2013年香港10大ニュース<後篇>=香港ポスト

2013年は梁振英政権が発足から1周年を迎えたものの、行政会議メンバーや高官のスキャンダルは相次ぎ、政策もさまざまな障害に阻まれるなど不安定な施政が続いた。普通選挙問題ではセントラル占拠や米英の干渉など不穏な動きが持ち上がる中で公開諮問が始まった。また人民元国際化の進展で香港の優位性低下も懸念され始めた。今年の主なニュースを振り返る。
❻ゴミ処理問題で頓挫 親政府派が離反
香港の1日当たりのゴミ量は1万トンを超え、3カ所あるゴミ埋め立て地は2~6年後に順次飽和状態となる見通しだ。だが特区政府が7月に提出したゴミ埋め立て地拡張の予算申請は立法会を通過できず、拡張計画が頓挫した。立法会では民主派議員の反対に遭うのは通例だが、今回の予算通過を阻んだのは親政府派議員である。
現在稼働しているゴミ埋め立て地は新界西(屯門)、新界東南(将軍澳)、新界東北(打鼓嶺)の3カ所。政府はこの3カ所を拡張するため約90億ドルの予算を申請するのだが、拡張に対しては地元住民の抵抗が強く、立法会の最大勢力である親政府派の民主建港協進連盟も難色を示した。
9月には都市部の固体廃棄物の処理費用徴収に関する第2回公開諮問が始まった。3人世帯1カ月30~74ドルで費用徴収が検討されている。
❼ 機密暴露の元CIA職員 香港潜伏で注目
米中央情報局(CIA)元職員のエドワード・スノーデン氏が6月に来港して米国政府による市民監視を暴露し注目を浴びた。
スノーデン氏は「香港の法治を信頼しており、香港に残って法廷で米国政府と戦うことを望んだ」と香港にとどまる意思を示したほか、米国政府は2009年以降、中国本土と香港のコンピューターに侵入していることなどを明らかにした。
一方、民主派団体などはスノーデン氏の保護を訴えるデモ行進を実施、米国総領事館に抗議するとともに特区政府本庁舎にも行進し、特区政府に米国への身柄引き渡しを拒否するよう要求した。
スノーデン氏は6月23日に香港を離れたが、民主党の何俊仁・立法会議員が代表弁護士として特区政府と交渉していたことを明らかにした。何氏は特区政府高官と数回にわたり討議し、出境時に逮捕しないよう要求していたが高官から明確な回答は得られていなかったという。交渉中に当局の代理を名乗る人物がスノーデン氏に香港を離れるよう促しており、何氏は中国の国家安全部の人員とみている。
特区政府の声明では米国からの逮捕要請を受け取ったが、資料が不足していることを理由に出境を制限できなかったと述べている。
❽ 粉ミルク持ち出し制限 並行輸入業者への反発激化
中国本土からの観光客が香港域内で粉ミルクを買い占め、本土で販売して利ざやを稼ぐ並行輸入行為が問題視され、香港市民の反発が激化した。1月にはネットを介し集まった市民がMTR旺角東駅で過載積とみられる本土観光客の荷物を、警察や警備とは別に点検し通報する抗議活動を行った。香港市民の行動に反発を覚えた観光客は多く、衝突も起きた。
香港税関は2月27日、香港からの出境の際に粉ミルクの持ち出しを制限する新条例が3月1日から実施されると発表。「2013年進出口(一般)(修訂)規例」が同日から施行され、輸出許可証を持たない限り36カ月以下の幼児用粉ミルクを香港から輸出することはできなくなった。個人的用途として出境時に携帯が認められるのは1.8キログラムまで。違反した場合は罰金50万ドルと懲役2年が科される。
❾ 無料テレビ放送免許 HKTV落選で抗議デモ
特区政府は10月、無料テレビ放送免許を申請した3社のうち2社を原則承認したと発表した。現在、電視広播(TVB)と亜洲電視(ATV)の2社が寡占する無料テレビ市場に競争を促す。免許交付が認められたのは有線電視(ケーブルテレビ)傘下の奇妙電視と電訊盈科(PCCW)傘下の香港電視娯楽。ほかに申請していた香港電視網絡(HKTV)は認められなかった。
香港電視網絡の王維基・会長は政府の決定に疑問を呈したほか、約320人の人員削減を行うとの声明を発表。政府前では連日支持者らによる大規模な抗議デモが行われたほか、立法会では政府に内部文書公開を求める議案が審議された。
❿ 梁政権スキャンダル続出 行政会議・主要官僚8人が辞任
商品先物取引所の香港商品交易所(HKMEX)が5月に商業犯罪に絡んで警察の調べを受け、行政会議メンバーも務めるHKMEXの張震遠・主席は公職停止を発表した。張氏は行政長官選挙で梁振英・行政長官の選挙対策本部長を務めたほどの側近だった。
7月には陳茂波・発展局長の家族が新界東北部のニュータウン開発予定地に土地を保有していたことが発覚。新界東北部開発は陳局長自身が推進しているため疑惑が持ち上がり、民主派からは陳局長の辞任や新界東北部開発の撤回を求める声が高まった。
ICACは8月、休職中だった行政会議メンバーの林奮強氏に関する調査が終了し、起訴されないことを発表。林氏はこれを受け行政会議メンバーを辞任した。林氏は昨年10月の不動産市場抑制策の発表に先駆け相次ぎ所有する住宅物件を売却していたことが明らかとなり調査が行われていた。梁政権が発足してから辞任した主要官僚と行政会議メンバーは8人となる。(執筆者:香港ポスト 編集部・江藤和輝 編集担当:水野陽子)
2013年は梁振英政権が発足から1周年を迎えたものの、行政会議メンバーや高官のスキャンダルは相次ぎ、政策もさまざまな障害に阻まれるなど不安定な施政が続いた。普通選挙問題ではセントラル占拠や米英の干渉など不穏な動きが持ち上がる中で公開諮問が始まった。また人民元国際化の進展で香港の優位性低下も懸念され始めた。今年の主なニュースを振り返る。
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2013-12-24 10:45