アズビル、「ヒートショック全国調査」が明らかにした意外な事実

アズビルは東京都健康長寿医療センターと共同で、ヒートショックに関する実態調査を全国で行って、その分析結果を2014年3月26日に公表した。全国47都道府県を網羅した調査結果は、従来の同種の調査では最大級の規模。調査で明らかになった都道府県別のヒートショックの発生頻度では、沖縄県に次いで北海道が、発生頻度が低いことが明らかになった。同調査のポイントについてアズビル株式会社ホームコンフォート本部事業開発部マーケティンググループ マネージャーの石川孝志氏に聞いた。(写真は、アズビルの石川孝志氏。サーチナ撮影)
――東京都健康長寿医療センターと共同で調査している「ヒートショック」に関する実態調査で、今回、追加調査を実施したそうですが、その結果は?
当社では「空気と暮らしの研究所」を設置し、空気と健康、暮らしについて、専門の研究者と連携した調査や研究を行っています。その中で、東京都健康長寿医療センターとは、2012年にヒートショックに関する実態調査を共同で行い、2013年3月に調査結果を公表しています。
この1回目の調査報告では、東日本地区の消防本部に対する調査結果を分析した報告だったのですが、今回は、西日本24府県、および東京消防庁からの回答も得て、前回調査と加えて、全国47都道府県785消防本部のうち、有効回答634本部を得るという、全国を網羅した調査結果が得られたので、改めて詳細に分析しました。
今回、47都道府県から協力をいただいた結果、都道府県別にみた高齢者1万人あたりの入浴中に心肺停止(CPA)状態におちいった件数を出すことができました。全国で約1万7000人がヒートショックによって死亡しているとの推計には変わりなく、都道府県別にみた場合、CPA発生頻度が最も低いのが沖縄県、次いで北海道であったということは、ひとつの発見でした。
入浴中のCPA発生頻度は、気温との相関関係があり、夏よりも冬、また、より寒冷な地域で入浴中のCPAが多く発生していることは1回目の調査でもわかっていました。そして、今回、沖縄県に次いで北海道、山梨県、青森県などの寒冷地においてCPA発生頻度が低いことが明らかになりました。このため、外気温の低さだけがCPA発生要因とはならず、CPA発生頻度と住宅内の温熱環境に関係があることがわかってきました。
実際に、2012年1月に全国の住宅室内温度を調べた報告によると、北海道、沖縄県、青森県、秋田県の4道県において住宅内温度が冬でも20度を超えていました。以上から東京都健康長寿医療センターでは、「高齢者に多発する入浴時に心臓機能停止発生には、外気温の低下が関わっているが、住宅内の温熱環境を適度に保つことによって減らすことが可能であると推測された」と分析しています。
――今回の研究成果を、どのように活用していくのですか?
ヒートショックによる死亡者が年間で約1万7000人というのは、非常に多い数であり、住宅内での安全への配慮を喚起する必要があると考えています。1回目の調査では、ヒートショックの発生頻度は、外気温が低くなる1月に、最も少ない8月のおよそ11倍になることを示し、高齢者の方々や高血圧の方には、冬の入浴時に注意することを呼びかけました。
当社では一般住宅用全館空調システム「きくばり」を販売し、暮らしの中の空気を通じ、みなさまの「暮らしを、快適に、健康に、安全に する」ということをめざした、さまざまな研究・調査を行っています。「空気と健康(大気汚染・PM2.5・ヒートショック)」と「空気と家族(子供・ペットと暮らす環境づくり)」について、専門家による知見を紹介していますが、今回の調査結果についても、広く情報発信をして、ヒートショックについての知識を広げていきたいと思っています。
たとえば、寒い季節に、脱衣所を温かくすること、シャワーをお湯はりに活用することで浴室全体を暖めること、また、日没前の外気温が比較的高い時間帯に入浴するようにすること、湯温を41度以下のぬるま湯にすること――などが、ヒートショックの予防につながります。もちろん、弊社の販売する全館空調システムであればヒートショックのリスクを低減できますが、今お住まいの住宅でも対策方法があるとお伝えしています。
今回のヒートショック実態調査について、4月11日に大阪で、東京都健康長寿医療センター副所長で医学博士でもある高橋龍太郎氏を講師に招き、調査から得られた成果について講演をしていただく予定です。より多くの方に参加いただき、ヒートショックの予防につながる住宅建築について考えを深めていただこうと思っています。
また、「空気と暮らしの研究所」では、全館空調システムを使ったA棟と複数のエアコンを使ったB棟の環境が比較できる「azbilハウス」において室内環境の変化を年中記録していますが、エアコンを使った空調では、冬場には脱衣所や廊下などの温度が著しく低くなることを観測しています。全館空調システムは、家中を365日24時間、冷暖房、換気するため、居室はもちろん、脱衣所や廊下も温度差が少なく、エアコンとの違いが明確に表れています。
――今後の展望は?
ヒートショックについては死亡に直結する危険性がある事から、もっと社会的に認知・対策を広げる必要があると考えたのが調査のきっかけでした。最近では「PM2.5」についての話題が多くニュースで取り上げられるようになってくるなど、空気と暮らしに関する関心は高まっていると感じています。
当社が販売している全館空調システム「きくばり」は、新製品として30坪から40坪という平均的な戸建て住宅を対象とした「fシリーズ」を新たなラインナップとしました。「fシリーズ」は、低圧電力契約に対応し、一般的な従量電灯契約と比べて電力量単価が安くなるメリットがあります。全館空調システムは50坪、60坪といった大型の住宅専用というイメージで考える方が少なくないのですが、今回の「fシリーズ」のラインナップによって、より幅広いタイプの住宅にも対応可能な空調システムとして普及に弾みがつくと期待しています。
今回のヒートショックに関する実態調査は、全国の消防本部の80.8%に協力していただけ、これまで行われていた同様の調査と比較すると、大規模な実態調査になりました。引き続き、「空気と暮らしの研究所」を通じて、「空気と健康」、「空気と家族」の関係について調査や研究を進め、明らかになったことについては、積極的に情報発信していきたいと考えています。(編集担当:徳永浩)
アズビルは東京都健康長寿医療センターと共同で、ヒートショックに関する実態調査を全国で行って、その分析結果を2014年3月26日に公表した。(写真は、アズビルの石川孝志氏。サーチナ撮影)
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2014-03-27 17:00