中国が進める超高圧送電網、大気汚染解決の切り札になるか

中国で大気汚染の問題が深刻化すると同時に、超高圧(UHV)送電整備に向けた議論が活発化している。全国政協委員で中国国家電網公司の劉振亜董事長(代表取締役)は2014年の両会(全人代と政治協商会議)で、国家電網公司は2020年までに超高圧送電網を整備する計画であることを発表した。毎日経済新聞が報じた。
劉振亜董事長は両会の全体会議で、仮に超高圧送電への切り替えが完了した場合、中国中東部におけるPM2.5の量は2015年には10年の量に比べて12%減少し、2020年には28%減少するとの見通しを示した。
全国政協委員で河北省政協主席の付志方氏は「北西部、中東部に超高圧送電網を整備すれば、北京市や天津市、河北省などの大気汚染は大幅に改善されるだろう」と期待を示したほか、国網重慶市電力公司の孟慶強総経理(社長)は「電力不足に悩まされる重慶市にとって火力発電所の建設は現実的ではなく、超高圧送電網の整備こそ唯一の解決法」と主張している。
中国東部は電力需要がもっとも大きい地域でありながら、スモッグ改善を目的に石炭による火力発電が制限されている。アモイ大学エネルギー研究センターの林伯強主任は「原子力発電所は建設に時間がかかるうえ、新エネルギーはまとまった電力規模の確保が難しい。そうした意味で超高圧送電網はスモッグ改善に向けて即効性のある解決法だ」と述べた。
一方、常に議論の対象となってきた中国の超高圧送電については慎重な意見も存在する。ある関係者は、「整備に巨額のコストが必要となる超高圧送電網は、送電効率は決して高くない」と指摘、超高圧送電網のために多くの火力発電所が稼働することになる北西部での環境問題も考慮すべきだと指摘した。
かつては日本や旧ソ連が超高圧送電を行っていた超高圧送電は現在、使用している国はほとんどないのが現状だ。さらに中国北西部に火力発電所が建設されれば、排出される汚染物質は偏西風によって中国の国土全体を覆う可能性もあるという。(編集担当:村山健二)(イメージ写真提供:123RF)
中国で大気汚染の問題が深刻化すると同時に、超高圧(UHV)送電整備に向けた議論が活発化している。(イメージ写真提供:123RF)
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2014-03-18 11:45