PM2.5大気汚染が及ぼしている影響再考

日本経営管理教育協会が見る中国 第299回--大森啓司(日本経営管理教育協会会員)      ● 1年前を回顧してみて     早いもので筆者が中国の北京民族大学に短期留学をして1年が経過しようとしている。最近再びPM2.5の記事が日本でも話題になっているが、1年前にはもっと厳しさを感じていた。当然である。1月に留学を決めて以降、周囲からは「そんな環境の悪い所に」「なぜ今なのか?」など、友人だけでなく家族からも反対の嵐を受けていた。当の本人もネットでPM2.5対策のマスクを眼を皿のようにして探し、飛行機に飛び乗った。   今でも鮮明に覚えているが、3月31日北京首都空港に着陸した時本当に灰色の空気で、「え~、こんなん!」と心の中で叫び、隣の中国人からも「PM2.5は怖くないのか?」と質問を受けたことを昨日のことのように覚えている。後で同学に聞いてわかった事だが、この日は風も強く最悪の日だったと聞いた。今年も気温が暖かく風が強くなり始めると話題になってきたが、今年は昨年度とは少し違った危機感を感じている。今回はこのPM2.5が中国に与える影響について少し広汎な意味から論じてみたい。 ● 人害だけでなく、農業にも影響を及ぼすPM2.5   2014年3月13日に中国の全国人民代表会議が閉幕した。10日間の意見交換の中で最も関心を集めたのは、このPM2.5、人体に及ぼす影響もさる事ながら、最近は農産物の育成を拒むなど新たな問題が議論されたようである。   例えばPM2.5による日照時間の減少により、小麦の生育期にスモッグが発生して生産量が15%~20%減少しているようである。これは中国最大の穀物船産地である吉林省でも深刻化しており、国内総生産の1割を占める農業への影響が出ているとのことである。   その為市民の不満は根強く、開幕直前習近平国家主席は北京市内をマスクなしで歩いて視察し、国として重要課題として取り上げていることをアピールしていたとの情報もある。   PM2.5は人体や農業への影響だけではなく、飛行機の遅延・観光客離れ・高速道路の閉鎖など、経済活動にも大きな影響を及ぼしかねない事態に陥り、昨年度よりも広範かつ深刻な問題になってきていると断言できる。 ● 改めて知る、中国経済伸長のすごさと怖さ   先日あるTV放送で、石炭ボイラーの工場が木端微塵に破壊されている光景を見た。具体的には今後、石炭ボイラーを5万台、旧型自動車を600万台廃棄する予定だと、具体的な数値目標を設定し、有無を言わさずに推進している。     全国人民会議は、7.5%の成長目標を維持し、この大気汚染や不動産バブルなどと向き合いながら狭き改革の道を進んでいくとの声明を発表して終了したが、来年は今年よりも対策が進み穏便な経済発展を目指していることを心から願いたい。    写真は筆者が北京に持参したPM2.5専用防塵マスク。(執筆者:大森啓司・日本経営管理教育協会会員 編集担当:水野陽子)                 
早いもので筆者が中国の北京民族大学に短期留学をして1年が経過しようとしている。最近再びPM2.5の記事が日本でも話題になっているが、1年前にはもっと厳しさを感じていた。当然である。1月に留学を決めて以降、周囲からは「そんな環境の悪い所に」「なぜ今なのか?」など、友人だけでなく家族からも反対の嵐を受けていた。当の本人もネットでPM2.5対策のマスクを眼を皿のようにして探し、飛行機に飛び乗った。
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2014-03-26 10:45