米景気は回復、海外情勢と消費増税の影響に注目=外為オンライン・佐藤氏

 4月から消費税率が8%に引き上げられ、日本の景気減速を懸念する声もあがっている。加えて、海外では中国のシャドーバンキング問題や、やや沈静化したとはいえウクライナ情勢などの懸念材料が残る。3月に引き続き不透明な経済情勢が続いているが、4月はどんな相場展開になるのか。外為オンライン・シニアアナリストの佐藤正和氏にその動向を伺った。(写真はサーチナ撮影) ――米国景気の回復に注目が集まっています。今後の政策の見通しは?  4月4日に発表された2月の米雇用統計は非農業部門雇用者数が19万2000人増(市場予想は20万人増)、失業率も6.7%(前月同)となりました。米国景気は悪天候の影響はあったものの、順調に回復していることが分かりました。  これで、QE3の目標だった20万人の雇用者数増に近づき、4月29日-30日に開催されるFOMC(連邦公開市場委員会)で、100億ドルのテーパリング(緩和縮小)実施が濃厚となりました。そうなると、FRBが毎月買い付ける米国債の金額は450億ドルとなり、早ければ年内にもQE3終了が見えてきます。  先月の記者会見でイエレンFRB議長が示唆したように、QE3終了後半年で「金利引き上げ」のスケジュールも見えてきます。つまり、来年春には金融引き締めへと政策が転換される可能性も出てきたわけです。金利引き上げとなれば、当然ドルが買われて円が売られることになるわけですが、株式市場などがどんな反応を示すのかは不透明。しばらくは、株式や債券、為替など金融市場全体の動きを注視する必要があります。 ――ウクライナの不安定化で、ユーロにはどのような影響がでているのでしょうか?  欧州中央銀行(ECB)が3日の理事会で、現在0.25%になっている政策金利の据え置きを決めましたが、景気回復への足踏みが続いているというのが現状です。低い物価上昇が続く「ディスインフレ」の状況に陥っているといっていいでしょう。  ディスインフレの原因のひとつとなっているのが「ユーロ高」であり、このままの状況が続けば、将来的にもう一段の金利引き下げがあるかもしれません。ロシアがウクライナに提供している天然ガスの価格を一方的に値上げするなど、ウクライナ情勢は混とんとしたまま。6月4日にソチで行われる予定だったG8も、G7になって別の開催地で実施されることが決まるなど、「ロシア外し」が顕著になっていますが、状況次第では金融市場に大きな影響を与えるかもしれません。こちらも目を離せない状況といえます。 ――日本では消費増税が始まり、日銀への追加緩和期待が日増しに高まっていますが、4月の予想レンジは?  消費増税の影響がどの程度になるかにもよりますが、早ければ5月、遅くとも7月、8月には追加緩和があるのではないでしょうか。ただ、すでに国債の7割は日銀が買い取っている状況です。ETF、REIT、現物株といった国債以外の金融商品の買取りも可能性として取りざたされていますが、まだ見えてきません。  今後はFRBがやってきたように将来の方向性をきちんと示唆して金融政策のかじ取りを行う「フォワードガイダンス」が重要になっていくのではないでしょうか。  そうした状況を踏まえて、4月のレンジを予想すると、ドル円が1ドル=101円50銭-105円、ユーロ円が1ユーロ=138円-144円、ユーロドルは1ユーロ=1.35ドル-1.40ドルというところでしょうか。 ――豪ドルはどうでしょうか?  シャドーバンキングの問題が明らかになるにつれて、中国経済に対する懸念が高まりつつあります。また最近では、中国の建設会社が経営破たんするなど、景気後退が徐々に明らかになってきました。PM2.5に代表される公害問題もあり、今後の中国には警戒が必要かもしれません。  中国経済に大きな影響を受けるのがオーストラリアです。中国はオーストラリアの資源の最大の輸出先であり、豪ドル相場にも大きな影響を与えます。4月1日に行われたRBA(オーストラリア準備銀行)理事会で金利の据置きが発表されましたが、隣国のニュージーランドは金利を引き上げるなど、今後は今までとは異なるトレンドに入る可能性があります。  いずれにしても、豪ドルが買われ始めていることを示しており、当面要注目です。4月の予想レンジは、1豪ドル=92円-97円とみています。 ――4月相場のポイントと注意点は?  4月全体としては、円安が進行するトレンドにあるものの、相変わらず変動幅が少ない相場になっています。実際に、2月の売買高は2割ほど減少しています。ボラティリティの少ない、読みにくい相場になっているため、短期での運用に徹底して、細かく利益確定、ロスカットを繰り返すことが重要です。(取材・文責:サーチナ・メディア編集部)
4月から消費税率が8%に引き上げられ、日本の景気減速を懸念する声もあがっている。加えて、海外では中国のシャドーバンキング問題や、やや沈静化したとはいえウクライナ情勢などの懸念材料が残る。4月はどんな相場展開になるのか。外為オンライン・シニアアナリストの佐藤正和氏にその動向を伺った。(写真はサーチナ撮影)
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2014-04-07 13:30