2020年東京五輪の雇用インパクトは81.5万人=リクルートが推計

 リクルートホールディングスの研究機関、リクルートワークス研究所は2014年4月17日、「東京オリンピックがもたらす雇用インパクト-人材難が2020年までに迫る構造改革-」というレポートを発表した。そのレポートによると、「2020年までにオリンピックによって生まれる雇用者数は、全国で累積81.5万人。特に、建設業とサービス業での雇用者増が大きいが、その人材ニーズは一時的で継続的な雇用でない。オリンピックを契機に、人材マーケットを高度化し、多様な人々がいきいきと働ける社会へと、構造改革を行うことが重要」としている。  累積81.5万人のうち、2020年に最多人材ニーズ25.8万人になると試算している。この規模は、累積合計で2012年の就業者全体6270万人に対して1.3%。完全失業者285万人と比較すると、相当のインパクトがあることがわかる。ただ、産業別の人材ニーズでは、建設業で33.53万人、サービス業で16.753万人と予測され、この業種は現在でも有効求人倍率2.37(建設業)、1.74(サービス業)と、すでに人材獲得難になっている業種。オリンピックに向けて、一段と人材がひっ迫するため、それを見越した対策が必要になっていくる。  リクルートワークス研究所では、「人材ニーズがひっ迫することで、企業・個人・労働市場で、ポジティブ・ネガティブな取り組みが同時多発的に発生する可能性がある」(主任研究員の中村天江氏)と懸念している。たとえば、新たに人材を雇用しようと考える企業では、採用基準(人材要件)の緩和や、採用条件(賃金等)の引き上げなどコスト負担が増大。さらには、不法就労など非合法な人材調達が広がる可能性もあると危惧している。  さらに、十分な人材を確保できない企業では、社員の労働時間の増加や業務範囲の拡大など、労働条件・環境が悪化することが予想され、人材難でオリンピック商機を見送ってしまう企業も出てくると予測している。  このような事態を緩和するため、リクルートワークスでは「7つの雇用政策アジェンダ」を提案している。(1)高齢者・主婦を活かすことができる人材活用の永続的な仕組みを創る、(2)若年の失業者・無業者の意欲を喚起し、就労を促進する、(3)学生がオリンピック・ジョブを経験する機会を創る、(4)国内広域労働移動(地域間斡旋)の仕組みを構築・強化する。  そして、(5)外国人労働力の先駆的な活用スキームを構築する、(6)建設業の国内人材の育成・調達のあり方を見直す、(7)労働条件の悪化や非合法な人材調達を抑止する。  「2012年ロンドン五輪の就労調査でも、オリンピックで75.6万人の雇用が創出されたといわれるが、終了後は6カ月、1年と継続して雇用されることがなかったということが課題としてとらえられている。今回の試算でも、雇用増は一時的なので、オリンピック後の人材ニーズ急減に備える対策が必要になる。高齢者や女性の活用など、従来よりも短く・軽い就労条件によって、ある意味ワークシェアするような、多様な働き方を定着させ、人材ニーズの変化に機動的に対応できるよう、社会の仕組みづくりが重要だ」(中村氏)と提言している。(編集担当:徳永浩) 
リクルートワークス研究所は、2014年4月17日「東京オリンピックがもたらす雇用インパクト-人材難が2020年までに迫る構造改革-」というレポートを発表した。
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2014-04-17 18:15