悲観相場からの正常化-日本株でも起こるだろう-=村上尚己
4月1日レポートで最近の新興国株の反発を紹介したが、今週も株高が続き、新興国株指数は2013年末と同水準まで上昇した。2014年1-3月の世界的な相場変調の震源の一つは新興国だったが、同地域の株式市場の調整はとりあえず収束したことになる。
既に「先行指標」である為替市場では、1月末に大幅な通貨安となったトルコリラ・南アランドなどは、2014年初と同水準まで戻っている(グラフ参照)。そして「脆弱な5か国」とされた、ブラジルレアル・インドルピー・インドネシアルピアは年初の水準を大きく上回る通貨高となっている。これは資源国通貨である豪ドルも同様である。FRBのテーパリングへの懸念で新興・資源国通貨が売られるのではなく、逆にこれらの通貨が上昇しつつある。
また、「リスク資産」が買われる動きは、国際商品市況でもみられる。米国の寒波や地政学リスクへの思惑で1-3月にエネルギー品目を中心に商品市況は上昇した。ただ、エネルギー同様に上昇していた金先物価格は3月半ばから調整している(グラフ参照)。金が「安全資産」として買われ過ぎていた反動が、足元で現れたということだ。
米欧株、新興国株・通貨、そして商品市況では、リスクへの警戒が和らぎ1-3月の混乱はほぼ克服されつつある。一方、リスクに対して慎重な米債券市場で、10年国債金利は今週上昇しているが、2.8%と年初から低下した分の半分程度戻ったに過ぎない(グラフ参照)。「1-3月の悲観相場から正常化への移行」という観点で、各マーケットの間でまだ温度差があるのかもしれない。
もちろん、3月19日FOMC後、米債券市場では短中期ゾーンで金利が上昇しており、債券市場全般が慎重とは言い過ぎかもしれない。いずれにせよ、3月26日レポートなどで説明してきたが、景気回復を背景に、一足早く立ち直った株式市場を後追いかける格好で、米長期金利も年初の水準まで接近すると予想される。
こうした中で、ドル円相場は100円台前半の狭いレンジでの動きが続いていたが、今週104円台に一時タッチするなど円安ドル高が進んでいる。3月までドル円は、米長期金利にほぼ連動していたが、「リスク選好」の地合いを背景に、米長期金利から離れ一足早くドル高円安が進みつつあるのかもしれない(グラフ参照)。これには、日本銀行による追加金融緩和に対する思惑が影響している。
以上のように世界で広がりつつある「悲観相場からの正常化への移行」が、日本株市場で起きても不思議ではない。(1)米国の景気復調が一段と明確になる(4月2日付「米国マーケットの最前線」)、(2)「円高・円安が続けば日本銀行が金融緩和に踏み出す」期待が強まっている、という後押し材料も増えている。目先、日本株のアップサイドに期待できる。 (執筆者:村上尚己 マネックス証券チーフ・エコノミスト 編集担当:サーチナ・メディア事業部)
4月1日レポートで最近の新興国株の反発を紹介したが、今週も株高が続き、新興国株指数は2013年末と同水準まで上昇した。2014年1-3月の世界的な相場変調の震源の一つは新興国だったが、同地域の株式市場の調整はとりあえず収束したことになる。
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2014-04-03 17:00