新興国株の反発が鮮明に-際立つ日本株の停滞-=村上尚己

 1-3月の世界の株式市場のパフォーマンスを振り返ると、米国株(S&P500)+1.3%、欧州株(Stoxx600)+1.8%と、それぞれ小幅ながらプラスを維持した(グラフ参照)。1月半ばから、様々な悪材料で世界的に株式市場は売り込まれたが、その懸念が薄れプラスを取り戻した格好になっている。  注目したいのは、新興国株(MSCI新興国指数ローカル)の1-3月騰落率が-0.9%と、ほぼ昨年末の水準まで戻っていることである。3月後半からの株高で、米欧株とほぼ変わらない1-3月のパフォーマンスだったということになる。  1月半ばからの世界的な株安のきっかけは、新興国の大幅な通貨安や同地域への懸念だった。新興国経済がなお脆弱で、かつ中国が抱えるリスクも強く意識されていた。それに米FRBによるテーパリングに対する思惑が重なり、「通貨危機」が想起させる新興国の通貨安が起きた。更に、ウクライナを巡る地政学リスク浮上で、新興国経済の足かせが強まり世界経済が減速するシナリオが懸念された。  ただ、3月26日レポートなどで随時紹介してきたが、大きく売られた新興国通貨は2月初めから反発していた。2月14日レポートでも触れたが、新興国の中でもインドネシアなどアジア通貨は底堅く、「脆弱な5か国の一部」やアルゼンチンだけがターゲットになる「投機的な売り」に過ぎず、同レポートで想定したとおり収束しつつある、ということなのかもしれない。  為替市場での新興国通貨の戻り(落ち着き)を先行指標とみれば、3月後半からの新興国株の上昇は想定できただろう。もちろん経済指標をみると、新興国経済は依然冴えない。ただ、本日発表された3月の中国製造業PMI指数(政府統計)が、前月と同水準を保つなど、中国経済の減速は2013年半ばと同程度で済んでいるとみられる(グラフ参照)。  中国など新興国の景気減速がこの程度なら、2014年も米欧経済の牽引によって世界経済の回復が続くシナリオは十分想定できる。肝心の米経済だが1-3月は寒波の悪影響で年率+2%以下の成長率に減速したとみられる。ただ、寒波の影響が薄れ経済の立ち直りが明らかになるにつれ、世界景気の減速リスクに対する懸念は更に和らぐだろう。  以上のように最近の海外市場の動きと比較すると、3月末まで停滞が続いた日本株の弱さが鮮明になる。「日本固有のリスク」をどう考えるかは別の機会に改めて考えたいが、海外に散見されるリスク要因の後退を素直に踏まえれば、日本株の投資妙味は大きいと思える。(執筆者:村上尚己 マネックス証券チーフ・エコノミスト 編集担当:サーチナ・メディア事業部)
1-3月の世界の株式市場のパフォーマンスを振り返ると、米国株(S&P500)+1.3%、欧州株(Stoxx600)+1.8%と、それぞれ小幅ながらプラスを維持した(グラフ参照)。1月半ばから、様々な悪材料で世界的に株式市場は売り込まれたが、その懸念が薄れプラスを取り戻した格好になっている。
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2014-04-01 17:00