アベノミクス成長戦略をシナリオ分析した日本経済中期見通し=野村證券

野村證券は2014年3月18日に「日本経済中期見通し 2014」を発表した。「アベノミクスの開始以来、海外の投資家等の機関投資家から、日本の財政は中長期的に維持可能か? 日銀の量的質的緩和策の出口戦略は? などという問いかけを良く受けるようになったため、それに応えるため従来発表してきた1-2年先の経済見通しよりも長いスパンでの経済見通しをまとめた」(野村證券金融経済研究所チーフエコノミスト 木下智夫氏)。アベノミクスの成長戦略が成功するケースと成功しないケースを想定したシナリオ分析を行って、2020年までの経済予測を行っている。  経済連携協定の推進、法人税率引き下げ、労働市場改革などの成長戦略が、すべてにおいて政府の期待通りの成果を上げることができるとの前提に立った場合(成功ケース)、2016年から2020年の年平均でみた実質GDP成長率は1.8%に達すると予測している。この場合、日銀は2014年7月に追加金融緩和を実施した後、2016年4月-6月に国債買入れ規模の段階的縮小を開始して「異次元緩和」の出口戦略がスタート。2017年10月-12月にゼロ金利政策を解除、2019年末に国債買い入れ額をゼロにできるとみている。  この「成功ケース」では、法人税減税を実施し、政府債務残高は2013年度の1005兆円から、2020年度に1209兆円へと205兆円程度増加する見込み。ただ、名目GDPが482兆円から567兆円へ拡大すると見込まれることから、政府債務残高の対GDP比は、2013年度の208%から2020年度213%と5%ポイント上昇するにとどまる。成功ケースでも、社会保障に加え、金利上昇に伴って利払い負担が増加していくため、財政の再建は困難であると見通している。  一方で、成長戦略が全て成功しない「不成功ケース」の場合、2016年ごろには、アベノミクスが日本の成長率を底上げするのではないかという期待がすっかり後退し、法人税減税も見送られ、民間設備投資も低迷すると予想される。2020年までの年平均の実質GDP成長率は0.9%にとどまる。この場合でも、日銀は2014年7月に追加金融緩和を実施した後、金融緩和の副作用を抑えるために2016年4月-6月に国債買入れ規模の段階的縮小を開始する。ただし、「成功ケース」と比較すると減額規模は小幅になり、2020年においても多額の国債の買い入れを継続していると見通される。  この不成功ケースでは、法人税率は据え置かれ、政府債務残高は7年間に178兆円増加し、2020年度には1181兆円となる。名目GDPが535兆円規模にとどまるため、対名目GDP比の政府債務残高は221%にまで悪化する見通し。2015年10月にも消費増税(10%に引き上げ)を行うことを前提にしても、財政は一段と悪化することが見通される結果になった。  チーフエコノミストの木下氏は、「今回の中期見通しで示した成功ケース、不成功ケースともに極端な想定であり、実際には、この両ケースの間のどこかで落ち着くものと見通される」と語っている。そして、財政健全化に向け、実質的に採れる方法は、「社会保障給付費の支出額を抑制する」、または、「保険料負担を重くして国民の自己負担額を増やす」という2つの道のみとしている。  なお、2020年までの経済見通しを予測するに当たっての前提条件は、海外経済の成長率は、2013年10月に発表されたIMF(国際通貨基金)による見通しよりも、やや低い水準に置き、2015年に3%台後半の成長率になるものの、2017年には3%そこそこに減速。2020年に向かって徐々に回復するという見通し。原油価格は中期的に低下傾向をたどり、北海ブレント期近物先物の2013年平均価格が1バレルあたり109ドルだったものが、2020年にかけて90ドル台後半に低下するとみている。  為替の見通しは、ドル/円レートの年平均が、2014年が1ドル=108.5円、2015年が116.3円で、2016年に1ドル=120円で今回の円安局面のピークをつけ、その後緩やかな円高が進むとみている。2020年の年平均ドル/円レートは1ドル=106円と置いている。(編集担当:徳永浩) 
野村證券は2014年3月18日に「日本経済中期見通し 2014」を発表した。アベノミクスの成長戦略が成功するケースと成功しないケースを想定したシナリオ分析を行って、2020年までの経済予測を行っている。
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2014-03-20 19:00