【為替本日の注目点】米4月の雇用者数予想を大きく下回る

 低調な雇用統計の結果を受けドル円は急落。米長期金利の低下に伴い、一時108円34銭までドル安が進む。ユーロドルでもドル安ユーロ高が一段と進み、ユーロは1.2171と、2月以来の高値を記録。対円でも132円台に乗せる。  株式市場は低調な雇用統計を受け、FRBによる金融緩和が長期化するとの見方から続伸。ダウは3日連続で最高値を更新し、S&P500も最高値を更新する。債券相場は雇用統計を受け急騰したものの、その後売りに押され前日とほぼ変わらず。長期金利は一時1.46%台まで低下したが、1.57%台に戻して引ける。金は続伸し、原油は反発。 4月失業率          →  6.1% 4月非農業部門雇用者数    →  26.6万人 4月平均時給 (前月比)   →  0.7% 4月平均時給 (前年比)   →  0.3% 4月労働参加率        →  61.7 3月卸売在庫         →  1.3% 3月消費者信用残高      →  258.41億ドル ドル/円   108.34   ~ 109.28 ユーロ/ドル 1.2058   ~ 1.2171 ユーロ/円  131.57   ~ 132.15 NYダウ   +229.23 → 34,777.76ドル GOLD   +15.60  → 1,831.30ドル WTI    +0.19   → 64.90ドル 米10年国債 +0.007  → 1.577% 【本日の注目イベント】 豪  豪4月NAB企業景況感指数 米  エバンス・シカゴ連銀総裁、オンラインイベントに参加  4月の雇用統計はサプライズでした。  ADP雇用者数の増加や新規失業保険申請件数の減少傾向が続いており、4月の非農業部門雇用者数でも100万人を超えている可能性が出ていたほど期待値が高かった同指数でしたが、結果は「26.6万人」と市場予想を大きく下回りました。さらに3月分についても、速報値の「91.6万人」から「77万人」に下方修正され、あらゆる面で景気の回復を示す指標が相次いでいますが、「労働市場」の回復には至っていないことが確認された形です。  パウエル議長が好んで使う「FRBの目標からはほど遠い」という言葉が思い出されます。  失業率も市場予想の「5.8%」から大きく悪化し「6.1%」でした。ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁はこの日の結果を受け、「今回のデータは米金融当局が刺激措置を継続している理由を正当化する」と指摘したうえで、「この日の雇用統計はわれわれの道のりが長いことを示す一例だ。尚早に勝利宣言してはならない」とブルームバーグテレビジョンとのインタビューで述べています。バイデン大統領も、「経済は正しい方向に向かっているが、われわれは回復までの長い道のりにあることがはっきりした」と語っています。  また、リッチモンド連銀のバーキン総裁も、「需要の急増を踏まえ、私や大方の識者が予想していた強さとは程遠い内容だ」と発言しています。今回の予想を大きく下回る雇用についてウェルズファーゴのシニアエコノミストは「労働者を解雇するペースの方が雇用するよりもはるかに早い」と指摘し、「労働力に復帰している人もいるが、十分に速いペースではない」と分析しています。  ドル円は雇用統計の結果を受け109円20銭台から急落し、一時は108円34銭前後までドル安が進みました。米10年債利回が1.46%台まで急低下したことでドル売りが進んだ訳ですが、金利の方はその後前日と同水準まで反発しており、この日は長い「下ひげ」を描いています。物価上昇が続き、市場のインフレ観測も高まり、長期金利は一時1.77%台まで急騰する局面があった中でも、労働市場の先行きには慎重な姿勢を崩さなかったFRBは今後、より労働市場の行方を重視してくることが考えられます。2022年末までにFRBがテーパリングを開始するといった市場の見方も、今回の雇用統計に冷や水を浴びせられた格好になりましたが、ワクチン接種が一段と進み、人々の行動制限が緩和され、経済活動が再開することはほぼ間違いありません。  雇用の回復は今後着実に進むと個人的には予想しており、今回の結果だけを見て、米労働市場回復の趨勢を見誤ってはいけないと考えます。  アジアではインドを中心に感染拡大が続いていますが、ワクチン接種が進んだ欧米ではワクチンの効果が明らかです。  イギリスでは成人の3分の1強が規定回数のワクチン接種を終えており、約3分の2が1回目の接種を受けています。9日に報告されたコロナによる死者はわずか2人だったそうです。ジヨーンズホプキンス大学の集計によると、すでに350万人以上の感染を記録したスペインで9日には、感染者数、死者数とも「ゼロ」でした。  米国でも9日の新規感染者数は3万4433人と、7日間移動平均が昨年9月末以来の少なさとなっています。  ただそんな中、米国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長は、「米国の新型コロナウイルスによる死者数が実際より少なく数えられていることは疑いない」と、NBCの番組「ミート・ザ・ワールド」で述べています。(ブルームバーグ)  その可能性はあるにしても、ワクチンの効果は明らかです。  日本でも本日10日から大量のワクチンが国から地方自治体に配布される予定で、菅首相が宣言した「1日100万回の接種」が達成できるかどうか注目されます。  本日のドル円は108円20銭~109円程度を予想します。(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ・メディア事業部)(イメージ写真提供:123RF)
低調な雇用統計の結果を受けドル円は急落。米長期金利の低下に伴い、一時108円34銭までドル安が進む。ユーロドルでもドル安ユーロ高が
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2021-05-10 10:00