波乱に強く収益機会も幅広い「ダブル・ブレイン」が進化、「ブル」「マイルド」で一生涯の資産運用をサポート

 野村アセットマネジメントが2018年11月9日に設定した「ダブル・ブレイン」は、最新の投資技術を取り込んだクオンツ運用(高度な数学・物理学を用いて、市場動向等を分析する投資戦略)を駆使する最先端ファンドだ。モーニングスターが表彰するファンド オブ ザ イヤー2020でも、長期にわたる効率的で安定的な収益力が評価され、最優秀ファンド賞に輝いた。3月3日には、「ダブル・ブレイン」のリスク水準を約2倍に高めた「ダブル・ブレイン(ブル)」と、リスクを約2分の1に抑えた「ダブル・ブレイン(マイルド)」を新規設定し、シリーズ展開が始まる。同ファンドの運用について、野村アセットマネジメントのアドバイザリー運用部部長の河邉隆宏氏(写真:右)と同部運用担当者の木下侑紀氏(写真:左)に聞いた。    ――運用の仕組みについて教えてください。 木下 「ダブル・ブレイン」という名前の通り、2つの優れた戦略を組み合わせて運用しています。1つ目は「リスクコントロール戦略」(ブレインA)、2つ目は「トレンド戦略」(ブレインB)で、2つの優れた戦略がお互いを補完し合っています。それぞれの戦略を運用しているのは、英国でクオンツ運用の専門家として信頼されているマン・グループのAHL社です。  「リスクコントロール戦略」は、戦略全体の目標リスクを10%として、約50市場に投資を行っています。投資しているセクターは、「株式」「国債」「インフレ連動債」「クレジット」「コモディティ」の5つになります。この5セクターで、セクターごとで同等のリスクを取るリスクパリティ運用をしています。  また、「リスクコントロール戦略」には、下落の抑制機能として2つのブレーキ機能を持ち合わせています。ブレーキ1は、株式と債券の相関を10分ごとに計算し、この相関に異変があるとシステムが察知した場合には、戦略全体の投資配分比率を大幅に引き下げます。ブレーキ2は、投資対象市場の50市場の値動きを24時間365日モニタリングし、下落のトレンドをシステムが察知すると、各投資配分比率を徐々に引き下げていきます。  一方で「トレンド戦略」は、戦略全体の目標リスクを15%としています。約500市場に投資し、500市場の値動きを24時間365日でモニタリングし、上昇のトレンドが続くとロングポジション(購入した有価証券を持ち続ける状態)をどんどん拡大します。反対に下落のトレンドが続くとロングポジションを縮小し、さらには、ショートポジション(保有していない証券を売ったときの状態)に切り替える場合もあります。ショートポジションを作ることができますので、市場の下落トレンドが続くと、それを収益に変えることが可能になっています。  ――2つの投資戦略は、実際の市場環境の中で、どのように特徴が発揮されるのでしょうか? 木下 昨年3月のコロナショックの時は、新型コロナウイルスの感染拡大が広がって3月にはパンデミックに陥り、市場のリスク資産が軒並み下落しました。この時「リスクコントロール戦略」は、マーケットのリスクが高まったことを感知し、株式と債券の相関の異変を察知したブレーキ1、各市場の下落トレンドを捉えポジションを縮小するブレーキ2が発動され、戦略全体の投資配分比率をかなり縮小しました。通常はレバレッジ3.5倍(350%)程度で運用していますが、これを1ヵ月で25%にまで縮小しました。  「トレンド戦略」も通常は7倍(700%)程度のレバレッジがありますが、パンデミック直後には2倍(200%)程度にまで引き下げました。特に、トレンド戦略は3月の1カ月間では株式市場などリスク資産をショートポジションに取ったことに加え、原油のポジションをショートポジションに持っていたため原油価格の下落がプラスに働き、トレンド戦略は3月単月で9.8%のプラスのリターンになり、基準価額の下落を軽微に抑えました。  ――2つの戦略を組み合わせる意味はあるのでしょうか? 木下 「リスクコントロール戦略」は上昇局面では非常に大きなリターンが稼げる利点はあるのですが、一方で、ロングオンリーの戦略なので、下落のトレンドが続くとどうしても損失を被ってしまいます。ITバブルの崩壊やリーマンショクのような大きな下落のトレンドが出てきた時に、「トレンド戦略」のショートポジションが大きなマイナスを収益に変えることができる「お守り」のような役割を果たしてくれることで、安定したリターンを着実に得ることができます。これが2つの戦略を組み合わせるメリットです。実際に2つの戦略を長期間にみた相関は0.2~0.3とかなり低い相関です。2つの戦略を合わせるメリットはここにもあります。  ――当ファンドは、コロナショック後に株価が急速に戻る局面ではマーケットの上昇に届かなかったように見えます。 木下 昨年6月に株式市場が反転上昇している過程では、ファンドのコンセプトである「徹底したリスクコントロール」を堅持し、それぞれの戦略で忠実にリスク10%と15%になるようにポジションを取っていたため、ロングポジションが小さい段階で株価が急速に反発したために、パフォーマンスで追いついていかないことになりました。  この時のパフォーマンスの劣後は、マンAHLでは運用に失敗したとは考えていません。