中国の転職がピーク期に・・・若者らの「攻め」の姿勢、賃金水準上昇招き「企業の海外移転」も

日本では大手企業の景気見通しが明るくなって、今年の春は続々と賃上げが行われるというニュース。こうした動きが中小企業にも波及するにはまだまだ時間がかかりそうですが、消費税アップを前に、働く人たちが少しほっとできる知らせではあります。
長く働くほど給料が上がり、労働組合が賃上げについて交渉してくれるといった日本の働く人事情とは違い、中国ではより高い給料、より良い仕事環境を求めて転職するのがごく当たり前。「転職」は中国で「跳槽(ティアオツァオ)」と呼ばれ、「家畜が餌を食べる桶を変える」ことを指します。日本の転職が精神的に追い込まれてのものだったり、心機一転を図るための一大決意だったりするのに比べて、「より良く生きていくために必要なこと」といった、とてもポジティブな雰囲気が漂います。
さて、日本では新年度が4月からということで、職場内の組織改編が行われたり、新たな事業が経ち上がったりする春に転職するのが有利、という考え方があるようです。一方、中国では春節(旧正月)前後で区切りを付け、新たな仕事に向かうという意味で、12月から2月、3月ぐらいまでが転職のピークの時期になっているといいます。
中国の転職情報サイト「智連招聘」のアンケート調査では、1年間のうち、この時期に仕事を辞め、転職する人の割合が、転職全体の60―70%という結果でした。同サイトの調査ではまた、「転職する考えはない」と答えた人の割合が35.5%で、残る64.5%が「転職する・したばかり」か「転職を考えている」と答えました。「90後(1990年代生まれ)」と呼ばれる若い世代では、「我慢するよりも、仕事に疲れたりつまらなかったりすれば、すぐに転職することが自分のためになる」と考える人も少なくなさそうです。
かつて中国は「世界の工場」と呼ばれ、各国企業が中国に多くの工場を抱えていましたが、社会の生活レベルが上がり、より自分を生かせると思う仕事、より高い給料を求めて「跳槽」する人が増えた結果、世の中の賃金水準はどんどん上がり、賃金の安い単純な製造業には労働力が集まりにくくなりました。そのため、中国から東南アジアなどに工場を移転する企業が増えているといいます。また、中国は国がより付加価値の高い産業を育てることを目指していて、単純な製造業や環境汚染につながる恐れがある重工業よりも、情報や医療などを含むサービス業が重視されるようになってきています。
もともと、「農村に生まれた人は農業をする」という考えが普通でしたが、都市部に出て農業以外の仕事をする人は増える一方で、これまで「農村部」と「都市部」で別々に算出されてきた「平均所得」もついに最近、全国民の平均で計算されるようになりました。
国民1人当たりで昨年の年間可処分所得(所得から税金などを引いた手取り収入)は、前年比10.9%増の1万8311元(約30万6200円)。12カ月で割れば、月に2万5000円ほどです。物価や住宅の価格がどんどん上がり、車を持つことも普通の社会になった中国で、この額は多いとは言えず、だからこそ転職する人が多いという状況。さらに、実際には今も農村と都市で所得には大きな差があるため、より高い収入を求める人々が農村から都市にどんどん流入しています。
国は農村部の「都市化」が中国のこれからの経済成長を支える原動力になると見込んで、都市化対策を進める考えです。また今年は「一人っ子政策」が緩和されて「夫婦ともに一人っ子なら、2人目の子どもを生んでOK」となる地域が増えることもあり、若い世代をとりまく働く環境はさらに変わっていきそうです。(編集担当:古川弥生)(イメージ写真提供:123RF)
長く働くほど給料が上がり、労働組合が賃上げについて交渉してくれるといった日本の働く人事情とは違い、中国ではより高い給料、より良い仕事環境を求めて転職するのがごく当たり前。転職は中国では「より良く生きていくために必要なこと」と、とてもポジティブなこととしてとらえられています。(イメージ写真提供:123RF)
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2014-03-24 13:15