中国では「大気汚染による濃霧」すら冗談にするのか

今年2月頃「濃霧(大気汚染)の影響により、北京市政府は今月29日、30日、31日を統一的に休日とする旨の緊急通知を出した」というメッセージがインターネット上にあふれた。
一瞬「本当か?」と思ってしまうところだったが2月は28日までである。つまり29日以降は存在せず、要するに冗談なのだ。
しかしこのメッセージはウェイボーやウェイシン(これらはよく中国版「Twitter」と呼ばれる)、ブログなどを経て拡散が止まらなかった。中にはこの冗談にまことしやかに「全員が休みなんだろ? 地下鉄も休みだな」とか「この3日間は強制的な休日だから、水も電気もガスも止まるぞ」と冗談の続編を作る者までいた。
上海社会科学院が「人間が住むに適さない環境」とまで発表した環境に冗談を言うほど一般の中国人は余裕なのだろうか。それとももう冗談でも言わないとやってられない状態なのだろうか。
中国では大気の調子が特に悪いときは学校が休みになるなどの措置が取られている例がいくつか報告されている。では企業はどうなのであろうか。この冗談のように企業が休むということはあるのだろうか。
残念ながらこれについてはまだ明確な回答はない。これに関しては、いくつかの地方政府はどのような基準をもって企業を休みにしてほしいのか、さらにその時給与は不支給でもかまわないのか、濃霧(大気汚染)により在宅勤務にした場合に降給は許されるのかについて意見公募をしている。つまり政府サイドもどのようにすればいいのか分からないでいるということだろう。
日本ではこのような場合には給与の支払いは必要ない(日本では労働基準法第26条で「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない」としている。つまり政府が休みを命じた場合もしくは環境汚染で出社させることが適当でない場合は、不可抗力による休業であり、使用者の責に帰すべき事由ではないため「百分の六十以上の手当」の支払いも必要ないのである)。
これに対し中国の労働法にはこのような条文がなく企業が政府命令や環境のために休業するという概念が存在しない。では今後、明確な指針が出ないまま大気汚染を理由に企業が休業した方がよいと判断した場合はどうなるのだろうか。企業にとっては誠に残念だが法的リスクを回避するためには給与を全額支払った方がいいだろう。
もしかしするとこのため休業したら企業が一方的に損を被るため、このように学校は休みになっても企業の休業という話は出てこないのかもしれない。そして大気汚染の中、仕事には行きたくないという気持ちが、このような2月29日-31日までは汚染のため政府が統一的に休業という命令を出したなどという冗談に走らせていたのかもしれない。(執筆者:高橋孝治 提供:中国ビジネスヘッドライン)
今年2月頃「濃霧(大気汚染)の影響により、北京市政府は今月29日、30日、31日を統一的に休日とする旨の緊急通知を出した」というメッセージがインターネット上にあふれた。
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2014-03-27 10:30