地方にも浸透した「中高速」、中国の17年GDP成長率は6.5%前後か=大和総研

 中国政府が掲げる経済政策のキーワードとして「新常態(ニューノーマル)」が使われ始めたのは2014年5月。「高速」な経済成長を「中高速」へと移行することが意図され、GDP経済成長率の政府目標は2012年~14年の7.5%前後から、15年には7.0%前後、16年には6.5%~7.0%に下げられた。大和総研経済調査部の主席研究員、齋藤尚登氏は2月22日、「中国:地方の経済目標からみる景気の安定化」と題したレポート(全9ページ)を発表し、16年の成長率がマイナスになった遼寧省の事例を取り上げながら、中国の地方政府の現状を分析した。レポートの要旨は以下の通り。 ◆ニューノーマル(新常態)への移行には、痛みを伴う部分があり、2015年にかけて、東北三省(遼寧省、黒竜江省、吉林省)、山西省、河北省といった重工業・資源依存度の高い地方の成長率は大きく低下した。こうしたなか、中国政府は乗用車と住宅の購入刺激策を打ち出し、乗用車・住宅市場の活況は、鉄鋼や電力(中国は石炭火力が中心)の需要を高めた。2016年の中国経済の特徴の一つは、従来型産業が景気の下支え役を果たしたことであったが、それには、ニューノーマルへの移行の痛みが強く出た地方経済への政策手当てという側面があったのである。 ◆2016年の中国の実質GDP成長率は前年比6.7%と、2015年の同6.9%からは若干の低下にとどまった。全体として景気減速ペースが緩やかになるなかで、2016年の遼寧省の実質経済成長率は前年比マイナス2.5%と唯一のマイナス成長に落ち込んだ。2011年~2014年の財政収入の水増しが判明し、固定資産投資は2015年に同27.5%減少、さらに2016年には同63.5%の急減を記録した。ニューノーマルへの移行の痛みが出た面はあったにせよ、それ以上に、無い袖は振れない状況であったことは想像に難くない。 ◆2017年3月5日から始まる第12期全国人民代表大会(全人代)第5回会議を前に、各省・自治区・直轄市では、地方の人民代表大会が開かれ、2017年の実質経済成長率目標などが発表されている。目標を大きく下げた地方は皆無であり、ニューノーマルへの移行が一段落し、地方政府レベルでも経済の安定化が重視されていることが分かる。 ◆全人代で発表される2017年の全国の政府経済成長率目標は、2016年の前年比6.5%~同7.0%のようなレンジとはならない可能性が高い。2016年はレンジで提示した地方が8地方であったが、2017年は2地方に減少した。2017年秋に第19回党大会の開催を控え、経済の「安定」を最優先しつつ、構造改革をある程度進めるのであれば、2017年の成長率目標は6.5%前後に設定される可能性が高いのではないか。(情報提供:大和総研)(写真は遼寧省丹東市にある中国-北朝鮮友好の像、丹東市は鴨緑江を隔てて北朝鮮と接する国境の街。イメージ写真提供:(C)Liu Junrong/123RF)
大和総研経済調査部の主席研究員、齋藤尚登氏は2月22日、「中国:地方の経済目標からみる景気の安定化」と題したレポート(全9ページ)を発表し、16年の成長率がマイナスになった遼寧省の事例を取り上げながら、中国の地方政府の現状を分析した。(写真は遼寧省丹東市にある中国-北朝鮮友好の像、丹東市は鴨緑江を隔てて北朝鮮と接する国境の街。イメージ写真提供:(C)Liu Junrong/123RF)
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2017-02-23 09:15