「東証マネ部!」にETF検索機能を追加、よりわかりやすく身近な情報発信に注力=東京証券取引所

ETF(上場投資信託)の普及、活用促進に向け東京証券取引所の情報発信に一段と力が入ってきた。ETFについては、金融審議会の市場ワーキング・グループの議論でも「流動性の向上」、「認知度の向上」、「長期・分散・積立投資におけるETFの活用促進策」が課題として指摘されている。ETFを含む資産形成についての情報発信サイトとして開設された「東京マネ部!」では、3月30日にETFの検索機能も追加された。ETF普及に向けての取り組みについて、東京証券取引所 株式部 株式総務グループ調査役の岡崎啓氏(写真:左)と、金融リテラシーサポート部 リテール・マーケティンググループ調査役の矢頭憲介氏(写真:右)に聞いた。
――ETFの普及についての取り組みは?
岡崎 ETF普及には2つの側面から取り組んでいる。ひとつは、制度枠組み面からの取り組みで、こちらは株式部が主体。また、ETFそのものの認知度を高めるプロモーションについては、金融リテラシーサポート部が主体となって進めている。
まず、制度面での対応については、金融審議会でも指摘されている流動性の問題を解消するために、マーケットメイク制度を導入する計画だ。現在もTOPIX(東証株価指数)や日経225に連動するETFなど、毎日活発に売買され、流動性に問題のない銘柄もある。ただ、上場銘柄数が200銘柄を超え、海外やコモディティ(金、原油、穀物など)のETFなど、多様なETFが上場されるようになって、中には、流動性が不足している銘柄もある。
売買高が小さいETFの場合、売りたいと思った時に、思いがけず安い値段でないと買い手が現れないということもある。このようなことがないように、複数のマーケットメーカーが常に売りと買いの注文を出すようなマーケットメイク制度を整え、どの銘柄を選んでも投資家の方々がいつでも売り買いができるような市場にしたいと考えている。
このマーケットメイク制度を使った流動性の向上は、様々な投資機会を提供するというETF市場の魅力を保つためにも重要な施策だと位置付けている。制度の内容を固めて、マーケットメーカーを募り、来年にはマーケットメイク制度を導入する考えだ。
ETFの「透明性」、「低コスト」、また、様々な資産に手軽に投資できるというメリットは、特に長期分散投資を行うツールとして優れた特性になると考えている。米国を中心に世界の市場では過去10年間にETFの銘柄数、純資産残高ともに5倍を超える伸びになっている。日本のETF市場も純資産残高や本数が増えているが、まだ世界の市場と比較すると小さな規模にとどまっている。マーケットメイク制度によってETFを通じて多様な資産クラスへの投資が容易にできることが浸透すれば、ETF市場の利用促進にもつながると考えている。
――ETFの認知度を高める取り組みは?
岡崎 金融審議会のフィデューシャリー・デューティー(顧客本位の業務運営)の議論において、手数料等の明確化とわかりやすい情報提供の拡充が提言された。こうした議論を受けて、投資信託とETFの比較ができるよう、情報提供方法等の検討を関係者間で進めている。
ETFと投資信託の違いは、インデックスファンドなどパッシブ型のファンドに限れば、対象指数に連動するという点で、運用成績が大きく変わるものではない。そこでは、信託報酬という運用コストの違いが、長期の資産形成を考えるうえでの差となってくる。たとえば、TOPIXに連動するインデックスファンドとETFを比較すると、インデックスファンドでは最も安い信託報酬で0.2%台だが、ETFであれば0.11%以下になる。
もちろん、1万円など金額を指定して購入できる投資信託と、時価で取引するETFは、積立てのしやすさといった利便性においては違いがあるが、同じような投資成果が期待できる商品でコストが安い商品があることを、比較できるようにすることは重要なポイントだと思う。このような比較がしやすい環境を整えていきたい。
矢頭 ETFのプロモーションでは、WEBを中心に既存の投資家層だけでなく、資産形成層といわれる若い世代に向けても進めていきたいと考えている。昨年12月8日に立ち上げた「東証マネ部!」は、資産形成層に向けて、中立的な立場にある取引所から、資産形成に関する様々な情報を発信していくという考え方で運営している。インフォグラフィックを使ったコラムや動画による解説など、投資をしたことがない方から、すでにETFに投資をしている方まで、幅広い方々に向けた情報提供を行っている。
ETFは、数ある投資商品のひとつという位置づけだが、WEBコンテンツの特徴を生かし、例えばETFに少しでも興味を持っていただいた方には、より詳しい情報を提供するなど、使う方の興味の度合いに応じて、より掘り下げた情報を提供するなど工夫をしている。
――3月末に新たに加えた機能とは?
矢頭 ETFの「銘柄検索機能」を追加した。ETFの種類や、「分配金利回り」、「最低買い付け金額」、「運用コスト」、「年間騰落率」等で並び替えをしたり、各項目で上限・下限を指定して絞り込むこともできる。「買い付け金額1万円以下、分配金利回り3%以上」などの条件でETFを絞り込むことが簡単にできる。検索サイトのデザインは、賃貸物件を探すような使いやすさを重視した。投資経験のない方でも、馴染みのある感覚で使っていただきたいと考えている。
また、検索結果として得られるETFの紹介内容は、価格情報からファンドの特色まで、あらゆる情報を網羅している。ETFの情報サイトは、いくつもあるが、個別の銘柄について公開情報を一覧で全て掲載しているところはなかなかない。価格情報はチャートで図表示し、市場で取引されている価格とファンドの基準価額とのかい離率もグラフ表示するようにしている。かい離率がグラフで一目で分かるのは本邦初の取り組みだと思う。
また、ファンドが連動をめざす指数についての概要も同じページの中で紹介している。ETFの特徴で「日経225に連動する」という説明があっても、そもそも「日経225」とは何のことか分からないという方は少なくない。その他、リアルタイムの1口あたり推定純資産額(基準価額)を表す「Indicative NAV」などプロが使う指標、管理会社のホームページへのリンクなど、ETFのことについてなら、なんでもわかる紹介ページにしている。ぜひ、投資の検討に役立てていただきたい。
――今後は?
矢頭 「東証マネ部!」のコンテンツを充実させていく。ETF応援団として証券会社や運用会社(管理会社)、指数算出会社などにご協力いただいており、こうした方々と力を合わせてより魅力のある市場を作っていきたい。
また、「東証マネ部!」はLINEの公式アカウントもあり、友だち登録をしていただいた方には、タイムリーで資産形成に役立つ情報をお送りしている。
岡崎 マーケットメイク制度の整備、あるいは、来年からスタートする積立NISAも、ETFの利用促進にはポイントになるイベントだと思う。このようなきっかけになるイベントを上手に活かして、より多くの方々に情報を届けていきたい。
ETF普及に向けての取り組みについて、東京証券取引所 株式部 株式総務グループ調査役の岡崎啓氏(写真:左)と、金融リテラシーサポート部 リテール・マーケティンググループ調査役の矢頭憲介氏(写真:右)に聞いた。
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2017-04-03 14:00