長期的に安定したパフォーマンスを出すためには、リスクコントロールが重要だと考えています。実際に当時のVIX指数などは、3月以前と比べてまだリスク水準の高い局面がしばらく続いていました。このような不安定な株価の動きが11月くらいまで続いていました。その不確実な動きを回避するリスクコントロールを行っていたということです。 河邉 このファンドの運用を車の運転に例えると、リスクが急激に高まった局面では、スピードを抑えてより安全運用を行うためにエクスポージャー(資産の割合)を引き下げます。実際に、3月の最大下落率では世界株式は33.7%下落し、世界債券も安全資産といわれながらも8.7%下落しました。その中で「ダブル・ブレイン」の下落率は7.4%に収まっていますので、かなりリスクを抑えることができたといえると思います。「ダブル・ブレイン」は、常に欲張らない運用で、リスクを抑えて、しっかりリターンを獲得しようという運用をめざしています。  ――マーケットの環境は、過去の歴史に例を見ない金融緩和であったり、ビットコインなどの新しい投資商品の台頭など、どんどん新しい状況が生まれてきていますが、これらの変化に対応しているということですか? 木下 投資対象市場については頻繁に検討しています。たとえば、ある国の税制が厳しくなったので投資対象から外すなどということは少なくありません。マンAHLが常時モニタリングしている市場は800近くあるのですが、この800市場についても常に増えたり減ったりしていますし、その中から「トレンド戦略」が投資対象とする500市場に入れる・入れないという判断もしています。  ビットコインについても、投資対象となり得るのかということは実際に検証を行っていますので、投資対象としてふさわしいと判断されれば、このファンドの投資対象の1つに入ってくるかもしれません。  ――当ファンドを資産運用に取り入れる価値について、どのように考えればよいのでしょうか? 河邉 リスクリターンの関係でいうと、「ダブル・ブレイン」は8%~10%程度のリスク水準で10%以上のリターンを狙う商品です。伝統的な資産分散だけでは、債券の利回りは低下し、かつ、株式のリスクが高まる傾向にあるため、効率的なポートフォリオで得られる期待収益率が低くなってきてしまっています。そのような市場環境にあっても、「リスクコントロール戦略」(ブレインA)が行う最新型の分散投資戦略は、リスク10%でリターン10%というような程よい水準のバランスファンドを作ることをめざしています。  マンAHLは、それぞれの戦略の運用を提供していますが、この2つの戦略を組み合わせて1つの商品にしたのは、「ダブル・ブレイン」が初めてです。「リスクコントロール戦略」(ブレインA)という先端的なバランスファンドに、戦略の相関で分散の効く「トレンド戦略」(ブレインB)を組み合わせました。ブレインBは、相場の上げ下げなどトレンドを見つければプラスのリターンを返せます。この組み合わせの相性が良いのです。ブレインBは凪(なぎ)相場に弱いのですが、ブレインAが凪相場でしっかりリターンを得られます。このAとBの戦略分散が取れているところが「ダブル・ブレイン」の最大の魅力であると考えています。  ――「ダブル・ブレイン」のシリーズとして3月3日に「ダブル・ブレイン(ブル)」と「ダブル・ブレイン(マイルド)」が新規に設定されます。シリーズを拡充される狙いは? 木下 「マイルド」の方は、短期国債を組み合わせてリスクの水準を概ね「ダブル・ブレイン」の半分程度に小さくします。「ブル」の方は、レバレッジをかけてリスク水準を2倍程度にする仕組みになっています。「ダブル・ブレイン」は、使う方のリスク許容度に合った商品を選んでいただけるようになります。 河邉 若年層の投資家で運用期間が長く確保でき、リスク許容度が高く資産形成を積極的に考えておられる方には、オリジナルの「ダブル・ブレイン」では運用成績にもの足りなさを感じられるかもしれません。その際には「ブル」をご利用いただくと、市場が上昇する際の反応の良さを感じていただけると思います。一方、リタイヤメント層の投資家の中には、これからは自分の老後を楽しく長く過ごすため、とにかく資産寿命を延ばし守ることを第一に考えていらっしゃる方も少なくありません。大きなリターンは狙わなくても良いということでしたら、「マイルド」であれば市場が大きく下げる時にも価格変動を抑えた運用で安心感があります。  「ダブル・ブレイン」は、今が投資のチャンスですといったような投資のタイミングを選ぶような商品ではありません。いつでも必要に応じてご投資いただけるファンドです。シリーズ3商品を、それぞれのリスク水準に応じてご活用いただきたいと思います。(情報提供:モーニングスター社)
野村アセットマネジメントが2018年11月9日に設定した「ダブル・ブレイン」は、最新の投資技術を取り込んだクオンツ運用(高度な数学・物理学を用いて、市場動向等を分析する投資戦略)を駆使する最先端ファンドだ。同ファンドの運用について、野村アセットマネジメントのアドバイザリー運用部部長の河邉隆宏氏(写真:右)と同部運用担当者の木下侑紀氏(写真:左)に聞いた。
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2021-03-08 11:00