次の上昇分野を先回りしてポートフォリオをリセットさせる「グローバルAIファンド」、好パフォーマンスを叩き出す秘訣を聞いた!

 コロナショック後の市場をけん引してきた米国大型テクノロジー株が9月に入って波乱相場になっている。一部には「バブル崩壊」という見方もあるが、三井住友DSアセットマネジメントが運用する「グローバルAIファンド」は、全般下落市場の中で踏みとどまっている。三井住友DSアセットマネジメントの田村一誠氏と矢島悠子氏、そして、実質的な運用を担っているアリアンツ・グローバル・インベスターズ・ジャパンの井村真也氏と滝沢圭氏に、同ファンドの当面の見通しについて聞いた。  ――3月にコロナショックで大きく下げた後、8月までテクノロジー株式を中心に大きく値上がりした米国株価が、9月に入って変調しているように見受けられます。これまで市場をけん引したNASDAQ総合指数が高値から10%以上の下落となり、弱気相場に入ったという見方もありますが、AI関連銘柄の現状をどのようにみていますか? 井村 8月までに特にテクノロジー関連株式が勢いを伴った上昇となったことから、9月に入って利益確定の売却なども出て、株価が下落することは、健全な価格調整であると考えています。9月の下落には、金融政策の変更など特別な理由があったわけではありません。AI関連企業のファンダメンタルズはしっかりしていることが確認できていますし、売上高や利益成長も堅調です。収益が伴った株価形成をしてきていますので、AI関連企業の株価が上昇するトレンドは変わっていないと見ています。  これから、米国では大統領選挙もあり、株価が上昇してきた後ですので、株価のボラティリティ(変動率)は高まることはあるかもしれませんが、今回の株価の下落に伴う基準価額の下落も比較的早く回復すると見ています。  過去を振り返っても米中貿易摩擦の激化などで株価が10%程度値下がりしたことはありますが、その後も崩れることなく、株価は調整を短期で終えて高値を更新してきました。まして、コロナショックによって世界的な金融緩和が実施され、超低金利となり投資資金が一番向かっている先が高成長株式への投資です。AI関連企業群は、その高成長企業群のフロントランナーともいえる存在だけに、調整からの回復も速いと思います。  たとえば、2000年のITバブルの時には回復までに数年間を要しましたが、背景として当時は投資対象として株式投資以外に5-6%の利回りがある現在より魅力的な米国債市場などがありました。ところが、現在は米国債利回りよりもNASDAQの配当利回りの方が高いような状況です。  また、個別銘柄のPER(株価収益率)が過去に比べて異常に高くなり割高だといわれますが、現在のAI関連企業の収益モデルは当時とは大きく異なり、単純なPERではバリュエーションを正しく評価できないと考えています。  ――PERでは割高・割安を判断できないとはどういうことでしょう?  滝沢 現在の高成長企業群に特徴的なのは、サブスクリプションモデル(一定期間利用する使用料を支払う契約)です。ITブーム当時の収益モデルはパッケージソフトウエアなどの一括販売モデルでしたが、現在はサブスクリプションなので、立ち上がりの収益は小さいのですが、利用者が増え、期間が経過するとともに収益が積み上がっていきます。サービス開始当初はマーケティング費用や人件費などのコストを前がかりで投入する一方、売上高は少ないため、利益率が低かったり、赤字だったりしますが、そのサービスが受け入れられて定着すると、利益率はどんどん高まっていきます。  当ファンドで組み入れている銘柄の多くは、キャッシュフローが着実に積み上がっていく企業で、サブスクリプションモデルの企業も少なくないため、今・来期のEPSに基づいたPERだけで判断すると間違えます。現在得られているキャッシュフローと、翌年、3年後などに得られるキャッシュフローは大きく異なるからです。  また、PSR(時価総額を年間売上高で割った株価売上高倍率)や、M&Aの評価指標などで使われるEV(企業価値)÷EBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前・その他償却前利益)なども用いて企業価値を判断しています。どの時点の業績で見るかにもよりますが、例えば、アマゾンはPERで100倍前後である一方、PSRでは5倍前後、テスラはPERでは200倍超のところPSRでは20倍以下など、評価指標を変えると、とんでもなく割高になっているという評価とは異なる側面が見えてきます。  ――「グローバルAIファンド」は基準価額が9月3日に2万6000円台に乗せ、2016年9月9日の設定から満4年を経過しました。短期間で大きく値上がりしたために、ここから新規に投資するのは難しいと感じてしまうと思います。まして、株価が不安定になると高値だけに不安も大きいと思いますが? 