中露を隔てるアムール川―深刻な中国からの水質汚染

日本経営管理教育協会が見る中国 第298回-- 廣井正義(日本経営管理教育協会会員)
● アムール川のほとり、ハバロフスクに行ってきた
2014年3月に入り、私事ではあるが、ある仕事でロシア・ハバロフスクに行ってきた。ハバロフスクといえばアムール川が有名である。泊まったホテルがアムール川のすぐ近くに立っており、窓からもアムール川が見える。ホテルからも歩いて5分もかからず、川のほとりまでたどり着けるのだ。3月といえどもまだまだものすごく寒く、最低気温はマイナス16℃、最高でもマイナス7℃。川はほぼ全面凍結している。そんなアムール川を少しお伝えしよう。
アムール川は世界でも有数の大きな川で、その源流は結構複雑に絡み合っているが、多くの支流は中国やモンゴルから流れ込んでいる。そして、ちょうどロシア・ハバロフスク地方で1本になり、オホーツク海に流れ込んでいるのだ。全長は支流も含めると4300キロメートル強となり、水量も豊富だ。
● アムール川を襲う石油化学工場事故
そのアムール川は、記憶に新しいところでは2005年11月に中国吉林省で起きた石油化学工場の爆発火災事故により、大量のベンゼン化合物が流れ込んだのは有名な話だ。元々アムール川は栄養が豊富であり、サケの有数の漁場であるらしい。実際、ハバロフスクの市場を覗くと、魚売場にはいたるところにサーモンが売られている。
元々内陸のハバロフスクでは、ローカル市場で淡水魚が圧倒的に多く売られているのは、中国でもよく見られる光景だ。しかし、サーモンは我々日本人にもなじみの魚なので、それを見ると何となく食してもいいかなとも思える。しかし、その事故をきっかけとしてアムール川の汚染は、より多くの関心を集めてしまったようだ。
その後も中国からの汚染物質による水質汚濁はひどく、ロシアではアムール川での水泳を禁止しているという話もあるようだ。また、水道水への影響も出ているらしく、心配事は尽きないらしい。
● 中国企業の汚染物垂れ流しの意識
中国ではもともと環境に対する保護は皆無に等しい。最近ではようやく環境汚染が取りあげられているが、ほんの数年前まではほとんど垂れ流し状態だ。一応の決まりごとはあるが、企業の経営者曰く、「公害対策をするより、発覚した時の罰金の方が断然安いので、それでいいのだ」と、平気で言っていたのだ。そんな意識であるし、そんな行政だから、水質が悪化するのは当たり前だ。
● 再び災難が襲うアムール川
そして、直近では2013年秋、流域に大量の雨が降った際、中国側がダムの放水を行ったのが原因で、ハバロフスクの街が大洪水に見舞われた。ハバロフスク以外にも河川の沿線の多くの街が浸水したようだ。もちろん中国側でも洪水の被害が出たとのことだが、ロシアにとっては身勝手なダムの放水が思わぬ被害を受けてしまった格好だ。
この洪水は、ハバロフスク付近では通常4メートルほどの水位が、倍の8メートルまで上がったとのこと。ただ、この洪水で汚染物が一気に流され、川がきれいになったという楽観的な話をするハバロフスク市民もいるという。
そんな中国も、ようやく環境対策に本腰を入れ始めたようだ。今後早い段階で公害に対する意識が高まり、環境が改善されることを強く望みたい。大河を真近に見て、しみじみ思った次第である。
写真はアムール川を背に著者。(執筆者:廣井正義・日本経営管理教育協会会員 編集担当:水野陽子)
2014年3月に入り、私事ではあるが、ある仕事でロシア・ハバロフスクに行ってきた。ハバロフスクといえばアムール川が有名である。泊まったホテルがアムール川のすぐ近くに立っており、窓からもアムール川が見える。ホテルからも歩いて5分もかからず、川のほとりまでたどり着けるのだ。
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2014-03-19 10:00