どんぐりポイント―企業・消費者・団体の輪で環境問題に貢献

CFPオフセットポイント推進委員会は17日、地球温暖化防止への貢献を目的とする「どんぐりポイント制度2013年度報告会」を開催した。昨年(2013年)11月にスタートした制度で課題もあるが、企業、消費者、「コミュニティ」など、社会の幅広い「輪」により環境問題に取り組む同制度が着実に広がっているという。(写真はCFPオフセットポイント推進委員長の西哲生氏。サーチナ編集部撮影)
同制度では協賛事業者がまず、どんぐりポイント取得を希望する商品(含、サービス)について、生産、流通、消費と、商品がその「一生涯」にわたって消費する二酸化炭素量(CFP=カーボンフットプリント)の承認を受ける。そして、認定されたCFPに相当する、他者が削減した二酸化炭素排出量(クレジット)を購入することで、相殺したとみなされ(オフセット)、同商品には「どんぐりマーク」が与えられる。
さらに、同商品につけるポイント原資を、CFPオフセットポイント推進委員会に拠出すると、「どんぐりポイント」が付与される。
どんぐりポイントをためる主体となるのが、環境問題に取り組む、あるいは協力を志す商店街、NPOなど環境団体、学校のPTA、ロータリークラブなどで「どんぐりポイントコミュニティ」と呼ばれる。
「どんぐりポイントコミュニティ」はポイント付き商品を購入した消費者に、ポイントの「寄付」を求める。そして、集めたポイントに応じて、環境改善につながる商品を受け取ることができる。他の環境団体に寄付することも可能だ。
消費者にとって、「社会的意義を感じ、ポイントのついている商品を選んで購入」という点で教育助成のためのベルマークに似ているが、「どんぐりポイントコミュニティ」という存在がポイント集めと使い道について主体的にかかわる点が、やや異なる。
企業としては、自社製品に「どんぐりポイント」をつけることで、環境問題に取り組んでいることを確かな形でアピールできる。また、CFPを低減することで、同じ予算で多くの商品に「どんぐりポイント」をつけることができるので、二酸化炭素排出抑制に一層熱心に取り組む動機づけにもなる。
同制度には、経済産業省による補助金交付が13年10月1日に決まった。17日に行われた「2013年度報告会」では、経済産業省環境調和産業推進室の吉本周平氏が事業の推移を説明。CFPオフセットポイント推進委員長の西哲生氏も事業概要を説明した上で、協賛事業者が空白の県がまだあり、BtoB企業が多く、一般の人が接する商品にどんぐりマークがついた例がまだ少ないなど、課題についても言及した。
同制度には、プロモーションに力を入れている特徴もある。制度のプロモーターである文化放送開発センター事業開発部の大木正和部長と、アサツー・ディ・ケイ総合ソリューションセンターの中村由美子氏は、ラジオ番組「久保純子のどんぐりラジオ」をはじめとするメディアを使ったPRやスカイツリーで実施した「どんぐりポイントのサンプリングイベント」、全国の高校5000校への冊子配布、全国高校生環境ネットワーク開催、さらにYOMIURI ONLINEでのキャンペーン展開などを紹介した。
現在までに協賛事業者は全国13社に達した。うち、合同会社ひびくー(本社・福岡県北九州市)の松田晋太郎代表社員は、天然の陶磁器原料と植物由来原料を用いて、従来の素焼きと比べ、焼成温度の抑制(摂氏200度以下)や焼成時間の短縮(1、2時間)などでCFPを大きく削減した新素材のFOLMICS(フォルミックス)を紹介。商品化したタンブラーでどんぐりポイントを取得し、北九州マラソンで販売したという。
佐川急便グループ(SGホールディングス傘下)で、企業や施設の移転などを行うSGムービング(本社・東京都江東区)の別所規至執行役員は、同社として以前から、環境問題への取り組みを実施してきたと紹介。同社は東日本大震災からの復興支援にも力を入れており、岩手県・釜石地方森林組合などとの二酸化炭素オフセットクレジットなどで 、2015年カーボン・ニュートラルを目指す考えだ。引っ越し輸送について3月21日にどんぐりポイントの付与を開始し、同年12月31日までに付与件数2万件、合計50万ポイントの付与を予定している。
給食食器を手掛ける朝日化工(本社・愛知県名古屋市)の林育生代表取締役は、以前からもエコマーク取得など環境問題で積極的に取り組んできたと説明。取得により官公庁のグリーン購入の推奨商品となり、学校給食食器の入札使用設定にも有効など、ビジネス面でも効果があったという。一方で、廃棄されたPETボトルを利用したトレイを開発したところ、納品して半年ほど経過してから耐久性面での問題が出たなど失敗談も披露し、ものづくりにおける責任感を痛感したと説明。どんぐりポイントについても積極的に取り組み「ベルマークのように社会への浸透を目指す」という。
どんぐりポイントの協賛企業になったソニーモバイルコミュニケーション(本社・東京都港区)については、ソニー(本社・同)総務センターファシリティ&セーフティ室エネルギー担当の井上哲氏が説明。どんぐりポイントを付与されたのはスマートフォンのXperia Z1で1台あたり400ポイント。再生可能エネルギー由来の国内クレジットを活用した。期間は4月13日までを予定。どんぐりポイントは多くの場合、シールやカードの形で商品に付けられるが、Xperia Z1では、スマートフォンの特徴を生かし、キャンペーン参加サイトを通じて、ポイント登録とコミュニティへの寄付ができる。
クリーンテックス・ジャパンは米国に本社がある、建物入口などに敷かれる玄関マットの老舗だ。定番商品の「ショーホース-ECO」は、マットに使われる繊維の部分に、廃棄されたPETボトルを用いている。開発部の西川滋之マネージャーによると、レンタルユーザーに対してもどんぐりマークの認知を深めていく考えだ。また、廃棄される玄関マットを利用して、ゴム部分を含めてのリサイクルループを確立していくという。
CFPオフセットポイント推進委員会の西委員長は今後について、ポイントとの交換商品について、コミュニティの希望を取り入れ充実させていきたいと述べた。
報告会では、ポイントコミュニティのNPO法人そらべあ基金の三沢拓矢氏が、学校における再生可能エネルギーについての体験授業など、寄付先団体の認定NPO法人FoE JAPANの篠原ゆり子氏が、熱帯林の減少や国内林の荒廃を紹介し、合法的に伐採されたフェアウッド利用を推進する取り組みなどを紹介した。(編集担当:中山基夫)
CFPオフセットポイント推進委員会は17日、地球温暖化防止への貢献を目的とする「どんぐりポイント制度2013年度報告会」を開催した。昨年(2013年)11月にスタートした制度で課題もあるが、企業、消費者、「コミュニティ」など、社会の幅広い「輪」により環境問題に取り組む同制度が着実に広がっているという。(写真はCFPオフセットポイント推進委員長の西哲生氏。サーチナ編集部撮影)
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2014-03-18 15:15