏は1月20日、「中国:リスク要因は金利上昇と米保護貿易主義」と題したレポート(全11ページ)を発表した。2017年のGDP成長率を6.4%程度と予測するものの、「不動産バブルの抑制等を目的に上昇傾向を強める金利動向、そして、中国を悪の権化とみなすかのようなトランプ政権の保護貿易主義がリスクになり得る」とした。レポートの要旨は以下のとおり。   ◆国家統計局によると、2016年の実質GDP成長率は前年比6.7%と、政府経済成長率目標である同6.5%~同7%を達成した。2015年の同6.9%からは若干の低下にとどまり、景気は底堅く推移した。   ◆2017年秋に第19回党大会を控えるなか、経済の「安定」を最優先しつつ「サプライサイドの構造改革」をある程度進めるのであれば、2017年の政府経済成長率目標は前年比6.5%前後に設定される可能性が高いとみている。大和総研は、インフラ投資の堅調と外需の回復を下支え役に、2017年の実質GDP成長率は同6.4%程度となると予想している。   ◆リスク要因のひとつは金利上昇である。中国の市場金利は2016年11月以降、上昇傾向を強めており、その背景には「トランプ効果」と「不動産バブルの抑制」がある。不動産価格のソフトランディングは政策として重要であるが、その一方で、景気の下振れ圧力は依然として強く、金融引き締めによる景気への悪影響には注意が必要であろう。   ◆より怖いのは、米国の保護貿易主義である。米国の輸出を善とし、輸入を悪と見なすトランプ政権にとって、2016年に2,508億米ドル(中国側通関統計)もの対米貿易黒字を計上した中国は、悪の権化と映っているのかもしれない。「中国からの全ての輸入品に45%の関税をかける」ことは現実的ではないが、大統領の権限において「150日を超えない範囲内で、輸入割り当てを実施し、あるいは15%以内の輸入付加税を課すこと」は可能である。仮に米国が何らかの行動を起こせば、中国も報復するであろうし、報復合戦となる可能性は否定できない。   ◆2017年は先進国景気の緩やかな回復と2016年の元安の効果発現が、中国の輸出改善を後押しすると期待しているが、米国が強硬な保護貿易主義に走れば、中国の輸出改善期待を打ち砕くばかりか、米中の貿易関係の著しい悪化を招きかねない。こうしたリスクが顕在化するなどして景気下振れ懸念が高まれば、中国政府は、財政出動の強化などで景気を支えざるを得なくなるだろう。(情報提供:大和総研)(イメージ写真提供:123RF)
大和総研経済調査部主席研究員の齋藤尚登氏は1月20日、「中国:リスク要因は金利上昇と米保護貿易主義」と題したレポート(全11ページ)を発表した。(イメージ写真提供:123RF)
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2017-01-23 17:30