矢島 当ファンドを取り扱っていただいている地方銀行の担当の方から良く話に出るのは、もう少し安くなったら買いたいと思っているうちにどんどん基準価額が高くなって結局買えなかったというお客さまの声が多いということです。基準価額が値下がりするのを待つのではなく、積立投資を始めるなど、一部でも投資資金を投じてみると、見る間に値上がりして失敗したという後悔をしなくて済みますという話をしています。  また、当ファンドの売買回転率は100%程度と高い水準にあります。100%というと、1年間で投資資金が1回転している計算になります。いわば1年ごとに「リスタート」しているようなものです。アリアンツ・グローバル・インベスターズの運用チームは企業の調査分析に優れているだけでなく、株価の判断もしっかりしていて、長期で成長が期待される銘柄であっても短期的に株価が上昇した場合はいったん利益確定し、割安な銘柄に投資資金を振り向けるなど、柔軟な投資判断をしています。  ですから、基準価額は2万3000円台ですが、設定時に保有したポートフォリオをずっと持ち続けているわけではありません。4年間の間に保有銘柄は4回転くらいして、常に今後の成長が期待できる最良の状態を保っています。いつでも投資を始められるファンドだと思います。 滝沢 2018年、19年の売買回転率は100%程度でしたが、現在の売買回転率は年130%程度に高まっています。コロナショックで大きな株価下落を経験する中で、銘柄の入れ替えを行った関係で回転率が高まりました。  実際に過去のポートフォリオを振り返ると、過去4年間で1年ごとのパフォーマンス上位銘柄は、半導体、フィンテック、テレワークなど、その局面ごとにパフォーマンスをけん引する銘柄群が変わっています。当ファンドは、「AI」に着目して投資銘柄を選定していますが、フィンテックや5Gなど特定の投資テーマに投資するファンドではないため、銘柄選択の範囲は広く取ることができます。  ――今後の見通しは? 田村 AIを使ったデジタルインフラは、現在の水道や電気・ガスと変わらない生活インフラになってきていると思います。現在、テレワークや在宅診療、オンライン教育などのサービスは、ITインフラが整った先進国で導入が続いていますが、当然、この動きは、新興国にも広く利用されることになります。その点では、長期にわたって高い成長が維持される企業群に投資するファンドです。  これからのエネルギー・電信・電力・道路・水・電車などのインフラ設備にはすべてデジタル技術が使用され、その制御のためにAIは不可欠といわれています。リサーチ会社のGartner社の予測では、世界のIT支出は2019年の約3兆8000億ドル(約418兆円)から、2020年には約3兆9000億ドル(約429兆円)に拡大すると予測されています。今後も長期にわたって高い成長が期待されるAI関連企業に、長い目で投資していただきたいと思います。 井村 電力や水道などといった公益企業とAIなどの先端技術は結びつきにくいと思いますが、現在は公益企業の間でAIシステム投資が活発に続いています。たとえば、太陽光発電や風力発電など自然エネルギーを使った発電は、天気などの気象条件の変化で出力が不安定です。これらを効率的なエネルギーとして使っていくためには、気象条件というビッグデータをAIで解析していくことが不可欠です。IoT(モノのインターネット)に対してIoE(エネルギーのインターネット)といわれる注目分野です。  また、水道管のネットワークや鉄道の線路網などのインフラ設備の監視、メンテナンスに、AI搭載のドローンを飛ばしてその画像データを解析して劣化している個所を特定、最適な補修の時期を推定することなどにAIが益々活用されています。このような旧来のインフラを維持し、効率化するためにAIの活用は不可欠になっています。  現在、あらゆる企業が情報化投資を行い企業の間でデジタルトランスフォーメーション(DX)の導入が活発になっています。最先端の米国においてはDXを推進している企業が8~9割に達していると言われています(日本は4割程度)。先進各国や新興国までの広がりを考えれば、AI活用の広がりは、その成長の入り口に立ったところといえるでしょう。AI関連企業の大きな成長にご期待ください。(グラフは、「グローバルAIファンド」とNASDAQ総合、S&P500の過去1年間の推移)(情報提供:モーニングスター社)
三井住友DSアセットマネジメントが運用する「グローバルAIファンド」について、同社の田村一誠氏と矢島悠子氏、そして、実質的な運用を担っているアリアンツ・グローバル・インベスターズ・ジャパンの井村真也氏と滝沢圭氏に当面の見通しなどを聞いた。(グラフは、「グローバルAIファンド」とNASDAQ総合、S&P500の過去1年間の推移)
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2020-09-16 16:45