テクノロジー株の変調もチャンスに変える、「グローバルDX関連株式ファンド」のビッグデータ情報分析力

 2020年に大きな上昇相場を捉えたテクノロジー関連株式ファンドは、2021年も好調さを持続できるのだろうか? 今年2月下旬には米国長期金利の上昇をきっかけに相場の物色動向が変化し、テクノロジー株式に値を崩す銘柄が少なくなかった。三井住友DSアセットマネジメントが設定・運用する「グローバルDX関連株式ファンド」は、2020年9月15日の設定から12月末まで3カ月余りでトータルリターンはプラス26.3%になった。21年2月末に基準価額は20年12月末比9%超の値上がりと、今年になっても好調なパフォーマンスが続いている。今後の見通しについて、三井住友DSアセットマネジメントの田村一誠氏と、同ファンドの実質的な運用を担っているニューバーガー・バーマン・グループの藤波新氏に聞いた。  ――2021年の相場展開についての見通しは? 藤波 グローバル株式市場のポイントは、「適温相場の持続性」にあると考えています。まず、足下では、ワクチン接種で世界に先行するイスラエルにおいて、約900万人の人口のうち4割超が少なくとも1回のワクチン接種を受け、2回目の接種を終えた人に証明書の発行を始めています。証明書の保有者には映画館やホテルの利用、旅行の自由などが認められることになっているそうです。他の国でも、ワクチン接種を証明するアプリの開発が始まるなど、多くの国で「アフターワクチン」の準備が進められています。  このように経済活動の正常化による世界経済回復への期待感が高まる中、世界の中央銀行は景気回復の足取りを確かなものとするべく、緩和的な金融政策を維持しています。「景気・業績の回復期待」と「金融緩和」が同居する「適温相場」といえる状況であり、当面の株式市場は底堅く推移するとみています。  一方、1月末に米国市場では、いわゆる「ゲームストップ株騒動」など一部銘柄への資金集中による株価の乱高下があり、積み上がった投機的なポジションがマグマのように滞留していることはリスク要因であるといえます。また、長期金利がジリジリ上昇傾向にあることも、先行きマネーの流れに変調をもたらす可能性があり、株式市場が短期的な調整局面を迎える可能性があるといえます。このような時こそ、業績成長性に優れた企業への投資が奏功する局面と考えています。 田村 昨年の株高によってテクノロジー株は割高になったと懸念を持たれている方が少なくないと思います。ただ、「グローバルDX関連株式ファンド」のポートフォリオ組入れ銘柄の業績見通しをみると、向こう3年間の平均でEPS(1株当たり利益)成長率が38.7% になっています。平均で約39%ですから、2年でEPSが2倍以上になるような企業も少なくないのです。個別の企業に対する業績の見極めが大事だと思いますが、ニューバーガー・バーマンの運用チームは適切な判断を行っていると感じています。  ――2021年のDXのポイントは? 藤波 1つは、「アフターワクチン」でも非接触経済の拡大は止まらないということです。非接触経済で最大の市場規模を持つ上位3セクターは、消費財、レジャー・レクリエーション、および、教育です。そして、最も成長が大きい上位3セクターは、金融サービス、ヘルスケア、および、消費財です。このようなセクターから、「アフターワクチン」をけん引するような企業が生まれてくるでしょう。  もうひとつは、「カーボンニュートラル」です。菅首相が20年10月に召集された臨時国会での所信表明演説で「2050年にカーボンニュートラル、脱炭素社会の実現をめざす」と宣言したことによって、にわかに新しい流れとして注目度が高まりました。菅首相の演説の中で、脱炭素の要は「環境関連分野のデジタル化」であると語っています。たとえば、天候や時間で発電量が変動する再生エネルギーの安定的な供給を実現させるには、デジタル化の技術が不可欠です。既に、各家庭に配置されている電力計は、スマートメーターに置き換わりつつあり、これによって家庭の電力の使用状況を通信で収集し、様々なサービスに活かしていくことが可能になります。  ――具体的な注目銘柄は? 藤波 今年1月の組入上位10銘柄に入ってきた「ピンタレスト」は、ステイホーム期間の2020年3月~4月に利用者が急増しました。当時、自宅で料理をする機会が増えたことで、多くの人たちがピンタレストを利用して料理画像を検索したのです。ピンタレストは、画像検索ツールといった使い方をされています。「インタレスト(人々の興味・関心)にピン止めする」ということがピンタレストの狙いです。  例えば、料理の画像を見ながら気に入った画像をピン止めして「今日の夕食」というボードに保存すると、その画像の持ち主には、誰のどういうボードにピンされたのかの通知が届きます。そして、画像にはピンしたユーザー名とボードの名前が付け加えられ、誰かがピン止めしているボードを他の人が見に来たりします。このようにピンタレストは、人々がフォーカスしている興味・関心をストレートに反映するツールですから、企業の広告媒体としての価値も高く評価されています。2月に発表された20年10-12月決算で、売上高は前年同期比76%増と好調を持続しています。決算発表後にはマイクロソフトが買収を検討しているというニュースも出て株価が急伸しました。市場予想EPS成長率は76.6%です。  また、同じく組入トップ10に入っている「ゼンデスク」は、カスタマーサポートのソフトウエアを開発している企業ですが、同社のシステムは日本でも既に2500社程度が利用していて、世界で14万5000社ほどが導入しています。ゼンデスクの特徴は、コールセンター業務をテレワークで対応することを可能にしたことです。企業のカスタマーセンターには、電話やメール、チャット機能などを通じて様々な問い合わせやクレームなどが入ってきますが、これらを一元管理して、テレワークで担当者が分散していても、誰でも同じ情報に基づいて応対ができる環境を提供しています。  ――DXと一言でいいますが、現代社会はあらゆる業務がデジタル化していて、特に投資テーマとして絞り込めないのではないでしょうか? 藤波 当ファンドでは、「デジタル・トランスフォーメーションが加速しているところ」を取りに行きます。デジタル技術を活用して行動様式を変えるほどの大きな変革をもたらす企業に注目しています。現在は、「デジタル・ワーク」「コンシューマー」「レジャー」「ヘルスケア」という4つの分野に焦点を絞っています。 田村 これから100年の歴史の基礎になるような技術が、2020年~30年の10年間に出揃うと言われています。DXもそうですが、5Gの普及、AI(人工知能)、自動運転、宇宙開発など、これから100年後の社会を作っていく重要な技術です。当ファンドも含めて、テクノロジー株に投資するファンドの多くは、1年-2年という目線ではなく、10年、20年という将来を展望しています。短期間での相場の変動を気にすることなく、中長期で投資をご検討いただきたいと思います。  ――米国の長期金利上昇によって株価が急落するなど、株価が落ち着かない時もあります。実際に投資するにあたっては、どのような点に気を付ければよいのでしょうか。 田村 当ファンドは、先ほどのピンタレストのように、株価が短期間に急騰するような組み入れ銘柄があります。運用チームは、その時々の変化に応じて、例えば一部を高値で売却するなど、きめ細かな対応をしています。足元の売買回転率は24.7%と、さほど大きくはないのですが、1つの銘柄を一旦利食いして買い増すなどの対応を含めて資金の回転率を計算すると70%を超える場面もあります。 藤波 運用チームは、市場変化のポイントに応じてビッグデータ分析を活用しています。たとえば、イギリスのEコマース企業である「ファーフェッチ」は、高級ブランド品を扱うことに特徴があり、巣ごもり需要で業績を伸ばしましたが、この会社の業績を予測するために、クレジットカードの利用データを細かく分析しています。また、在宅フィットネスを提供する「ペロトン・インタラクティブ」は、11月に株価が下落したのですが、その時にビッグデータ分析によって同社がカスタマーサービス部門で求人を積極化させている裏付けを得て、保有を継続しました。このような情報分析を丁寧に行っていることが、当ファンドのパフォーマンスを支えていると思っています。 田村 実際に、当ファンドの運用チームは、なかなか個人では使うことができないようなデータなどを駆使して、現状を的確に把握し、しっかりと運用管理を行っています。株価の上下動が気になる方は、一括で購入なさらず、数回に分けて購入されるとか、毎月の積立投資もご検討ください。5年、10年先の社会の変化を展望して投資している「グローバルDX関連株式ファンド」を是非、中長期の資産形成の手段としてご活用ください。(グラフは、「グローバルDX関連株式(資産成長型)」の設定来のトータルリターンの推移)(情報提供:モーニングスター社)
2020年に大きな上昇相場を捉えたテクノロジー関連株式ファンドは、2021年も好調さを持続できるのだろうか? 三井住友DSアセットマネジメントが設定・運用する「グローバルDX関連株式ファンド」の今後の見通しについて、三井住友DSアセットマネジメントの田村一誠氏と、同ファンドの実質的な運用を担っているニューバーガー・バーマン・グループの藤波新氏に聞いた。(グラフは、「グローバルDX関連株式(資産成長型)」の設定来のトータルリターンの推移)
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2021-03-04 11:15